今日(27日)の午前中は、ソワニエ看護専門学校で
2回目の授業。「手」についてでした。1名欠席の44名。
で、ソワニエに行く前に、K保育園に『友』を届けに
いったのですが、その帰り際、側溝に鍵を落としてしまい、
「やばっ、ソワニエ遅れる・・・」と冷や汗ものでしたが、
なんとかブロックを持ち上げ、鍵を取り戻したのですが、
その際、手を負傷。少々すり傷をつくってしまいました。
なんとか2分遅れで教室到着。
「手」の授業なのに、「手」を負傷して登場したのでありました。
ははは。
でも、なんとか授業はできました。
学生さんの反応もまずまず。
「こんなに手について考えたことはなかった」
「手はスゴイ」「手を使える看護師になりたい」など。
やっぱり「手」はふだん意識しないですからね。
以下、講義の概要。
一。長久の「看護・医療」読書日記
◇今週読んだ本
『愛撫・人の心に触れる力』(山口創、NHKブックス、2003年)
二。人間の手の働き
1。進化過程での「手」の出現
◇2本足で立つことによって「自由になった前足」が「手」になった
*脊椎動物は「顔」が進行方向の最先端に位置する。そこに、
目、鼻、耳、舌、ヒゲなどの重要な感覚器官(外界の探索機能)
がある。人間は2足歩行の結果、外部の探索行動における
「手」の役割が大きくなった。
*手の発達によって、道具の使用を行うことが可能になった。
脳と手の相互作用。
2。人間の手はどんな働きをするか
◇手はどんなことができるか、考えてみよう
◇情報の伝達、道具の使用、他者との媒介
*手は「熱い」「硬い」「痛い」「形」など、たくさんの情報を脳へ伝える
*「道具」を使って対象に働きかける
*相手に物を渡したり、相手から受けとったりする、つまり「他者との
媒介」にも。
◇手にまつわる言葉ー日本語は「手」をたくさん使っている
*運転手、選手、助手、歌手、騎手、働き手、聞き手、やり手、手先、
名手、相手、担い手、受け手、なり手・・・。「手」という言葉がそのま
ま人間をあらわすものとして使われていることにも、人間にとって
の「手の重要性」があらわれている。
*「手をぬく」「手伝い」「手をやく」「手がでる」「手ざわり」「手ほどき」
「手さぐり」「上手・下手」「手堅い」「決め手」「手本にする」「手柄」・・・
*「手のうちを明かさない」「手のひらを返したように」「手にとるようにわかる」・・・
三。手と心、そして看護と「手」
1。絵本『てをみてごらん』(中村牧江さく・林健造え、PHP)
てをみてごらん
きみのてと ともだちのて
あくしゅをすれば もうなかよしだ
あかちゃんのては いつもあまえている
きみが おこっているとき ても おこっている
かんがえているときは こんなかんじ
だいじな やくそく
みんなでなにかをきめるとき
うまくいったら やったあ!
ほかには どんなこと?
はるは そっと うけとめる
なつは めずらしい おきゃくさま
あきは いっぱいみつけて わけてあげる
ふゆは いっしょに あたろうよ
きみのては いまなにをしているの
それから なにをするの
「手は表情豊かです。たとえ言葉で何も言わなくても、手の動き
やかたちで、喜怒哀楽、やさしさ、拒絶など、人の気持ちをこま
やかに表現していることをご存じでしたか?
本書は、紙でつくった繊細な手のイラストによって、手が表現
するさまざまな思いや役割に気づかせてくれる絵本です。
仲良しになる握手、おかあさんの手に甘えて包まれる赤ちゃん
の手、おこったときにぎゅっとにぎった手、何かを考えているとき
の手、約束のゆびきり、じゃんけんのぐー・ちょき・ぱー、「やっ
たー!」のブイサイン、花びらをそっと受け止める手、トンボがと
まる手、どんぐりを集めてだれかと分け合う手、四葉のクローバー
をつまむ手、それをだれかに渡す手、たき火にかざす手…など、
ふだんは気にもとめない自分の手や人の手に出合えます」
(出版社ホームページ「解説」より)
2。手と心―手仕事の不思議
「そもそも手が機械と異なる点は、それがいつも直接に心と繋が
れていることであります。機械には心がありません。これが手仕事
に不思議な働きを起こさせる所以(ゆえん)だと思います。手はた
だ動くのではなく、いつも奥に心が控えていて、これがものを創ら
せたり、働きに悦びを与えたり、また道徳を守らせたりするのであ
ります」(『手仕事の日本』柳宗悦、岩波文庫、1985年)
3。看護と「手」
「病人の世話をするには建物だけあればよいのであろうか? そ
こには心と手、訓練されて熟練した手が必要である。大英帝国の
どの救貧院でもまたその他の病院でも、当然そのような手と心の
持主によって看護がなされるべきである」
(F・ナイチンゲール『アグネス・ジョーンズをしのんで』)
◇「手当て」が医や看護の原点ー美術作品から
*「エヒテルナッハ福音聖句集」
*カリエール「病気の子ども」
*ピカソ「科学と恩寵(おんちょう)」
◇生命力を高める看護の手の力
*触れることによる心理的効果
「病院で患者の看護をする際に看護師が身体へ接触すると、患
者の不安を低下させることができる。たとえば、手術の説明をす
るときに、患者の手に触れる場合と触れない場合とで、不安の程
度を比較したデータによると、ほとんどの患者は、看護師からの
身体の接触を肯定的に受け取り、心拍や血圧を下げてリラックス
することができた」「ただ手を握ったり背中をさすってあげるだけで
いい。患者は触れられることで、共感されていると感じ、支えられ
ている、励まされている、といったメッセージを受け取っているのだ」
(『愛撫・人の心に触れる力』、152P)
*タッチが痛みをやわらげるーゲートコントロール理論
◇看護師が手を使わなくなった!?
「夫の入院中、夫の手に触れた看護師さんは一人もいませんでし
た。強い気性の夫でしたが、末期には、痛いくらいに私の手をぎ
ゅっと握りしめていました。先人たちが築いてきた有形、無形の
看護実践、その人の生きる力や、自然治癒力を引き出す要素が
あるはずなのに、それが忘れさられています。
手は、サーモスタット無しに常温を保てます。こんな有力な武器
はありません。手を当てただけでアセスメントできます。・・・脈を3
本の指で診ると、脈の緊張の度合いで血圧が高いか低いかもわ
かるし、早さもわかる、皮膚がしめっているか、乾いているかもわ
かり、脱水状態も把握できる。胸に手を当てれば、ゼイ鳴のある、
なし、ゼイ鳴がなくても動いているのは触っただけでもわかります。
観察の武器として、モニター以上に複数の情報をキャッチでき、自
分の意志で使えます。さすったり、揉んだり、なでたり、つかんだり、
叩いたり、抱きしめたり、いろいろなことができるのが手です。看
護師たちはこの有用な手をどうして使わないのかと思います。なぜ
機械を介在させるのでしょう」
(川島みどり「IT化時代 今だからこそ看護の原点に」、『医療労働』№500)
以上。
カゲ茶さんありがとう。
傷口に手を当てると、本当に痛みがやわらぐそうです。
科学的根拠があるそうです。すごいです。
みきさんへ。
実習奮闘中ですね。がんばってください。
投稿情報: 長久 | 2009年4 月30日 (木) 10:03
あたし来週から手の疾患の方を担当させていただきます(゜o゜)
投稿情報: みき | 2009年4 月29日 (水) 13:45
手当ては、傷口に手を当てると痛みが和らいだから手当てになったのだとか。
医療機器の進歩だけに頼るのではなく、患者の気持ちに沿った医療をしてほしいですね。
投稿情報: カゲ茶 | 2009年4 月27日 (月) 22:25