『沖縄の米軍基地と軍用地料』(来間泰男、がじゅまるブックス、2012年)
日本本土の米軍基地は、もともと
日本軍基地だったところが多く
ほとんど国有地だが、沖縄の米軍基地は、
国有・自治体・私有地がそれぞれ3分の1。
私有地には日本政府から地代が支払われる。
その実態とゆがみ。
『子どもという価値ー少子化時代の女性の心理』
(柏木恵子、中公新書、2001年)
おもしろかったし、よくわかるな~という感じ。
「つくる」存在となった子どもへの心理を探求。
少子化問題をこういう切り口から考える
ことも大事だと気づかされた。
自分の価値観を相対化できる良書。
『ひずみの構造 基地と沖縄経済』(琉球新報社、新報新書、2012年)
第17回「平和・協同ジャーナリスト基金賞」の
奨励賞を受賞した、琉球新報の連載記事を
まとめたもの。
沖縄経済と米軍基地とのかかわり・
問題点について、網羅的に取材。
知らないことがたくさんあった。力作。
『空飛ぶタイヤ(上)』(池井戸潤、講談社文庫、2009年)
上巻471ページ、グイグイ一気のおもしろさ。
著者が三菱銀行(当時)で働いていた
ということもあり、ものすごいリアリティー。
中小企業の苦闘、会社とは、
企業の不正に労働者はどう立ち向かうのか。
『空飛ぶタイヤ(下)』(池井戸潤、講談社文庫、2009年)
さいごまで没頭して読みすすめた、傑作小説。
企業につとめる労働者の悲哀も感じましたが、
働く人やまじめな企業を励ます言葉や
登場人物の生き方がいたるところに。
小説自体の構成力、リアリティーも。
一流の読み物。
『ぺリリュー・沖縄戦記』(ユージン・B・スレッジ著、
伊藤真/曽田和子訳、講談社学術文庫、2008年)
太平洋戦争における日米の戦闘のなかでも、
双方とも甚大な損害を生んだ
ぺりリュー島攻略戦・沖縄上陸戦の
たたかいを経験した海兵隊員の記録。
壮絶で、野蛮で、下劣な、戦争の生々しい現実。
沖縄戦での「泥」と「屍臭」と「砲撃音」。精神を病むアメリカ兵。
沖縄戦の本はわりと読んできたつもりだけど、
アメリカ兵のこうしたリアルな証言記録は初めてで、
沖縄戦というものが、米軍にとってもどれだけの「地獄」で
あったのかが伝わってくる。
それは、沖縄戦で神経を病んだアメリカ兵の数が
万単位におよぶことからも明らかだ。
それにしても、ここで書いて紹介するのもはばかれる、
おぞましい体験が、いやというほど出てくる。
とくに、ある日本兵が海兵隊員の遺体に行った行為は、
まったく考えられない、悪魔の所業である。
いまの日本にあっても、領土問題などで
「軍事的対応の強化」「九条の改定」を口する
政治家はたくさんいるが、
現代における戦争がどれだけおぞましいものか、
「戦場」の恐怖、匂い、砲爆撃音、肉片の飛び散るさまを、
知らなさすぎる。
「戦場」から遠い人間が、
「正義の戦争」を語り、引き起こす。
そんなものは、どこにもないのだ。
以下、本書からの引用。
「たしこめる屍臭は圧倒的だった。そのとてつも
ない恐怖に耐える方法は一つしかなかった。自
分を取り巻く生々しい現実から目をそむけ、空を
見上げること。そして、頭上を過ぎる鉛色の雲を
見つめながら、これは現実じゃない、ただの悪い
夢だ、もうすぐ目が覚めてどこか別の場所にいる
ことに気づくはずだ、と何度も何度も自分に言い
聞かせることだった。だが、絶えることなく押し寄
せる腐臭はごまかしようもなく、鼻腔を満たし、呼
吸するたびに意識しないわけにはいかなかった。
私は一瞬一瞬をしのいで生き延びてきた。死ん
だほうがましだったと思うことさえあった。われわ
れは底知れぬ深淵に―戦争という究極の恐怖の
真っ只中に、いた。ぺリリューのウムルブロゴル・
ポケット周辺の戦闘では、人の命がいたずらに失
われるのを見て、沈鬱な気分におそわれた。そし
首里を前にしたここハーフムーンでは、泥と豪雨
のなか、ウジ虫と腐りゆく死体に囲まれている。
兵士たちがもがき苦しみ、戦い、血を流している
この戦場は、あまりに下劣であまりに卑しく、地
獄の汚物のなかに放り込まれたとしか思えなか
った」
「苛酷をきわめる状況に兵たちは押しつぶされ、
私の知る最も屈強なつわものでさえ、悲鳴をあげ
る瀬戸際まで追い込まれていた。戦争について
書く人間も、こんな胸の悪くなるような事柄はふ
つうは書かない。そんな身の毛もよだつ戦場に
生きて、昼も夜もなく延々と戦いつづけ、しかも正
気でいられるなどということは、自分の目で見な
いかぎり想像もつかないだろう。だが、私はそれ
を沖縄でいやというほど見てきた。私にとって、あ
の戦争は狂気そのものだった」
「暴力と衝撃と血潮と苦難―人間同士が殺し合う、
醜い現実のすべてがそこに凝縮されていた。栄光
ある戦争などという妄想を少しでも抱いている人々
には、こういう出来事をこそ、とっくりとその目で見
てほしいものだ。敵も味方も、文明人どころか未開
の野蛮人としか思えないような、それは残虐で非
道な光景だった」
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