17日(日)、12時に労働者教育協会の総会が
終わり、すぐに御茶ノ水駅に向かう。
「御茶ノ水」から「新宿」「渋谷」と乗り換え、
井の頭線で「駒場東大前駅」に。
べつに、東大に用があったわけではない(笑)。
目的地は、駅から徒歩5分の
「日本民藝館」であった(HPはこちら)。
はじめての来館。
これまで、
倉敷民芸館、
出雲民芸館に訪れ、
民芸のすばらしさに
開眼したわたくしですが、
日本で初めてできた
民芸館がここ。
つくったのは、民藝運動の創始者である柳宗悦である。
そして、財政支援をしたのが、倉敷の大原孫三郎であった。
入ると、いきなり広い玄関と正面に階段。
心地よい空間と、落ち着く素材でつくられた建物である。
1時間ほど、ゆっくり民藝品をみてまわる。
特別展として、「棟方志功-倭画と書の世界」をやっていた。
棟方の画は、岡本太郎のようなエネルギーが感じられた。
さて、館内のショップで買った本のなかで、
デザイナーの三宅一生さんが、こんな文章を書いていた。
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私をたずねてくる海外の友人たちの多くが、「日本
らしい美やデザインを見るにはどこへ行けばいいか」
という。といっても、世界遺産になるような日光、京都
の有名社寺とか、光琳や広重の名作に触れたいとい
うのではない。もっと身近なところで生きている生活の
デザインの類、イスや机などの家具、キッチン用具、
衣類などを指しているのだ。
じつは、そういうモノの中にこそ長い時間に磨かれた
美やデザインの本質が潜んでいるのであり、海外から
日本を訪れる彼らはすでに、この国にはすばらしいデ
ザインの伝統があることを知っている人たちなのであ
る。美、に対してとりわけ鋭敏な彼らを案内して堂々と
行ける場所といえば、まず思いつくのが『日本民藝館』
だ。ゆっくりと落ち着いた気分で、日本のデザインに触
れ、考えるための空間がある。
『日本民藝館へいこう』(新潮社)
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日本民藝館をあとにし、「駒場東大前駅」へ。
途中、「渋谷」で岡本太郎の
「明日の神話」にでくわす。
2度目の対面であった。
写真では小さそうに見えるが、
実物はおそろしいデカさである。
でも、この壁画は、渋谷より、
広島に来てほしかった。
個人的には。
それにしても、
人が多い街であった。
横断歩道が人だらけである。
インフルエンザが関東でも
流行したら、
いったいどうなるのだろうか。
「渋谷」から「新宿」と乗り換え、
総武線に乗って「東中野」へ。
次の目的地は「ポレポレ東中野」という
映画館であった。
この隣にあった
喫茶店でしばし休憩する。
15時30分から、お目当ての映画を観る。
ジャーナリストの土井敏邦さんの「沈黙を破る」であった。
パレスチナ・イスラエル問題をずっと追っかけている
土井さんのことは、つねに注目している。
この映画は、パレスチナでの自らの加害の経験や
心境を、元イスラエル兵が語るという、非常に貴重な
内容が柱であった。「沈黙を破る」というのは、
「加害の兵士が語った」という意味である。
それだけでなく、パレスチナの難民キャンプの様子が
丹念に映し出され、住民の恐怖、怒りが、ずんと伝わってくる。
突然家族をイスラエルの爆撃で失った人のショックと慟哭の
場面は、涙なしには見られなかった。
こちらが、予告編動画。
上映が終わったあと、
土井さんと、同じビデオジャーナリストの綿井健陽さんの
対談が30分ほどあり、それを聞くことも目的のひとつだった。
上映後の対談の様子。
右が土井さんです。
綿井さんは、イラク戦争の
実態にせまった
「リトルバーズ」という
すごい映画がある。
こちらもぜひ見てほしい。
で、対談の中身も、たいへん勉強になったのだが、
一番「そうか」と思ったのは、
土井さんは、この「沈黙を破る」とつくるにあたって、
「日本の加害」の問題や、日本社会のあり方を
めぐっての問題意識をつねに念頭においていたということ。
あとで買った映画パンフレットのなかで、
土井さんはこう書いている。
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イスラエルによる“侵略・占領”を語るとき、パレスチナ
側の被害の報告だけでは、一面しか伝えたことにはなら
ない。“侵略・占領”する側の動機や行動原理、心理状
況をも伝えてはじめてその実態が重層的、立体的に見え
てくる、と私は考えている。
20数年にわたって“パレスチナ”を伝え続けてきた私が
今、“侵略・占領する側”のイスラエル将兵の内面に迫ろ
うとしたのはそういう動機からだった。その困難な作業を
可能にしてくれたのが「沈黙を破る」の元将兵たちである。
しかし彼らの証言は、日本人にとっても「他人事」ではな
い。元イスラエル軍将兵たちの証言は、日本人の“加害
の歴史”と、それを清算せぬまま引きずっている現在の
私たち自身を見つめ直す貴重な素材となるからだ。つま
り、元イスラエル軍将兵たちの行動と言葉を旧日本軍将
兵の言動と重ね合わせるとき、それは“遠い国で起こっ
ている無関係な問題”ではなく、かつて侵略者で占領者で
あった日本の過去と現在の“自画像”を映し出す“鏡”な
のである。日本人である私が元イスラエル軍将兵たちの
証言ドキュメンタリーを制作する意義は、まさにそこにある。
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綿井さんとの対談では、自衛隊員のことや
イスラエルの国情なども話題になり、非常に興味深く
聞くことができた。
こうしたマイナーな映画上映や(しかし、結構人も多く、
若い人も多かった)、こういう対談を聞く機会は、
岡山ではまずないので、貴重な時間であった。
18時20分頃、「ポレポレ中野」を出て、
総武線から中央線へと乗り換えて「東京」へ。
19時10分の
のぞみで岡山へ。
さばずし食べました。
23時帰宅。
東京での寄り道でした。
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