先週木曜日(18日)の晩は、77期岡山労働学校の
第5講義でした。
テーマは、「わかっちゃいるけどヤメラレナイ-資本主義の矛盾とは」
でした。
先週の講義前、15分間の
ワンポイント講座は、
Oさんがヴァイオリンを演奏。
はじまる前の練習風景。
今期のワンポイントは
みんなすごいなぁ・・・。
さて、講義のほうはというと・・・。
だんだん具体的な話が多くなってきたので、
聞くほうとしてはいろいろ具体的に考える
ことができるのかもしれません。
しかし、私自身の講義をふりかえってみると、
反省点ばかりが目立ち・・・。
中心ポイントをみなさんが押さえられたのかどうか・・・。
引き続き、最大限の努力で準備していきたいと思います。
グループ討論の風景。
この日の参加は19名でした。
討論では、「恐慌がだいたい
10年ごとにくるのがわかっている
のに、なんで防げないんですか」
という、素直な質問も。
レジュメはこちら→muzyun.pdfをダウンロード
以下、講義の概要です。
一。前回までのおさらい
(省略)
二。資本主義の矛盾のあらわれ
【ポイント】資本主義は、自らの体質そのものからくる「病」にたい
して、延命薬・緩和薬は次々と開発する能力(「自己調整能力」)
をもつが、「病」を根治する、もっともいい薬が飲めない。
1。生産と消費の矛盾-周期的な恐慌
◇生産力の無制限的発展ー「生産のための生産」「蓄積のための蓄積」
◇しかし、「買う」ほうがそれに追いつかない
(図省略)
売って売って売りまくれ! 買いたくてもカネがない!
◇モノを買う先は、4つしかない
*個人、企業(設備投資)、国・自治体、外国(輸出)
*日本の場合、モノを買う力のうち、55%は「個人消費」。
*搾取強化(賃金抑制、労働者使い捨て)をすれば、個人消費は冷え込む。
*日本の大企業の労働分配率の低さ(資料)
社会の大多数をなし、社会全体をささえる主体である労働者階級を、
「貧困」と「労働苦」にしばりつけつづけ、それが資本の生存条件
となっているところに、資本主義的生産様式の致命的な問題がある。
◇資本主義の「持病」である恐慌は、周期的に発生してきた
*1825(イギリス)、1837~38(イギリス)、1847(イギリス)、1857(世界恐慌
はここから始まる)、1866、1878、1882、1890、1900、1907、1920、1929(大
恐慌)、1937、1957、1974、1980、1991、2000年前後、2008年以後
*国家が経済へ介入するという緩和策(ケインズ路線)も、恐慌をなくす
ことはできなかった。
*1929年の大恐慌が資本主義世界をおそったとき、流行った話
子ども「なぜストーブをたかないの」
母「お父さんが首になって、石炭を買えないからよ」
子ども「なぜ、首になったの」
母「石炭が売れないで、炭鉱がつぶれたからよ」
2。貧困の拡大と格差の極端化
◇貧富の格差の拡大
*世界の人口のうち、富裕層を形成する20%と、貧困層を形成する
20%とを比較した場合、収入の格差は、1960年で「30対1」だった
ものが、1999年には「74対1」と、2倍以上に広がっている(2003年、
ILO事務局長報告)
*世界の人口の約半分に相当する30億人は、1日あたり2ドル以下で
の生活を強いられ、さらにそのうちの10億人は、1日1ドル以下で生
計を立てざるをえない状況(同報告)。
◇世界的な規模での失業者の増大《国際労働機関(ILO)報告》
*1997年1億4000万人→2000年1億6000万人→2003年1億8000万人。
*2009年には、はじめて2億人を突破する見通し。最悪で2億3千万人と予想。
*失業者(相対的過剰人口)は、絶対的に資本に従属させられる
「過剰労働者人口が、蓄積のーまたは資本主義の基礎上での富
の発展のー必然的な産物であるとすれば、この過剰人口は逆に、
資本主義的蓄積の槓杅(こうかん〔てこ〕)、いやそれどころか資本
主義的生産様式の実存条件となる。それは、あたかも資本が自
分自身の費用によって飼育でもしたかのようにまったく絶対的に
資本に所属する、自由に処分できる、産業予備軍を形成する。
それは、資本の変転する増殖欲求のために、現実的人口増加の
制限にかかわりなくいつでも使える搾取可能な人間材料をつくり
出す」 (『資本論』第23章、1087P)
◇巨大資本家への富の集中、金融経済の膨張
*日本の大企業(資本金10億円以上)の内部留保
・1973年13兆円→1988年74兆円→2000年172兆円→2007年228兆円
*1980年には世界のGDP総額(10.1兆ドル)と世界の金融資産総額
(10.9兆ドル)は、ほぼ同じ規模であったが、2006年には、前者の
48.3兆ドルに対して、後者は167兆ドル(約3.5倍)に増加した。デリ
バティブ取引(注)の「想定元本」(600兆ドル)を含めると約15倍に
達している。
(注)金融派生商品を用いた取引のこと。株式、金利、為替などの
金融商品を用いてする、先渡取引や先物取引、オプション取引、
スワップ取引など、金融商品自体を取引するのではなくその売
買権利や交換権を取引することから、”派生”という意味の英単
語(Derivative)でこう呼ばれる
3。発展途上国に自立的発展の道を提供できない
◇マダガスカルを例に
*世界でもっとも貧しい重債務貧困国のひとつ。総人口1900万人のう
ち、67.5%(約1500万人)が最貧困層を形成している。
*マダガスカルは、資源が豊富な国で、近年、サファイヤ、ニッケル、
コバルト、チタンなどの埋蔵が発見されている。ところが、それを採
掘する権利は、海外の巨大資本が買っていく。マダガスカル政府や、
国民にはわずかな“おこぼれ”しか残らないという構造ができあがっ
てしまっている。
*ちなみに…。高校と大学の学費を段階的に無償化することを定め
た国際人権規約のA規約(社会権規約)第13条を留保していた日本
など3か国のうち、ルワンダが08年12月に留保を撤回。これで、同
条項を留保している国は、条約加盟国160か国中(09年5月現在)、
日本とマダガスカルの2か国だけとなった。
◇南北問題を資本主義は解決できるのか
*サハラ砂漠以南のアフリカ諸国は、以前にも増して資本主義先進
国の生産活動に必要不可欠な原料供給国としての地位に留まり続
けている。
*約2億1800万人の子どもたち(5-17歳、世界中の子どもの7人に
1人)が児童労働をしている(うち農業が7割)。特に多いのがサハラ
以南のアフリカの国。
「アフリカで輸出の75%以上を石油以外の1次産品に依存してい
る国は、17か国におよぶ。コーヒー、ココア、紅茶などの商品作物
は、生産から流通、価格決定権まで巨大企業に押さえ込まれている。
・・・コーヒー焙煎・製造の多国籍企業は巨額の利益を上げている。
ウガンダの例では、農家が1キロあたり0.14ドルで卸したコーヒー豆
が、英国の小売店では26.4ドルにもなっている(OXFAM調べ、2001~
2002年)。190倍という巨大な差である」
(『子どもたちのアフリカ』石弘之、岩波書店、2005年)
【横道話】
あなたが一杯330円のトールサイズコーヒーを買いました。その
お金は、どれぐらい生産者に入るでしょうか。
(映画『おいしいコーヒーの真実』HPより)。
①小売業者・輸入業者( 円)
②輸出業者、地元の貿易会社( 円)
③コーヒー農家( 円)
4。資本主義に、人類の未来をたくせるのか?-地球温暖
◇地球大気は、私たちの「生命維持装置」
*紫外線をさえぎるオゾン層
*地球が、二酸化炭素の量が少ないのはなぜか(地球は0.04%、金
星96.5%、火星95.3%)
*35億年前に海のなかで誕生した生命が、複雑な進化の過程をへて、
二酸化炭素を吸収して酸素を出す生命体(つまり光合成の作用をも
つ)を生みだした。この生命活動(光合成)によって、二酸化炭素が
長い時間をかけて吸収され、4億年前に、「地上で生命が活動でき
る」大気に改造されていった。約30億年かかっている。
*産業革命以後の、猛烈な化石燃料(石炭・石油など)の消費が、大
気中の二酸化炭素の割合を急増加させている。30億年かけてつくら
れた「生命維持装置」を、わずか数百年の経済活動で壊す事態とな
っている(別紙資料参照)。
*二酸化炭素は、温室効果(太陽の熱を地球のなかに留まらせる性
質)をもち、大気中の平均気温が上昇している。海面上昇、大規模
自然災害の増加、農作物の不作、水不足など深刻な影響が広がり
つつある。今後、平均気温の上昇を2℃以下に抑えることが必要に
なってくる。
◇世界的な取り組みは急ピッチで動いている
*国連組織IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、どうしても達
成すべき温暖化ガスの削減目標として、2020年までに、先進国の排
出量を1990年比25~40%減らし、2050年までに世界全体の排出量
を50%以上減らす(先進国では80%以上の削減が必要)ことを指摘。
*真剣な対応(排出削減のための社会的規制)がすすむ欧州
*ブッシュ路線からの明確な転換をはかりつつある米国
◇地球の未来より、経済界の利益を優先-日本政府の対応
*中間目標として、1990年比8%の減(2020年)を先日発表
*「大洪水よ、わが亡きあとに来たれ!」ーまさに資本の倫理が優先
*日本の二酸化炭素排出量の半分は、150の大規模排出事業所(発
電所、製油所、セメント、化学工業、鉄鋼など)から出ている(気候ネ
ットワーク調べ)。
*日本の排出先の8割は産業界。大型排出先がはっきりしているのに、
そこに規制をかけず、「自主努力」に任せているのが日本の現状。
*再生可能(自然)エネルギーへの転換もはばまれている。その1つ、
太陽光発電は、国内の可能な未利用地と建物の屋根の3分の1に
設置すれば、日本で消費される全てのエネルギーを電力として供給
できるほど、国内外で発展性をもつ実用技術。すすまない原因は、
自然エネルギーでつくる電力を、電力会社に固定価格で買い取らせ
る制度を、電力業界に反対されて実施しないため。
地球の未来より… 大企業の企業利益が優先!
(図省略)
早急に、社会的な規制が必要な問題でもある。
そしてより根本的には、利潤第一主義が行動原理の資本主義に、
人類の未来はたくせるのか?という問題。
5。強い「反作用」を生み出す(次回、次々回で詳しくやります)
◇資本の野蛮な振る舞いにたいして
*人びとのたたかい、社会による資本の規制を生み出す
◇そうした「反作用」が、資本主義を変革する主体の形成を成熟させていく
次回(6/25)は、「労働組合の役割と視点-その過去・現在・未来」です。
以上。
受講生の感想文(一部)
「資本家が利益を追い求めるために、多くの
労働者(や、労働者になるべきではない人びと)
が犠牲になっているということが、前回の講義
に続いてさらに深く分かりました。もっと皆が
幸せになる方法がないものか・・・」
「大企業ほど労働分配率が低いことに驚きまし
た。労働者の利益を抑える仕組みが気づかれ
にくいように存在していますね」
「いろいろ具体的な数字がいっぱいで矛盾が
よくわかりました。印象に残ったのは児童労働
です。7人に1人も・・・。この子にはどんな可能
性があるのかなーとか思いながら自分の子ど
もを見てるので、教育を受けれず可能性をつ
ぶされて働かされてる子どもがいるんだな…。
フェアトレードとかも考えていきたいなと思わさ
れたけど、所詮個人の努力、やっぱりひどい
しくみの中で知らないうちにそのしくみにのっか
って生活しているだけではダメで、しくみそのも
のを変えなくちゃと思いました」
「資本主義はずいぶんといろんな病気をかかえ
ているんだなあと思いました。すべてが裏目に
出て悪循環になってるなと思います。本当に一
部の人(資本家)しか幸せにしないんだなぁ…」
「児童労働の現実を改めて考えさせられました。
日本の高校と大学の教育費の問題もひどいと
思いました。何とかしてほしい問題です」
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