今日(1日)の午前中は、ソワニエ看護専門学校での
6回目の授業でした。テーマは、なんと、「寿命」。
もちろんこんな話をするのは初めてです(挑戦)。
おいおい、35年ほどしか生きていないオマエが、
「寿命とは・・・」なんてオコガマシイ!
というツッコミが入りそうですが、
いいんですよ、これはこれで(笑)。
今の時点で考えていることですから。
できるだけ「こういうものである」という定義を固定化
しなかったつもりですし、「考え方のひとつとして」という
断りをつけて話をしましたので。
前回、「他にもよい絵本があれば紹介してほしい」と
要望があったので、今日の授業とからめて、
『ルピナスさん』(バーバラ・クーニー作、ほるぷ出版)という
絵本を読みました。これも好評のようでした。
終了後、「先生、先生がこれまで紹介した絵本、
私ぜんぶ持ってます!」と嬉しそうに話をしてくれた
学生さんがいました。
なるほど、そういう人もいるんですね。
こういう偶然は、とてもうれしい。
講義の後半、『クレスコ』6月号の堤未果さんの
文章をさっそく紹介してみました。
そして、
学生さんの感想文は、またしてもスバラシイ。
勉強になります。ありがとう。
以下、講義の概要です。
一。長久の「看護・医療」読書日記
◇今週読んだ本
『あこがれの老いー精神科医の視点をこめて』
(服部祥子、医学書院、2008年)
二。寿命についてのあれこれ
1。最近の平均寿命について
◇都道府県別平均寿命は・・・(厚生労働省2007年12月発表)
*男性1位はどこ?( 県:79.84歳)この県は女性も5位。
*女性1位はどこ?( 県:86.88歳)この県は男性は25位。
*ちなみに、岡山は、男性11位(79.22歳)、女性4位(86.49歳)
*男女とも最下位は同じ県(男性76.27歳、女性84.80歳)。どこか?
◇ついでに、世界の平均寿命も見てみましょう(図表)。
2。歴史のなかで寿命の長さをみてみる
◇江戸時代はだいだい「人生50年」
◇1945年には、男性23.9歳、女性37.5歳。なぜ?
◇1947年では、男性の平均寿命は50.06歳、女性は53.96歳
*戦後(とくに60年代以降)、急速に平均寿命が伸びたのは、国民
皆保険制度の確立(1961年)が大きかったと言われている。
*「寿命」は、「どんな社会で生きているか」と深く関係している。
三。寿命とはなんでしょうか
1。日野原重明さん(聖路加国際病院名誉院長)の言葉を手がかりに考える
◇『十歳のきみへー九十五歳のわたしから』
(冨山房インターナショナル、2006年)
*寿命とは、からっぽのうつわ
「わたしがイメージする寿命とは、手持ち時間をけずっていくと
いうのとはまるで反対に、寿命という大きなからっぽのうつわの
なかに、せいいっぱい生きた一瞬一瞬をつめこんでいくイメージ
です」
「いのちに、齢(よわい)を加えるのではなく、
齢に、いのちを注ぐようにしなさい」
「時間というには、ただのいれものにすぎません。そこにきみが
なにをつめこむかで、時間の中身、つまり時間の質がきまりま
す。きみがきみらしく、いきいきと過ごせば、その時間はまるで
きみにいのちをふきこまれたように生きてくるのです」
*ただし、「死」をいつも意識して、「急いで、いろんなことを」つめ
こもうとすると、見失うものもあります。ボーっとすることも大切。
自然や人とゆっくりとした時間を過ごすことも大切。寿命という器
に何をつめこむのか、それは、1人ひとり、個性的であるものだ
と思います。
*“馬のたづな”ならぬ、“時のたづな”を上手ににぎる。ギュッと
凝縮した時間をつくることで、ゆったりとした時間が生きてくる。
ゆったりとした時間があるからこそ、ギュッと凝縮した時間をつ
くるエネルギーを蓄えられるのだと思います。
*ほかの人のために時間をつかうことができる
「寿命というわたしにあたえられた時間を、自分のためだけにつ
かうのではなく、すこしでもほかの人のためにつかう人間になれ
るようにと、私は努力しています。なぜなら、ほかの人のために
時間をつかえたとき、時間はいちばん生きてくるからです。時間
のつかいばえがあったといえるからです」
「ほかの人のために時間をつかうとなると、それを強く意識して、
そうする努力をしないかぎり、自分のことだけで1日をつかいはた
してしまいます」
「ほかの人のために自分の時間をつかうということは、自分の時
間がうばわれて、損をすることではないのです。それどころか、ほ
かのことでは味わえない特別な喜びで心がいっぱいに満たされ
るのです」
「人と人とが思いやりをもってはげましあい、支えあっていくことが、
人生のなかでじつはいちばんすてきなことなのです。人間ってすご
いものだなあと私が心から思うことは、人間には思いやりの心とい
うものがあって、見も知らない人のためにも自分の時間をつかえ
るというところなのです。そんなことは動物にはできません。人間
だけにできることです」
◇絵本『ルピナスさん』より
(バーバラ・クーニ-作、かけがわやすこ訳、ほるぷ出版)
「世の中を、もっとうつくしくするために、なにかしなくては」
2。いろんな人との、「生きた時間の共有」
◇みなさんの時間と、いろんな人の時間が重なるとき
*人と出会い、人から学ぶこと、人とつながりあうことで
生まれる「生きた時間」
*「私の出会った先生」(堤未果、『クレスコ』09年6月号より)
*これからみなさんが出会うであろう、患者さん1人ひとりとの時間の意味
3。最後に。「過去の時間」の意味について。
「皆さんも、まだ短いとはいえ、これまで生きてきた十何年の過去を
もっています。この過去はそれだけのものとしては、もうどうにもとり
かえしようがないわけです。
しかしここで一言つけ加えておきたいのは、人間にとっていったん
生きられたその過去というものの意味は、もうきまってしまってどうし
ようもないというものではなくて、それは現在の生き方いかんによっ
て、その意味を変えられることができるということです。人間にとって
過去と未来は現在によってその意味をえてくるのだからです」
(真下信一『時代に生きる思想』新日本出版社、1971年)
以上。
長久さんが、岡山県労働者学習協会の専従の方とは知らず失礼なコメントばかりしてしまい、
申し訳けありません。また、看護専門学校の授業も担当されているとのことで、恐れ入ります。
私も5年ほど、医療機関で働いたことがあります。その体験から、医療労働者のたいへんさもわかっているつもりです。
自営業者も労働者も、現代資本主義のもとでは、仕事を続けていくだけでもたいへんな情勢です。連帯の可能性はますます広がりつつあると思います。
投稿情報: 野澤 | 2009年6 月 2日 (火) 20:18
野澤さんのブログ、少しのぞかせていただきました。すごいです。
真下さんの本はとても勉強になりますよね。私も何冊か読みました。
mimiさん、はじめまして(?)。
貴重なご指摘ありがとうございます
今後ともよろしくお願いいたします。
投稿情報: 長久 | 2009年6 月 2日 (火) 09:28
「寿命」と階級闘争との関係をもう少し鮮明にした講義がいいですね。
投稿情報: mimi | 2009年6 月 1日 (月) 23:51
>(真下信一『時代に生きる思想』新日本出版社、1971年)
55歳の私も、この本を持っています。
ヘーゲル論理学の学習にも役立つ本です。
投稿情報: 野澤 | 2009年6 月 1日 (月) 20:34