なので、長~い記事になります。
先日の記事でも書いた、保育園での「ものの見方・考え方」学習会。
その1回目だったのであります。
場所は、岡山市の北、足守にある「もみの木保育園」です。
約20年前に無認可保育園としてスタートし、
2003年にNPO法人に認定された共同保育所です。
学童保育もやってるんですって。
まず行って驚いたのが、広~い園庭と、まわりの豊かな自然です。
園に入っていくと、ちょうど園長のM田さんがいて、
「すごく広いですね!!」と私が驚いていたので、
若干時間もあったので、園内を案内していただきました。
手づくり感あふれる遊具が。
「お金がないから、保護者の協力で全部手づくり」とM田さん。
これも全部保護者のお父さんたちの手づくりだそうです。
木と竹。竹は、すぐ近くの裏山から園児たちと一緒に
切って、とってくるんだとか。
さらにビックリしたのが、この手づくりプール。
水をポンプで入れるそうです。いや~、最高です。
子どもたちが楽しく遊ぶ風景が目に浮かびます。
こちらも、竹でつくったジャングルジムだそうです(笑)
これらの写真だけではわかりませんが、とにかく創造力いっぱいに
子どもたちが遊べそうな、広さと空間でした。
なによりなにより、日常的に「土」とふれあえるのが、最高の環境ですね。
園で野菜とかもつくったりしていて、収穫したものを食べるそうです。
子どもも、土のうえでハイハイをしているとか、裸足でかけまわったり。
うーん、感動です。
学習会のときに、M田園長が言っていたんですが、
「自然にふれあっていると、同じ日は1日もないとわかる。
子どもたちと自然との関わりは、毎日がドラマです」だって。
この言葉に、めっちゃ感動しました。
この「もみの木保育園」は、
20年前に、埼玉県の「さくら・さくらんぼ保育園」でともに保育を
学んだM田さんと、Y川さんが、足守の自然豊かな環境で、
「子どもたちが自然の中で思いっきり遊び、育つ保育園をつくろう」
とはじめたのが、スタートでした。
でもその当時は、職員2人、園児4人からのスタート。
「バブルのときだったし、『きたないところ』という感じで、
あまり見向きもされなかった」そうです。
資金もないなかで、さまざまな苦労もあったそうですが、
次第にもみの木保育園の保育に共感する保護者や支援者が
広がり、園児もふえ、7年前にNPO法人に認定されたそうです。
障害児保育も積極的に行い、「どのこもみんな育つ」がモットー。
さらに今は職員も10数人までに増え、とくにここ1年間で
若い職員の採用がすすんだということです。
これから、どんな保育園に育っていくのか、すごく楽しみです。
で、そんな保育園で、「ものの見方・考え方」の学習会が
スタートしたのであります(月に1回、来年の3月まで)。
学習会は、この部屋で。ふだんは1~2歳児がいる空間だそうです。
設立時に、古い農家の空家を改築して、 つくったそうです。
たしかに、農家の家のつくりをしていました。
でも、すごく落ち着く雰囲気。開放感いっぱい。すてきです。
現在は、ここから少し離れたところに、もう1つ園舎があって、
そこは、3~5歳の園児たちが過ごすところだそうです。
こーんな本も本棚にありました。学習の友社の本もあるね。
私、あんまり知らなかったんですが、埼玉の「さくら・さくらんぼ保育園」の
斎藤公子さんという人がすごい人だったらしく、
「幼児期の子どもたちの体と心の発達には『太陽』と『土』と『水』が
欠かせない」という保育理念や、リズム遊びの実践理論も切り拓いたそうです。
その保育実践に共感した人たちが、全国でそういう保育園をつくるために
奮闘しているとか。へーです。
で、これも調べててわかったんですが、その斎藤公子さんは、
労働者教育協会ともかかわりがあった人だそうです。
詳しくは、また勉強していきたいと思います。
帰り際にもらった、「もみの木保育園」のことを書いた新聞記事には、
こんなことが書かれていました(毎日新聞2003年10月22日付)。
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「私も昔は、子どもを知らなかった。それが、『さくら・さくらんぼ
保育園』で、いろいろなことができる子どもたちを見た時に、
衝撃を受けたの。今は私にも子どもが分かるんだけど・・・。今の
大人たちは子どもの可能性を知らないまま育児をすることに
なるよね」とM田さん。
ここでは、保育士たちに求められるものも大きい。その底辺に
は、子どもたちが育つ環境をつくる担い手として、「文学、哲学、
歴史など、保育士たちも最高のものを見なさい」という「さくら・
さくらんぼ保育園」に学んだ理念がある。
「子どもを育てる、ということはどういうことなのか。子どもたちが
自由に遊べる空間はもちろんですが、何が子どもたちの育ちに
とって大事なのかを考える、大人の集団が必要だと思います。
子育てって本当は、人間の英知が集められてなされるものだと
思うんです」と、Y川さん。
「人間はすばらしいと思う。可能性はいくらでもある。今の時代、
その芽を育てるのも摘むのも、大人次第かな」。その日の仕事
を終えたM田さんが、そう言ってニッコリと笑った。
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とまあ、こんな保育理念をもった保育園に入った、若い保育士
さんたちに、「ものの見方・考え方」をきちんと身につけてもらおうと、
今回の学習会となったわけであります。
この日の学習会には、園設立にかかわったM田さん、Y川さん、
そして、1年目~3年目の若い保育士さんが5名。
計7名の参加でありました。
学習会前に、おにぎりと野菜スープをいただいちゃいました☆
とくに野菜スープはおいしかったです。
園の給食も、野菜がすごーくいっぱいだそうです。すごい。
さて、1回目の学習会ですが、
「なぜ『ものの見方・考え方』を学ぶのか」というテーマで、
1時間ほど話をして、その後45分ほど感想交流。
約2時間たっぷりの学習会でした。
以下、話の概要です。
はじめに:「ものさし」の大切さ
『新訂 看護観察と判断』(川島みどり、看護の科学者)より
一。ここ1、2年で読んだ本のなかから
◇『キャラ化する/される子どもたち-排除社会における新たな人間像』
(土井隆義、岩波ブックレット、2009年)
◇『子どもの道くさ』(水月昭道、居住福祉ブックレット7・東信社、2006年)
二。自然・人間・社会への「ものの見方・考え方」(世界観)
1。対象(子どもや保護者)や、自分や社会をどう見るか
◇世界観とは?
*自然や人間や社会に対するなんらかの「ものの見方・考え方」のこと
*誰でもなんらかの世界観をもっている
2。必要なのは、首尾一貫した世界観
◇科学的な世界観を学ぶ
*幸い、自然や社会に対する体系的で科学的な世界観の基本を、人類は
すでに獲得し、積み上げています。あとは、それを私たちが学習するか
どうかです。
◇人間と環境の関係は・・・
*環境は人間に影響をあたえる。
*人間は、環境を整え、変えることができる。
『ベッドまわりの環境学』(川口孝泰、医学書院)より
三。絵本「わたし」から
1。「にんげん」とは何か?
◇「ごろう」と「みちこ」、その違いは
2。人間をとらえる、はずせない3つの基本視点
◇なぜ「みちこ」は学校へ行くの?
◇「みちこ」と、「ごろう」の「生きるすべ」の違いは・・・
◇「みちこ」とは、誰?
さいごに・・・
「世界をあるがままのゆたかさでとらえうるような、そんな目を
私たちはもちたい。ゆがんだ眼鏡は、世界をゆがんで見せる。
私たちは、ちゃんとした眼鏡がほしい。哲学への要求がそこか
らはじまる。・・・ちゃんとした眼鏡をかけたことのある人は知っ
ていよう、はじめてそれをかけたときのことを。それまで、木の
葉はぼうっとかすんで見えていた。木とはそんなものだと思っ
ていた。が、眼鏡をかけたとたんに、木の葉の一枚一枚が、
したたる緑とあざやかな輪郭をもって目にとびこんできた。世
界がそのあるがままの新鮮さで私たちに迫ってくる、そんな眼
鏡を求めて、私たちは哲学にむかうのである」
(高田求『人間の未来への哲学』青木書店)
以上。
けっこう考えて、苦労してつくった構成と内容。
いや~、すごくいい機会をあたえてもらったなと思います。
みなさん、すごく熱心に聞いていただきました。
あと、やっぱり学習会の人数って、6、7、8人ぐらいが、
たぶん一番楽しいし、中身も充実するということに、
昨晩、あらためて確信をもちました。
きのうが、めちゃ楽しかったものですから。
5人以下では、ちょっと雰囲気がさみしい。
9人以上になると、距離感や集中度でなんとなく弱くなります。
「集団学習は6・7・8人で」理論を、広くアピールしていきたいと思います(笑)。
労働学校の、討論のグループ人数も、このぐらいですしね。
もちろん、学習会の性格にもよりますけど。
次回からは、人間についての「ものの見方・考え方」として、
3回にわけて、「知性」「労働「社会」というキーワードで、それぞれ詳しく
学んでいくことになりました。とっても楽しみです。
参加された方の感想です。
「ものの見方・考え方ということが、自分のものさしであり、
それをみがき続けることの大切さをあらためて感じました。
知らず知らず、言葉や考え方がわくにはめられていること。
少し、こわさを感じながら自分を客観的に見る努力をして
いきたいと思いました」
「子どもを相手に仕事をする者として、日々様々な働きか
けを子どもに対してします。その働きかけをどのように
するか考える基になるのが、その人の“ものさし”だと
思います。よりよい首尾一貫したものさしをつくっていく
ことは、永遠の課題であると思います。日々意識すること
を怠らず、試行錯誤しながらも磨いていかなければなら
ないと思いました」
「キャラ化するという話を聞いて、他人から自分のことを
固定化された見方をされているように思いました。『自信
のないことに自信がある』という言葉がとても考えさせられ
ると思いました。ものさしがくるうと、働きかける過程もく
るってしまう。自分の中にも『ものの見方・考え方』というも
のがあるが、それをより具体的に学習できるので、頭の
中が整理されそうです。子どもへの見方や環境をどうかえ
ていくか、考えていくか、日々みがかなければならないの
だと思いました」
「今回『ものの見方・考え方』を学べて、あらためて納得
したり、気づきがあったりと、とても充実した時間だなあと
思いました。私のものさしは狂っていないだろうか、子ど
もにとって良い保育士だろうかと、考えることができました。
日々保育をしていく中で、子どもの立場に立って考える
ことは当り前、頭の中にはあっても本当にそれができてい
るかなど思い直すことができてよかったです。大人の都合
のいいように、楽をしないように、もっと“考える”って大切
なんだなと思いました。次回も楽しみです」
「『人間』と『環境』はとても大切な関係であり、切っても
切り離せないものだと改めて思いました。『環境』は1つ
ではなく、さまざまなものがあり、私たちはたくさんのもの
に生かされていると実感しました。保育士という仕事から
考えると、子どもへの環境の配慮が大切で、大人が自分
自身で環境を変えられるように、子どもが大人みたいに
なれるまでしっかり住みやすい、生活しやすい環境を
考えていかなければならないと思い、保育をしていくうえ
で、必要なことだと思いました」
「“キャラ化”するされる子どもたち→人間関係を豊かに
つくっていける→社会力=社会性をつける、ついていく
教育・地域・社会を! 考えていくこと問われている」
「何歳になっても、自分のものさしをみがいて、首尾一貫
した世界観をみにつけたい。ワクワクします。まだまだ
人生これから。人間のいのち、人間とは何かを問い続け
たい」
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