「われら高校生」(民主青年新聞高校生版)の
“科学的世界観を学ぼう”連載の2回目です(3月7日付)。
テーマは「ありのままに、変化のなかで見る」。
高校生に身近な話題をと思い、
血液型性格判断を導入部にしつつ、書いてみました。
第1回目にマルクスとエンゲルスを登場させてしまったので、
今回も次回も、関連づけて登場させています(笑)。
このへんが、連載記事の難しいところだと思いました。
まあ、高校生のみなさんにも、マルクスやエンゲルスの
名前だけは覚えてもらおうという下心もあるんですけど。
ご批評をお待ちしています。
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「科学的世界観」っていわれても、さっぱりなんのことか
イメージできない人も多いのではないでしょうか。学校では
こんな言葉は聞きませんからね。
前回もお話したように、世界観とは、自然や社会、人間や
自分自身をふくむ、私たちをとりまく環境を「どのように見る
のか」、その「ものの見方・考え方」のことをさします。では、
科学的な世界観って、どういうことでしょうか。
2400万人が同じ性格?
たとえば、血液型によって性格や人間関係を判断する
「ものの見方・考え方」があります。みなさんは、どのよう
に思いますか? 学校のなかでも「血液型は?」「あーやっ
ぱり!」「えー意外~」など、こんな会話の経験、かならず
あると思います。信じている人もかなり多い。でも、これっ
て本当でしょうか。
日本人の血液型は、だいたいA型が4割、O型3割、B
型が2割、AB型が1割だと言われています。ということは、
たとえばB型の日本人は、2400万人ぐらいになります。
この2400万人が、同じような性格・傾向であるなんて、
まずありえない話です。人間って、そんなおもしろみの
ない、単純な動物ではありません。猫や犬にも、性格の
ちがいがありますが、私たちは、それを血液型で判断し
たりしないですよね。人間にしかあてはめない。これは、
「そういうもんだろう」という先入観・思いこみがあたかも
本当であるかのようにひろめられているからです。
もし血液型と性格に因果関係があるならば、「血液型
と性格」の授業があってもいいし、教科書にも書かれて
いるはずです。なぜそれがないのでしょうか? 答えは
簡単です。事実でないからです。
自然を見るときも、社会を見るときも、人間を見るときも、
事実から出発する。これが科学的な世界観の大事な特
徴の1つです。
この血液型性格判断の一番の問題は、先入観や思い
こみによってものごとを判断する習慣がついてしまう、
ということだと私は思います。これは、とても簡単でラク
チンなものの見方です。「事実をきちんとたしかめる」
「自分のものの見方がほんとうに正しいのか疑ってみる」
「ありのままに見ようと努力する」ことのほうが、はるか
にたいへんですから。
だから、そんなめんどうくさいことをいちいちやっていた
ら疲れる、ということで、先入観や思いこみという「便利
なメガネ」でものごとを見ていこうとしてしまうのです。
最近は「キャラ」でその人に枠をはめて見てみたり、
「キャラがかぶらないように」などの人間関係の「配慮」を
したりする傾向も強まっていますが、これも血液型の話と
共通するところがあります。その人への見方や人間関係
の固定化です。
昔の自分といまの自分
そもそも、性格も傾向も、人間関係も、いったん決まっ
たら死ぬまで固定化してかわらない、なんてことはあり
ません。すべてのものはつねに動きながら存在していて、
「変化の過程」にあります。
じつは、これが科学的世界観の大事な特徴の2つめ
です。すべてのものは、つながりのなかでたえまなく
変化していて、いろいろなジグザグはあっても、その変
化の過程を、発展の法則がつらぬいている、とするもの
の見方です。これを弁証法といいます。
しかし、これもなかなか難しいものの見方です。私た
ちはものごとの一断面、一側面、一局面だけをみて、
「○か×か」的な判断をし、「あの人はこういう人だ」「どう
せかわらない」という見方をしがちです。こちらのほうが
ラクだからです。逆に、小さな前向きの変化に気づいて
いく、変化を見ようとすることのほうが、努力のいること
なのです。
みなさんは、「3年前の自分」と「いまの自分」が、
「同じ自分である」と思いますか? もちろん変わらな
いところもあれば、「3年前とくらべれば、そりゃかわっ
てるよ」というところもあると思いますよね。では、「き
のうの自分」と「きょうの自分」ではどうですか? 1日
ぐらいでは変化を感じにくいかもしれませんが、もちろ
ん答えは、「変化している」です。数年単位で目に見え
てかわる変化は、毎日の小さな変化の積み重ねに
よって、つくられます。
たとえば「英語をペラペラしゃべれるようになりたい」
という目標を立てたとします。どんなに一生懸命勉強
しても、一週間では無理です。コツコツとした努力をね
ばり強く積み重ね、毎日小さな変化を積み上げていく
ことで、何年か後に英語がスラスラ言えるようになる
「大きな変化」がもたらされるのです。
ものごとの事実から出発し、たえまない変化の過程
としてとらえる。小さな変化をしっかり見て、大事にす
る。これが弁証法であり、科学的世界観の基本です。
「大切なのはかえること」
前回登場した、マルクスやエンゲルスは、この科学
的世界観を磨き、歴史や社会を徹底的に分析しまし
た。ものすごい努力で事実を積み上げ、そのなかの
変化の法則性をみいだし、歴史や社会を「かわってい
くもの」「資本主義は永遠ではない」ととらえることが
できたのです。
そしてもう1つ、彼らがそれ以前の人びとの世界観と
大きくちがったのは、自然や人間や社会を「どう見るの
か、どう解釈するのか」だけでなく、それを「どう変革す
るのか」というところにまで思考をおしすすめ、かつ実
践の先頭に立ったということです。
「大切なのはかえること」。マルクスが、若いときに
残したメモのなかにあるフレーズです。次回は、変化
をつくりだすための具体的なヒントを考えていきたいと
思います。
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この震災で、新聞発行はできているのだろうか…。心配です。
編集部のみなさんも、はりきって準備していた、
今月末に予定されていた民青の全国高校生集会は?
そして、震災被害にあわれた高校生のみなさんの
たいへんな状況にも、しっかり想像力を働かせたい。
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