ソワニエ読書日記5冊目。
悲嘆とそのケアについては、誰でも知っておくことに
こしたことはない、と思います。
悲しむこと、涙を流すことが、大事なのです。
そして、話を聴いてくれる人、寄り添ってくれる人の存在が。
『悲嘆とグリーフケア』(広瀬寛子、医学書院、2011年)
【読んでのつぶやきメモ】
*喪失(死別)体験による悲嘆や、そのケアに関する本を
読むのは、5冊目。
『デス・スタディー死別の悲しみとともに生きるとき』
(若林一美、日本看護協会出版会、1989年)
『死別の悲しみを超えて』(若林一美、岩波現代文庫、2000年)
『妻を看取る日-国立がんセンター名誉総長の喪失と再生の記録』
(垣添忠生、新潮社、2009年)
『喪失体験と悲嘆
―阪神大震災で子どもと死別した34人の母親の言葉』
(高木慶子、医学書院、2007年)
*この本の特徴は、著者自身の体験が、冒頭かなりつっこんで
書かれていること。そして、「看護師自身のためのグリーフケア」
について取り上げられていることです。
*以下、大事だな、と思った文章のメモです。
「悲しみはなんの前触れもなく、不意に私を襲った。胸を
えぐられる思いだった。街角で親子の楽しそうな姿が目に
ついた。年老いた人を見ると羨ましかった。車椅子に乗っ
ている老人を見ると羨ましかった。私にとって一番大切な
人を亡くしてしまって、生きていく支えがなくなった。それ
でも生きていかなければならない。(略)でも、実は私以上
に悲嘆にくれている人がいた。父だった」(7P)
「人は明日も今日と同じ日が続くと信じている。だから生き
ていける。それがある日突然、崩れ去る。自分が自分でな
くなっていった」(8P)
「その苦痛に私たちは思いを馳せることもなく、次の看護に
気持ちを切り替える」(21P)
「周りは何も変わっていない。だけどうちの子はいない。不
条理だな、なんでだろうなって」(遺族の言葉、22P)
「命日が近づいて来ると、余計にね、後悔が強くなってくる
んです。あのときなんで話しかけてあげなかったの?って」
(遺族の言葉、24P)
「家族や遺族は、周囲の心ない言葉に傷つきながらもそれ
に反発する気力もない。逆に、言われるようにできなかった
自分やそうできない自分を弱い人間だとか駄目な自分だと
思い、自分を責めている」(33P)
≪家族・遺族が傷つけられる言葉≫
・「いつまでも泣いていてはだめ。そんなことでは亡くなった
人が浮かばれない。しっかりしなさい」
・「そんなこと言わないで、頑張りなさい」
・「気持ちのもちようよ」
・「あなたよりもっと大変な人がいるんだから」
・「まだ若いんだからいくらでもやり直せるわよ(再婚できるわよ)」
・「気持ちはよくわかります」
・「時間が解決してくれる」
「怒りは悲嘆の正常な構成要素であり、怒りの表出は悲嘆
から回復していくための大切な感情表出だ」(56P)
≪有益なアドバイスの例≫
・「気持ちが不安定なときには大きな決断はしないほうがいい」
・「悲嘆から回復していくためには泣くことや語ることは悪い
ことではないし、むしろ大切なこと」
・「涙や怒りの中に癒しの力がある」
・「いまの状態は決して異常ではない」
・「悲しむことは健康なことであって、病気ではない」
・「亡くなった人への怒りや罪責感を感じるのは自然な反応」
・「亡くなった人の幻覚をみるのは異常ではない。自然な反応」
・「子どもの要求に応じられなくても悪い親ではない」
・「他者の援助を求めるのは適切なこと。それは健康な力」
・「専門家を紹介します」
「私たちは遺された家族のグリーフケアには関心があっ
ても、自分たちのグリーフケアには無頓着だ。自分の家
族を亡くすことと患者を亡くすことでは意味が違う。患者
の死を家族の死のように毎回受け止めていたら、それこ
そ仕事もできなくなるし、自分を保つこともできなくなる。
それでも、ケアしてきた患者が亡くなることは、医療者に
とっても深い喪失だ」(149P)
*感情労働としての看護
・自分の感情をコントロールせざるをえない環境
・共感疲労
・自分の感情に素直に向きあう
・落ち込める力
・看護師どうしの語りあい、支えあい
人の痛みへの想像力がつきますよ。
投稿情報: 長久 | 2011年5 月31日 (火) 14:26
読みたくなりました。
投稿情報: ともき | 2011年5 月31日 (火) 12:55