民青から、「時短からみえる未来」という
講師依頼があって、なにを題材にしようかと、考えた。
ロバート・オーエン、マルクス、ILO、ヨーロッパの時短闘争、
などなど、題材は山ほどあるけど・・・。
けさ、トマス・モア(英国の思想家、1478~1535)の
『ユートピア』(岩波文庫)って、
労働時間、何時間に設定してたっけ?
と思って、自宅本棚からひっぱり出してきて、眺めてみた。
これが出版されたのは、
なーんと1516年。約500年前です。
きのう、労働学校の講義で
ルネサンスの話したけど、
彼もそのルネサンス期の人です。
おもしろいな~。
すごい構想力だな~、と思いつつ、読みました。
「牛馬のごとき生活こそ、悲惨と酸鼻を極めた
奴隷の生活よりも、なおいっそうひどいもので
あるからである。しかし、思うに、かような生活
はユートピアを除いては実は世界中のすべての
労働者と職人の生活にほかならないのである。
例えばユートピアは昼夜を24時間に等分し、
その中僅か6時間を労働にあてるにすぎない。
すなわち、午前中3時間の労働、正午には
直ちに昼食、食後は2時間の休息、その後で
再び3時間の労働、次に夕食、とこういう風に
なっている。(略)空いている時間、つまり、
労働・睡眠・食事などの合間の時間は各人が
好きなようにつかっていいことになっている」
この設定だと、
朝9時に働き始めて、
12時から昼食、
13時~15時まで休息(長すぎない??)、
15時~18時までふたたび働き、
18時から夕食、という感じ。
モアは、
「労働には僅か6時間の時間しか当てられて
いないということを見て、あなた方はおそらく
こういう状態では若干の必要な物資が欠乏
するのではないかと考えるかもしれない(略)
しかし事実はけっしてそうではない」
と、わざわざ指摘して、
これこれこういう人がちゃんと働けば、
大丈夫ですと、なかなか具体的に書いている。
そこには、現在のワークシェアリングにも
通じる考えの萌芽がみられる。
おもしろいのは、「朝の講義」というものがあって、
ここで、労働がはじまる前の自由な時間をつかい、
さまざまな知識や教養を得る場が設定されている。
たとえば、労働学校が、朝にできちゃうってこと???
なんて思いました。すごい社会ですね。
あ、ちなみに、これらは、『ユートピア』の
第4章「知識、技術および職業について」のなかにあります。
そして、この章の最後の文章が、ちょっと感動的でした。
「市民はその労働時間を短くするよう、特に
当局の公布が発せられる。役人たちは市民
に対して不必要な労働を強制することを希望
しないからである。しかし、それはなぜであるか。
けだし、この国家の制度においては、まず
考慮され、求められている唯一の主な目的は、
公共生活に必要な職業と仕事から少しでも
割(さ)きうる余暇があれば、市民はそのすべ
ての時間を肉体的な奉仕から精神の自由な
活動と教養にあてなければならないということ
である。人生の幸福がまさにこの点にあること
を彼らは信じているからである」
肉体労働にたいする見方への弱さは
あると思いますが、
人生の幸福と自由な時間、への着想は、
ほんとうにこの通りだと思います。
500年前の、モアの夢。
いいですね
きのう、15時間も働いたので(汗)、
よけいに、楽しい夢をみることができました。
コメント
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