ずいぶん間があきましたが、
81期岡山労働学校の学習旅行1日目、島根原発の学びの
つづきです。
島根原子力館をあとにし、車で松江市内中心部へ移動。
場所を変えて、立場を変えての原発問題学習会です。
参加は16名でした。島根原発と原子力館に行った直後だったので、
みな問題意識はぐぐぐと広がっていたなかでの学びでした。
講師は、石橋寛さん。
島根原発「30キロ」住民運動の事務局長をされています。
とりあえず、石橋さんの学習会レジュメを以下掲載しますね。
1.現在の原子力発電は軍事開発の落とし子
最初は原子爆弾・・・・・・プルトニウムはウランから製造 1945年
広島・・・ウラン型 長崎・・・プルトニウム型
動力炉・・・・・・原子力潜水艦(軽水炉) 1954年
「平和利用」もウラン→プルトニウム炉路線を推進(核兵器の材料)
トリウム溶融塩炉(1960―1965~69)開発の中止 1971年
2.なぜ日本には原発が多いのか
世界第3位
1954年3月1日 第5福竜丸被爆
1954年3月原子炉築造予算 2億3500万円
中曽根康弘 米の原子力戦略
電気料金の仕組み 地域独占 総括原価
原発利益共同体 電力会社・原発メーカー・ゼネコン・
素材供給メーカー・メガバンク・政党・政治屋・官僚・
学者・マスコミ・立地自治体(原発立地交付金)
「安全神話」 原子力の規制機関なし 米国3000人
3.島根原発と活断層
1号機 活断層調査なし震度5
運転開始1974/03/29 46万kw/h マーク1
2号機 活断層は存在しない M6.5
運転開始1989/02/10 82万kw/h
プルサーマル運転計画 制御棒 燃料棒 ダーティープルトニウム
3号機 活断層 8キロ→10キロ→20キロ→22キロ 137.3万kw/h
杜撰な安全審査 中田高広島工大教授の指摘
「げんぱつ」228号 松江市安対協での発言
まだまだ伸びる可能性
4.511ヶ所の点検漏れ
1年間放置
現場に物を言わせない体質
5.中国電力の地元自治体懐柔策
島根町の場合
2号機増設同意 3億円の匿名寄付
3号機増設同意 17億5000万円の匿名寄付
鹿島町の場合
松江市との合併時 使い切れなかった匿名寄付を町内集落へ配分
6.地域防災計画(原子力防災計画)の問題点
原発は絶対事故を起こさない
島根県防災計画、経産省政務次官の話
10キロ圏―8万人 20キロ圏―20万人 30キロ圏―42万人
10キロ圏に
県庁・オフサイトセンター・市役所・島根大学・松江日赤……
原発につながる主要道路(県道・市道)はすべて活断層の上
7.原発なしでも大丈夫?
中電管内の電力供給可能量
約1400万kw/h ・・・ 昨年最高消費実績1191万kw/h
適正供給予備率8~10%
原発依存率16% (全国40%)
住民意識の変化
低エネルギー社会、再生可能エネルギーの開発と普及・促進
「30キロ」住民運動の活動
【参考】
「科学の目」で原発問題を考える
「赤旗」日刊紙『原発の源流と日米関係』
「赤旗」日曜版5月22日号、6月5日号
「前衛」2011年6月号、7月号
以上。
前半の、「現在の原子力発電は軍事開発の落とし子」
「なぜ日本には原発が多いのか」も、
いろいろ新しい発見があって、勉強になりました。
また、やはり島根原発の具体的な問題についての
石橋さんのお話は、
ずっとこの問題に取り組んでこられた方にしか
語れないリアルで実感のこもったものでした。
参加者みんなが驚いたのは、やはり中国電力の
行なってきた活断層調査のずさんさや、
「安全神話」にどっぷりつかった体質から生れる
さまざまな安全軽視の問題点、
そして地元自治体への「匿名寄付」という形での
お金のばらまきです。
もちろん「国策」としてすすめられた原発ですが、
中国電力独自の問題も、私たちはしっかり明らかにし、
取り組んでいかねばならないと思います。
島根原発の、
1号機は1974年製造で、格納容器が「マークⅠ」と呼ばれる旧式で
地震にはたいへん弱い構造です。設計寿命の30年をこえています。
いま停止中ですが、再稼動させずに、廃炉が必要です。
2号機は現在稼動中。安全性に大きな問題がある
プルサーマル計画を中国電力は行なおうとしています。
これも中止させていく運動が必要です。
完成率94%の3号機は、ABWRという「改良」沸騰水型原発と
よばれるもので、コストダウンを至上命令に新しい構造をとり、
世界でも運転例がありません。いきなり実験するようなものです。
(1)原子炉内臓型再循環ポンプの問題点
(2)制御棒電動駆動方式の危険性
(3)新格納容器方式の危険性
など、まったく安全性が不確実な原発となっています。
これは、動かしてはならないシロモノです。
などなど、今回の学習会で、原子力館では知ることの
できなかった、多くの問題を知り、考えることができました。
1日のなかで連続して、推進の立場と、そうでない立場の両方の
お話を聞けたことが、すごく有意義でした。
原子力館のみなさん、石橋さん、たいへんありがとうございました。
以下、参加者の感想文です。
【前半-島根原発の「原子力館」を見学しての感想】
「いま、あえて中電側の話を聞きたかったので、『原発を
推進したいけど、福島の原発事故の話をせざるをえない。
でも3号機はすすめますよ』という現時点での意向を知る
ことができてよかったです」
「原発のしくみがよくわかりました。実物の大きさを見る
ことで、より具体的に理解できました。処理をどうするの
かと聞いたら、地底深く埋めるが、埋める場所がない。
太陽に飛ばすことができたら、と言われていました」
「違和感ありありでした。福島での大事故を『事象』と
表現していたり、津波対策のみを詳しく説明する一方で
地震の揺れに対してあまり、というか全然説明されて
いなかったり。安全性の何もわからないまま、おしつけ
された印象でした」
「原発の構造や歴史はよくわかったが、3号機まで
建設する必要性はあったのか疑問に残った」
「福島での状況を考えると、違和感をおぼえた。ウソの
上になりたっているようで。いろんな施設もあり、住民に
いいイメージを与えようとしていることがわかった」
「いかに安全かを強調した話でしたね。館の中も、子ども
さん向けの設備や、コンパニオン(?)らしき若い案内の
方もおり、明るい雰囲気を無理に作り出しているだけに、
こわい気がしました」
「周囲の運動公園なども含め、お金かけてるなーー!!
と感じました。丁寧なような説明も、鹿島活断層の表示
がなかったり、自然エネルギーにあまりにもネガティブな
意見だったり、プルトニウムの危険性について説明なかっ
たり、腑に落ちないこともちらほら・・・。 原発建設の
DVDはすごいなーと思いましたが、いろんな下請け、
技術者の方が集まった施設なのは確かと思う。でも、
『建ててもいい』という許可が、信用できるのかどうか、
という一番大事なところがあやしかったら、日本の職人の
無駄づかいの気がする。ものづくりのプライドとずれた
理念で原発をつくらせないでー」
「説明を聞くかぎりでは、『安全神話』が根底にあると
聞いた。津波への対策を聞いて、正面からはわかったが、
引き波に対してが気になった」
「原発の中のことが、よくわかってなかったので、へぇー
ほぉーと感心。制御棒があんなのって、見れてよかった」
「原発について知ることができてよかったです。原発の
いいところばかり話されていたような気がする」
「お金をかけた立派な建物だなと。今回の震災のことは
説明せざるをえないんだろうなーと。子ども向けの装置は
おもしろかったです」
「説明だけを聞くと、事故が起きてもすぐに収束して
しまいそうな気がしてしまいますね」
【後半-原発問題学習会の感想】
「日本のいう『安全』が原発を推し進めるための『言い訳』で
しかなく、科学的な根拠はまったくない。自分たちが原発を
推進できるようにデータをつくりかえているんだ、ということ
が島根の断層の具体的な話を聞いてよくわかりました」
「聞けば聞くほど恐ろしくて、知らないことは恐ろしいこと
だとつくづく思いました。今日の話はすごくわかりやすかった
です。福島のことがなければ、島根にも来なかったと思うし、
原発のことも学習しなかっただろう。自分に対しても、
甘かったなと、反省しています。3号機は運転させては
いけない。声をあげてゆこうと思いました」
「いちばんは出発点からそもそも間違っていた。金もうけ、
利潤がらみのみしか頭にない政策だったということが、
いやになるほど教えられました。少しぼうぜんとしてしまい
ますが、とりあえずこれ以上の大きくなりうる危険を阻止
しなければいけないと思いました」
「原発の危険性や推し進められてきた背景について
よく分かった。安全神話のもとで、国民に正しい情報を
ださず、監視体制の弱さや規制する機関もなく驚いた」
「原発はいらないと、意を強くした。『なるほど』と思える
ことがたくさんあり、ためになった。アメリカが日本に
ウランを売り込んだこと、使い切らないといけない。
交付金が減っていき、麻薬のように次へといく。
活断層の件で、事実を認めない、うそをつらぬこうとする
中電の態度はひどい! 電気も地産地消に納得!」
「真実がどれだけ隠されていたかが分かりました。
危機感が募りました。再生可能なエネルギーに切り替
える必要がありますね。原発はこの地球に必要あり
ませんね。そのために自分のできることをしていきたい
と思いました」
「目の前の利害関係、利潤の追求によって、住民の
安全、命、暮らし、科学者の良心、ものづくりに関わる
人のプライドなど、様々なものが無視されていることに、
やりきれない気持ちになります・・・。岡山県民としても
島根原発に注目しつづけなければ、と」
「原発の裏には財界・政治家あり、という構図を生々と
感じた。住民運動の必要性を感じ、世論をつくることを
進めなければならない。国の安全管理のずさんさは
ひどい」
「中電がやばいことがよくわかった。あぶなすぎです。
ウラン→プルトニウム=核だから、トリウムはなくなった
っていうのは、やっぱり『核』ってすごい力をもっていると
わかる。『核』の力にすがりたいのだな。こわい」
「中電のよくない体質を知ることができました。交付金
とか電気代に上乗せされていて、自分たちも知らず知らず
払っていてちょっとムカーッ!としました」
「原発そもそもの安全性や、廃棄物の問題を問う以前の
管理体制がずさんでひどすぎる。『そんなに厳しくしたら
原発なんてつくれませんよ』発言も、怒りをとおりこして
あきれてしまいますね。何につけても筋が通ってない」
「知らされていないことが、多いことがわかりました。
疑問をもつことがたくさん出てきます。管理する仕組みを
そもそももててないことが重大。ブレーキをもててない
なあという実感です」
ちなみに、恥ずかしいことに、
私もこの学習会で初めて知ったのですが、
島根原発の電気は、すべて広島に送電されているそうです。
地元にはいっさいなしです。
では岡山は??
ということで、中電のHPで調べてみたら、
岡山県南の電気はおそらく、水島と玉島にある火力発電所。
どちらも資料館的なものがあるようなので、
近いうちにまた勉強しに行ってみようと思います。
そして、岡山県内の再生可能エネルギーの取り組みや、
潜在的可能性についても、学んでいきたいですね。
この夏は、エネルギー問題・政策を集中的に学びますよ!
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