今夜の学習会準備で、たまたま読み返しました。
「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目になります」の
フレーズで有名な、
当時(1985年)西ドイツのヴァイツゼッカー大統領の
敗戦40周年の国会演説。
その全文をおさめた『荒れ野の40年』(岩波ブックレットNo55)は、
いま読んでも、ものすごく普遍的。
演説の最後のメッセージを、以下、紹介します。
* * * * * * * * * * * * *
われわれのもとでは新しい世代が政治の責任をとれる
だけに成長してまいりました。若い人たちにかつて起こっ
たことの責任はありません。しかし、(その後の)歴史の
なかでそうした出来事から生じてきたことに対しては
責任があります。
われわれ年長者は若者に対し、夢を実現する義務は負っ
ておりません。われわれの義務は率直さであります。心に
刻みつづけるということがきわめて重要なのはなぜか、こ
のことを若い人びとが理解できるよう手助けせねばならな
いのです。ユートピア的な救済論に逃避したり、道徳的に
傲慢不遜になったりすることなく、歴史の真実を冷静かつ
公平に見つめることができるよう、若い人びとの助力をし
たいと考えるのであります。
人間は何をしかねないのか――これをわれわれは自らの
歴史から学びます。でありますから、われわれは今や別種
の、よりよい人間になったなどと思い上がってはなりませ
ん。
道徳に究極の完成はありえません――いかなる人間にとっ
ても、また、いかなる土地においてもそうであります。われ
われは人間として学んでまいりました。これからも人間
として危険に曝されつづけるでありましょう。しかし、われ
われにはこうした危険を繰り返し乗り越えていくだけの力が
そなわっております。
ヒトラーはいつも、偏見と敵意と憎悪をかきたてつづける
ことに腐心しておりました。
若い人たちにお願いしたい。
他の人びとに対する敵意や憎悪に駆り立てられることのな
いようにしていただきたい。
ロシアやアメリカ人、
ユダヤ人やトルコ人、
オールタナティヴを唱える人びとや保守主義者、
黒人や白人
これらの人たちに対する敵意や憎悪に駆り立てられるこ
とのないようにしていただきたい。
若い人たちは、たがいに敵対するのではなく、たがいに
手をとり合って生きていくことを学んでいただきたい。
民主的に選ばれたわれわれ政治家にもこのことを肝に銘
じさせてくれる諸君であってほしい。そして範を示してほしい。
自由を尊重しよう。
平和のために尽力しよう。
公正をよりどころにしよう。
正義については内面の規範に従おう。
今日5月8日にさいし、能うかぎり真実を直視しようでは
ありませんか(拍手)。
です。これが保守政治家なんですから、
ドイツの民主主義の底力を感じます。
早く日本でも、こういう演説をする首相を
誕生させなければ…。
投稿情報: 長久 | 2012年3 月29日 (木) 21:25
いい本ですよね。同じ敗戦国の保守政治家でも、「戦後レジームからの脱却」などとほざいていた安○晋三くんとか麻○太郎くんなどとは比較にならないぐらい豊かな見識を持った指導者です。
投稿情報: 路傍の人 | 2012年3 月28日 (水) 23:43