18名の参加でした。
ちょっといつもと違い、3階の小会議室での学習。
ちょっとせまかったですね。すみません。
めずらしくいつもの会場が埋まっていたもので。
この日は、「憲法の自己紹介-第10章と全体の構造」
という内容でした。講師は私でした。
この間、くりかえし強調しているように、
立憲主義というものを、しっかりつかんでもらう講義に
なりました。以下、概要です。
一。近代憲法の本質は「立憲主義」
1。一般の法律と憲法とでは、まったく本質が違う
◇ふつうの法律は、基本、私たちが守るもの
◇憲法は、国家権力を担う人たちに守らせるもの
(国民が国家に命令するもの)
*国家権力を法的に制限した憲法にもとづいて政治を
行うことを「立憲主義」という。ここは、憲法というものを
理解するためには決定的に大事な点。
「権力をもつ者がすべてそれを濫用しがちだというこ
とは、永遠の経験の示すところである」
(モンテスキュー『法の精神』)
2。立憲主義のさきがけは、イギリス1215年「マグナカルタ」
◇法によって、国王の権力に歯止めをかける
*貴族や僧侶などの特権階級の人たちが、自分たちの
既得権を守るために、国王の権力、とりわけ財政と刑
事罰の行使に歯止めをかけるという意味合いだった。
これが立憲主義のルーツ。
*しかし、中世の憲法が守ろうとしたのは主に特権階級の
利益だから、まだ近代憲法とは隔たりがある。
3。近代憲法の思想的ルーツとしての自然権思想
◇1人ひとりの個人の人権を、国家から守ることが大切という考え方
◇その出発点となったのが、ジョン・ロック(1632~1704)の思想
*いっさいの政治権力が存在しない自然状態ではすべての
人間が平等である、と考えたロックは、人間が生まれながら
にして持っている生命・自由・財産に対する権利を、「自然権」
と呼んだ。
*そして人びとは、自らの権利を守るために、お互いに契約を
結んで政府をつくりあげたという考え方(「社会契約説」)。しか
し、人びとの契約によって成立した政府が、必ずしも国民の
生命・自由・財産を守ってくれるとはかぎらない。
*そこでロックは、政府が権力をほしいままに行使して権利を
侵害した場合にには、国民が「抵抗権」を使って新しい政府
を樹立できると考えた。
*「自然権」「契約による政府」「抵抗権」をワンセットにした思
想が、近代憲法の礎(いしずえ)となった。
◇こうした思想的流れを受けてつくられたのが、アメリカの独立宣言
「われらは、次の事柄を自明の真理であると信ずる。〔即ち〕
すべての人は平等に造られ、造物主によって一定の奪うこ
とのできない権利を与えられ、その中には生命、自由およ
び幸福の追求がふくまれる。〔また〕これらの権利を確保す
るために人びとの間に政府が組織され、その権力の正当
性は被治者の同意に由来する。〔さらに〕いかなる統治形態
といえども、これらの目的を損なうものとなるときは、人民は
それを改廃し、彼らの安全と幸福をもたらすものと認められ
る諸原理と諸権限の編成に基づいて、新たな政府を組織す
る権利を有する」 (アメリカ独立宣言 1776年7月4日)
◇日本国憲法13条に受け継がれている基本的人権の核心
*アメリカ独立宣言の「生命・自由・幸福追求」の言葉がそのまま。
*そして、「個人の尊重」をかかげた。
「私たちは、自分たちの憲法がそのような歴史の流れを
引き継いだものであることを忘れてはいけません。憲法
の問題を考えるにあたっては、『個人の権利』を尊重する
ための『国家権力への歯止め』であるという近代憲法の
本質を、常に肝に銘じておく必要があります」
(伊藤真『高校生からわかる日本国憲法の論点』
トランスビュー、2005年)
二。日本国憲法の第10章「最高法規」を読む
1。97条
「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類
の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これ
らの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の
国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託
されたものである」
→基本的人権の保障こそが、憲法の目的であり、
最高法規性の実質的根拠
2。98条
「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反す
る法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の
全部又は一部は、その効力を有しない。
②日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、
これを誠実に遵守することを必要とする」
→98条2項の意味
・国際的な人権の確立・進歩を、日本国内に取り入れ
ることのできる
・これまで国連で決められた人権に関わる主要9条約
人種差別撤廃条約(1965年)、自由権規約(1966年)、
社会権規約(1966年)、女性差別撤廃条約(1979年)、
拷問等禁止条約(1984年)、子どもの権利条約(1989年)、
移住労働者権利条約(1990年)、障害者権利条約
(2006年)、強制失踪者保護条約(2006年)
→移住労働者権利条約、障害者権利条約に
ついては、日本は未批准
3。99条
「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その
他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」
*憲法遵守の宣誓をしないと大統領になれない
「私、バラク・フセイン・オバマは、合衆国大統領の
職務を誠実に遂行し、全力を尽くして合衆国憲法を維
持、保護、擁護することを厳粛に誓う」
(2009年1月20日の就任式で)
三。憲法の目的と、そのための仕組み
1。今日の話をふまえての、「憲法の目的」と全体像をつかむ
◇憲法の柱(目的)は3章
*10条から40条まで、31の条文がある。
*ここを読みこんでいくことが、憲法学習ではとくべつ大事
◇4章~9章は、目的を実現するための仕組み・手段
◇前文の「平和的生存権」、9条の戦争放棄は、
目的を支える土台
*平和が脅かされるとき、基本的人権も侵害される。
戦中の日本社会。
*逆に、基本的人権が危機にあるときには、いまある
平和も脆(もろ)いと認識しよう。
2。「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の3つを
学校では覚える
◇しかし、かんじんの「立憲主義」については、ほとんど教わらない
「憲法とは、主権者である1人ひとりの個人が国家の
権力行使に縛りをかける、そういう意味での最高法規
だということを多くの人に明らかにしていくところがいま
勝負なんです。国家に縛りをかける主権者の側が一番
大切なところを実感としてつかんでいないところが問題
です」
(小森陽一編著『私の座標軸ー憲法のいま②』
かもがわ出版、2005年)
以上。
ところで、99条の憲法遵守の義務のところで、
三省堂の『日本国憲法資料集 第4版』(2000年)に載っていた
「公務員の服務の宣誓」を資料でつけました。
これ、むかしはやっていたみたいだけど、
今はかなりあいまいになっているようです(たぶん)。
参加者の感想文(一部)は以下!
◆憲法の基本、本質を掘り下げての解説。大変
勉強になります。考え方から広めないといけませ
んね。交流会では憲法を活かすことの話も聞けて
良かったです。「普段の努力」も大切。
◆日本国憲法は、基本的人権の尊重をかかげて
いるが、実際の生活のなかで私たちひとりひとりが
どれだけ守られているのか、疑問に感じることが
あります。これから、少しずつ理解していきたいと
思います。
◆公務員の服務の宣誓は、知りませんでした。
ここに「不偏不党」が書かれているんですね。なる
ほど・・・。立憲主義の意味もよくわかりました。
最高法規のはずなのに、大事にされていないと
思った。憲法違反が多い。訴えるべき。
◆憲法は国民の基本的人権を守ることが第1目的
なので、国民が立法・行政・司法に守るように命令
するものというのが目からウロコでした。石原(前)
知事が憲法大きらいというのは、足かせに感じた
のでしょうが、とんでもないことと感じます。憲法の
ことは分かっているようで実は学ぶのは初めてです。
できるかぎり出席しようと思います。
◆アメリカの独立宣言が「革命権」といわれてカッコ
イイ!と思った。公務員の宣誓を見たことがなかった
ので、新鮮だった。
◆今日も難しかったです。ジョン・ロックの思想が
すごいなと思います。「いっさいの政治権力が存在
しない自然状態」=すべての人間が平等、と考えら
れたことって、すごいと思います。
◆改めて憲法を学んで、すばらしいと感動しています。
これからもがんばって参加したいと思いました。
◆第98条2項、いいね! さらっと1行書いてある
ことが、こんなに深い内容だなんて、えらいこっちゃ
憲法。こっちも油断ならない、目を光らせて読まなけ
れば。
◆憲法をわかっているようで、わかっていませんでした。
全体像がみえてきて、よくわかりました。
◆「立憲主義」たしかに学校では教わりません。教え
られていたら、もう少し「憲法違反だー!」と私たちが
身近なことに意識をもつことができるのでは、と思い
ます。条文をみると、38条の自白のことで、冤罪の
話はまさしく憲法違反ですね。まずは、いくつ「違憲」
があるか、アンテナをはっていきたいです。
以上。
終了後のなごみには、
10名が参加。「○○の秋」をテーマに、
話がはずみましたね。
今期もおもしろいです。
岡山のみなさん、ぜひご参加ください。
単発参加も大歓迎です。
コメント
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