『原発をつくらせない人びと-祝島から未来へ』
(山秋真、岩波新書、2012年12月)
山口県の上関町・田ノ浦に
原発建設計画が持ち上がったのが
1982年。それから30年あまり、
田ノ浦の対岸に位置する祝島の
人びとは、中国電力のすさまじい
懐柔策・卑劣な力にあらがい、
原発建設を阻止しつづけてきた。
沖縄・伊江島の基地闘争を記録した
『米軍と農民』(阿波根昌鴻)にも通じる、
非暴力かつ、不屈のたたかい。
その30年間のたたかいと、著者が祝島に
密着した最近のたたかいのルポ。
その不屈性の源泉もさぐる。
わたしは2011年8月に、3泊4日で祝島にひとり旅をした。
30年間続いている月曜デモも一緒に歩かせてもらった。
この島の魅力にゾッコン惚れた人間として、
さまざまな情景を思い起こしながら本書を
読むことができた。
原発に対峙する人間の姿勢、
どのような価値観・人生観をもつのかという
ところまで、多くのことを、
この祝島のたたかいは教えてくれる。
『もしマルクスがドラッカーを読んだら
資本主義をどうマネジメントするだろう』
(重本直利、かもがわ出版、2012年12月)
とても新鮮で刺激的な学び。
「マネジメント」の定義の豊富化に、
目からウロコ。
これは、どんな組織でも通じる
普遍的な学びにも。
わたしは、学習運動や労働学校運動などを
イメージしながら読んだ。
労働運動にも必ず役に立つ。
いろいろ議論になりそうなところもありそうだけど、
「こういうことも議論しなきゃ」と気づかせてくれる
たたき台として価値の高い1冊。
著者は、龍谷大学経営学部教授・経営学部長。
『本日7時居酒屋集合! ナマコのからえばり』
(椎名誠、集英社文庫、2012年10月)
久しぶりのシーナさんのエッセイ本。
まったく楽しい読書でした。
あんまり人の多いところでは読まない
ほうがいいですな。顔がにたにた
してしまうから。へんな人に思われます。
これまで、シーナさんの本からは、
たくさんのことを教わった。
まず、題名の付け方である。
この本も、じつにウマイ。
題名や見出しというのは、中身を読ませる導入部として
ひじょうに重要なものであるが、
シーナさんは、そこが天才的だ(もちろん中身も)。
そしていちばん学んだことというのは、
「カタカナの使い方」である。
たとえばこの本の57ページのエッセイ冒頭。
「夏になると『いいなあ』と思うのはモノカキという
自分の仕事だ」とある。
ふつうは、「物書き」と書くでしょう。
しかし、あえて「モノカキ」と書くことで、
シーナさん自身の仕事へのスタンスというか、
見方が変化球で伝わってくるのである。
シーナさんがよく使うカタカナは、「ヨロコビ」である。
日本語は、とても表現方法が多彩で、
「人生の喜び」「人生のよろこび」「人生のヨロコビ」と
書きわけることによって、
その喜びのニュアンス・伝わり方が変わる。
シーナさんの本を読むと、
「なるほど、ここでカタカナか」とうなることがよくある。
とても勉強になるのである。
わたしの表現や言葉の使い方、文章力を
高めるためのお師匠のひとりが、
なにをかくそう、このシーナさんなのである。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。