今日(3日)は、「社会進歩と女性講座」の第1回目でした。
これから隔週火曜日、全4回です。講師は私が担当します。
テキストは同じ題名の『社会進歩と女性』(不破哲三)を使います。
参加は7名でした。女性6名、男性1名。
だいたい予想どおりでした。
が、私の尊敬する岡山市議の
崎本さんが突然参加!
あー緊張した。そして恥ずかしい。
今日は、
「古典から学ぶ女性解放の道①-家族・恋愛・結婚の歴史」という
テーマで、テキスト範囲の分量は一番少なく、
導入部となる話をかなり比重をとってやりました。
はじめて話す内容なので、結構ボロボロ(涙笑)
中途半端な勉強ぶりが露呈したのでありました。
でもみなさんやさしいです。
講義終了後の感想交流がとても勉強になりました。
さすが崎本さん、という話も。
宮本百合子の「女としての人間らしさ」という言葉が、
みなさんに好評でした。
今後の予定は、
第2回(2月17日)「古典から学ぶ女性解放の道②-階級社会における男女関係」
第3回(3月 3日)「女性の『公的産業への復帰』-今日の世界における女性の地位」
第4回(3月17日)「女性の『公的産業への復帰』-日本ではどうなっているか」
となっています。単発参加も可能です。
では、以下、今日の講義の概要です。
はじめに:なぜこのテーマで学ぶのか
「ルールなき資本主義」の最大の争点のひとつ(詳しくは最後の講義で)
社会における女性の地位という問題や、ジェンダーの問題
「ある社会における婦人の解放の度合いが全般的な解放の
自然の尺度である」(シャルル・フーリエ)
一。宮本百合子『新しい船出-女らしさの昨日、今日、明日』
「女らしさという観念を女に向かってつくったのはけっして
女ではなかった」(『若き知性に』所収、新日本新書、8~9P)
「女にとって一番の困難は、いつとはなし女自身が、その女ら
しさという観念を何か自分の本能、あるいは本心に付随した
もののように思いこんでいる点ではなかろうか。自分の人生
での身ごなし、自身のこの社会での足どりに常に何か女らし
さの感覚を自ら意識してそれに沿おうとしたり、身をもたせよ
うとしているところに女の悲劇があるのではないだろうか。い
い意味での女らしさとか、悪い意味での女らしさということが
今日では大して怪しみもせずにいわれ、私たち自身やはりそ
の言葉で自分を判断しようともしている」(前掲書、13P)
「社会が進んで万葉集の時代の条件とはまったく異なりつつし
かも自然な合理性の上に自由に女の生活が営まれるように
なった場合はたして女らしさというような社会感情の語彙(ヴォ
キャブラリー)が存在しつづけるものだろうか。きっと、それは
ひとつの古語になるだろうと思われる。昔は女らしさというよう
なことで女が苦しんだのね。まァねえ、と、幾世紀か後の娘た
ちは、彼女たちの純真闊達な心に過ぎし昔への恐怖と同情と
を感じて語るのではあるまいか。私たちはそういう歴史の展望
をも空想ではない未来の絵姿として自分の一つの生涯の彼方
によろこびをもって見ているのも事実である」(前掲書、12~13P)
「女の本来の心の発動というものも、歴史の中での女のありよ
うと切りはなしてはいえないし、抽象的にいえないものだと思う。
人間としての男の精神と感情との発現が実にさまざまの姿をと
ってゆくように、女の心の姿も実にさまざまであって、それでい
いのではないだろうか。真に憤るだけの心の力をもった女は美
しいと思う。真に悲しむべきことを悲しめる女のひとは立派と思
う。本当にうれしいことを腹からうれしいと表現する女のひとは、
この世の宝ではないだろうか。そして、あらゆるそれらのあらわ
れは女らしいのだと思う」(前掲書、17~18P)
「従来いい意味での女らしさ、悪い意味での女らしさと二様にだ
けいわれてきていたものから、さらに質を発展させた第三種め
の、女としての人間らしさというものを生み出して、そこで自身の
びてゆき、周囲をも伸ばしてゆく心構えがいると思う。これまで、
いい意味での女らしさの範疇からもあふれていた、現実へのつ
よい倦(う)むことない探究心、そのことから必然されてくる科学
的な総合的な事物の見方と判断、生活に一定の方向をもとめて
ゆく感情の思意ある一貫性などが、強靭(きょうじん)な生活の
腱(けん)とならなければ、とても今日と明日との変転に処して人
間らしい成長を保ってはゆけまいと思う」(前掲書、19P)
二。エンゲルスの『起源』をいまなぜ学ぶのか
1。著者のエンゲルス(1820~1895)とはどんな人か
◇マルクスの親友・盟友
*「ほんとうの百科辞典」(マルクス評)
「ほんとうの百科事典で、昼でも夜でも、酔ったときでもしら
ふのときでも、いつでも仕事をすることができ、書くのはは
やく、悪魔のようにわかりがいい」
(マルクスの友人あての手紙のなかから)
*20数か国語に精通する語学力。「将軍」とあだ名がつくほどの軍事学通。
自然科学の研究も。マルクスの理論研究の、事実上ただ一人の相談相手。
*20年にわたるマルクスへの援助
・20年間の往復書簡は1344通
「20年にわたって二人はまれに、ときどき、短時間しか会わな
かった。しかし二人の交際はとだえることはなかった。…二人
は、毎日のようにたがいに手紙を書いたが、うちではモールと
呼ばれていた父が、エンゲルスの手紙にむかって、書いた当
人がまるで目の前にいるかのように、『いや、そうじゃない』、『そ
うだ、まったくそのとおりだ』などと語りかけていたことが、幾度
もあったのを、いまでもおぼえている。なかでもいちばんよくお
ぼえているのは、モールがエンゲルスの手紙を読んでたびたび
笑いもしたが、ときには涙が彼の頬をぬらしていたことである」
(マルクスの四女エリナの回想)
2。『家族・私有財産・国家の起源』(1884年)とはどんな本か
◇エンゲルスがマルクス死後、マルクスの研究ノートを「発見」
◇マルクスのモーガン研究
*モーガン『古代社会』-この本の値打ち
①原始共産主義社会の仕組みと姿を、はじめて明らかにしたこと
②女性の歴史についての大発見
◇社会における女性の地位の現在と将来を考えるときの、ガイドブックになる
*ただし、今日では訂正が必要な箇所も多いことは、押さえておく必要がある。
三。人類社会の出発点は男女平等の社会だった
1。「女系」を軸にした社会-低い生産力のもとでの共同生活
◇集団婚のもとでは、子どもの親としてはっきりできるのは、母親だけ
◇氏族の構成そのものが「母権」的な性格をもった
◇共同生活の場であった「共産主義的世帯」のなかでの女性の地位の高さ
「社会の初めには女性は男性の奴隷であったとするのは、十八
世紀の啓蒙思想から受けつがれたもっともばかばかしい観念の
一つである。女性は、すべての野蛮人のあいだで、また下段階
と中段階のすべての未開人のあいだで、部分的には上段階の
未開人のあいだでさえ、自由な地位ばかりでなく、高い尊敬をは
らわれる地位をしめしている」
(『家族・私有財産・国家の起源』新日本出版社、68P)
2。女性と男性の仕事の内容にも、平等の基盤があった
◇日本の場合にも-おもに縄文時代をみる
*採集という仕事の大切さ-食料入手で女性の果たした役割の大きさ
*縄文人の骨を分析すると、その働きぶりに、男女差がないことがわかっている
*土器づくりは女性の仕事、薪集めなども
*土偶における女性の表現、アクセサリーの装飾も
元始、女性は太陽であった」(平塚らいてう)
■次回(2/17)は「古典から学ぶ女性解放の道②-階級社会における男女関係」
◇原始社会の男女平等がくずれる原因は何か
◇階級社会における家族と結婚の歴史
◇女性解放のための基本的方向について
【テキスト以外の、主な参考文献】
『「家族・私有財産および国家の起源」入門』(不破哲三、新日本出版社、1983年)
『学びあう 女と男の日本史』(歴史教育協議会編、青木書店、2001年)
『新・日本の女性史』(伊藤康子、学習の友社、1998年)
『ジェンダーと史的唯物論』(鰺坂真編著、学習の友社、2005年)
そして、ボロボロ講義の講演録。
090203_001_2.mp3をダウンロード
(始まるまで時間がかかるかもしれません)
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