木曜日の夜、労働学校受講生のNさんから、
『銭ゲバ』(ジョージ秋山、幻冬舎文庫、2007年)の
上下巻を借りた。
まえにNさんがワンポイント講座で紹介していて、
なにやらすごく興味を引かれたので、「貸してちょ」と
お願いしていたのだった。
TVドラマ化もされたらしいが、
そちらは見ていない。
で、さっそく読み終えた。
ひと言で言えば、
悲しくて切ない話である。
主人公の蒲郡風太郎は、幼少期、
貧しい家庭に生まれ、母が病気になるも、
治療費がないために命を落とす。
「かあちゃんはお金もちの家のひとだったら死ななかったズラ」
「銭がないから死んだズラ」!と叫ぶ。
(「~ズラ」が主人公の口ぐせである)
今の日本の医療格差の現実がだぶる。
しかし、原作は1970年だというから驚く。
その痛苦の経験から、主人公の風太郎は、
「銭のためならなんでもするズラ」と決意し、
人を殺し、騙し、金で人の心を買うなど、
数々の悪行を犯しながら、
貨幣蓄蔵へとつきすすんでゆく。
しかし、「銭」を追い求めつつも、彼は、
「ほんとうの真実」「真に美しいもの」を希求する。
上巻のラストの出来事が象徴的であった。
下巻では、県知事という政治権力へ向かうが、
最後はまったく悲しい結末である。
「銭があればなんでもできるズラ」
「人間の幸福は銭ズラ」と語る主人公の顔は、
まったく幸福そうでない。
読みながら、NHKドラマ、ハゲタカの言葉が
よみがえってくる。
「誰かが言った。人生の悲劇は二つしかない。
ひとつは、金のない悲劇。そしてもうひとつは、
金のある悲劇。世の中は金だ。金が悲劇を生む」
(by鷲津政彦)
資本主義はたしかに金の世の中である。
しかし、金だけで、人は幸福になれるのか。
そんな深い問いかけをしている漫画であった。
一読の価値あり、である。
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