『医学とエンゲルス-社会医学の立場から』(松岡健一、大月書店、2009年)
を読み終える。
382ページにおよぶ大著である。
松岡さんは、水島協同病院の名誉院長、
ソワニエ看護専門学校の校長もされている。
はっきりいって、ツワモノの医師である。
若いときの武勇伝を少し聞いたことがあるが、
“たたかう医師”“革命家”である。
本書は、松岡先生が、近年になって取り組まれた
研究をまとめたものである。
もくじは、以下のようなもの。
Ⅰ.『イギリスにおける労働者階級の状態』から学ぶ-社会医学の立場から
第1章 森永砒素ミルク中毒問題の理論づけ
第2章 本書の紹介
第3章 住居と健康
第4章 労働災害・職業病・過労死
第5章 公害問題
Ⅱ.マルクス・エンゲルスと医師・医学者との出会い
第1章 全体像と代表的人物
第2章 クーゲルマン(産婦人科)への手紙から
第3章 ウィルヒョウ論
第4章 ナイチンゲール論
第5章 マルクスの闘病生活
Ⅲ.『自然の弁証法』、『反デューリング論』から学ぶ
-生物学、自然哲学の分野から
第1章 ダーウィンの「進化論」とエンゲルスの「生命の起源」論
第2章 『猿が人間化するにあたっての労働の役割』から学ぶ
第3章 オウム真理教とエンゲルスの心霊論
第4章 理論的自然哲学と経験的自然哲学
どの問題も、興味深い探求である。
松岡先生は、マルクス・エンゲルスの実践、理論活動から、
医師としての確固とした立場、視点・視座を学んでいる。
そこがすごい。
また、マルクスやエンゲルスが医学にもかなり精通していたことは、
松岡先生も驚きをもって分析をしている。
印象に残ったところのひとつに、マルクスの闘病生活の分析がある。
手紙などからマルクスの病状などを推察しているのだが、
マルクスは30代からすでにいろいろな病気を抱えていたことがわかる。
「こんな病気をかかえながら、あの理論・実践活動をしていたのか」と
驚きであった。数々の病気の背景には、極度の過労と貧困があった。
そんなマルクスにあてた、エンゲルスの手紙も、印象に残った。
マルクスの病気にたいする治療方針を提案しつつ、こう書いている。
「もし君になにかが起ったら、全運動はどうなるのだ。だから君が
どのように行動するかが問題にならざるをえないのだ。じっさい、
僕は、この件から君を抜け出させるまでは、昼も夜も気が休まら
ないし、君からの便りのない日はいつも不安で、君がまた悪くなって
いるのではないかと考えるのだ」(1866年2月22日)
ここでの、「どのように行動するか」というのは、
病気にたいしてどのように対処するか、という意味である。
活動家にとって、健康への自己管理と、迅速な対処は、
自分だけの問題ではなく、運動への責任でもある。
このエンゲルスの手紙は、活動家へのメッセージとして受けとめたい。
松岡先生の博識ぶりも、まったくすばらしい。
こういう医師がいる民医連運動は、やはり底力があるのである。
が、ソワニエの読書日記のために読んだ本書。
全体にレベルが高く、どうやって紹介するかが悩みどころである。
ま、エンゲルスとナイチンゲールの共通点、てなところから語ってみますか。
牧野さんありがとうございます。
調子はいかがでしょうか。
栗原さんのその詩は知りませんね…。
申し訳ないです。
投稿情報: 長久 | 2009年8 月26日 (水) 15:47
いろいろお疲れさまです。選挙情勢も共産党の支持率が公明党を抜いたとか。
最近「ぼーっ」とする頭でやっと「マルクスは生きている」を読み終えたところです。
ところで、先日ラジオの中で、栗原貞子さんの詩が流れていて、「産ましめんかな」も聞いていたのですが、別に「逃げも隠れもいたしません!!」というフレーズが流れてきて大変興奮しました。このフレーズの入った詩はご存知ないでしょうか?1952年位の作品らしいのですが、後から探そうとして見つかりません。ご存知ないでしょうか?
投稿情報: 牧野登 | 2009年8 月25日 (火) 11:34