きのうの午前中は、ソワニエ看護専門学校の
15回目、最後の講義でした。
テーマは「働くことの意味を考える」。
学生さんにも「人はなぜ働くのか?」を
問いかけながらの授業でした。
生活のため、家族のため、社会のため、自己実現、生きがい
子どもに親の働いている姿を見せる、老後のため、人とのつながり、
社会参加、分担、ひまつぶし、自由に使えるお金を得るため・・・
いろんな意見が出ました。
私は、社会的観点から「働くことの意味」を考えてみることの
大切さを強調してみました。
以下、講義の概要です。
一。長久の「看護・医療」読書日記
◇今週読んだ本
『ケアの本質-生きることの意味』
(ミルトン・メイヤロフ/田村真・向野宣之訳、ゆるみ出版、1987年)
二。なぜ人は「働く」のでしょうか
◇自分なりに「3つ」、思いつくまま書いてみてください
三。社会科学としての整理
1。社会を形づくる3つの側面
◇経済的関係、政治的関係、文化的関係
*その関係なしに、他の関係は成り立たないものは・・・
2。資本主義社会の発展→分業の発達・専門性の高まり→自由の飛躍的拡大
【分業とは】
1)ある労働を、こまかく分割し、分担して仕事を行う行程のこと
2)社会全体の必要な労働を、それぞれが手分けして行うこと
◇無数の人びとの労働によって支えられて
*『いっぽんの鉛筆のむこうに』(谷川俊太郎文ほか、福音館書店)
・「人間は鉛筆いっぽんすら自分ひとりではつくりだせない」
◇分業は何をもたらしたか
①職業の選択
*「自分はどんな仕事につくのか」という問いかけが生まれたのは、
身分制度社会が崩れてから。つまりごく最近のこと。
②専門性の高まり
*もっぱらそれを専門にして仕事をするというのは、熟練度や作業能率、
知識はいやおうなしに高まる。労働者が使う道具も、特定の作業にもっ
とも効果的に役立つ専門の道具として発達・完成させられる。
・もっぱら資源を採取する人
・もっぱら部品の組み立てだけをする人
・もっぱらエンジンの開発だけする人
・もっぱら医療の研究だけをする人
・もっぱら消防訓練をして火事にそなえる人
*それぞれの専門性が高まれば、当然、習得すべきもの、学ぶべき
ものも多くなる
・ソワニエ看護“専門”学校
労働がどんどん専門性を高めてきているということは、これまで「でき
なかったこと」ができるようになったり、これまで「知られていなかった
こと」を「知れる」ようになったりと、不自由を克服し、自由を拡大する
活動でもあるのです。
*さまざまな「自由獲得」を支えるのは、無数の人間の労働
◇ものづくりの生産力が高まっているからこそ可能
*文化もスポーツも、ものづくりの土台があってこそ発展する
3。社会的な視野から、ものごとを見てみることの大切さ
◇なぜみなさんは、ここに集っているのでしょう
*看護学校に入学した動機は人それぞれ、生まれ育った環境、
家族構成、これまで歩んできた道のり、性格も、みんな違う人間。
しかし、ここに集っている。
*いま、この瞬間にも、全国で何万人という看護学生が、看護師になる
ために勉強をしている。なぜか?
◇看護労働ってなんだろう-その社会性
*逆の発想で考えてみましょう
*いま、百数十万の看護師が24時間体制で日本の医療や地域の人び
との健康を支えています。もし、日本中の看護師が仕事をいっせいに
放棄したら、どうなるでしょうか。病院は、地域は、この国は、はたして
成り立つでしょうか
*もし、日本中の看護学生が「もう看護師になるのやーめた」となったら、
どうなるでしょうか。
*看護労働は、社会にとって、なくてはならないもの・・・つまり社会性をもつ
「自分たちの地球が宇宙の中心だという考えにかじりついていた間、
人類には宇宙の本当のことがわからなかったと同様に、自分ばかり
を中心にして、物事を判断してゆくと、世の中の本当のことも、つい
に知ることが出来ないでしまう。大きな真理は、そういう人の眼には、
決してうつらないのだ」
(吉野源三郎『君たちはどう生きるか』岩波文庫)
さいごに
以上。
今年も、悪戦苦闘の15回が終了しました。
「学ぶことは面白いのだ!ということを伝えられる授業にしたい」と
1回目に学生さんに言ったのですが、その私の思いが、
伝わっていたらいいな、と思います。
最後の感想文も、楽しく、嬉しく、読ませていただきました。
そのなかで、こんなものが…。
「専門的な難しい授業ばかりのなかで、先生の授業には
いやされました。ありがとうございました」
じつは、去年の感想文でも、「先生の授業は癒しになりました」
というのがありました。
相方に「ぼくの授業、癒し系らしいよ」と言うと、
「ぷっ」と小ばかにされましたが、これで堂々といえます(笑)。
ん、まてよ、だから眠くなるのかな・・・。
同じく去年の学生さんの感想文で、
「先生の声は子守唄のように聞える…」とあったしなぁ。
喜んでいいのか、悪いのか。
ま、良しとしましょう。
ひと区切りついて、さあ、また次の歩みを進めます
コメント
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