『時をつなぐ航跡』(井上文夫、新日本出版社、2009年)
という小説を読み終えて。
私、いわゆる民主文学というものについては、
ほとんど読まないし、評価できる立場では
ないのだけれど、これは読みました。
映画『沈まぬ太陽』が上映されている
時期だからこそ、興味深く、またいろいろと
考えながら読むことができました。
N航空の客室乗務員の労働実態や、
会社の労務政策による差別的扱いにも屈せず、
連帯をつむぐ客室乗務員の姿を描いた小説です。
著者は、話題の『沈まぬ太陽』の恩地元のモデルになった
小倉寛太郎さんと同僚だったそうです(へ~!)。
小説的な評価は私にはできないのですが、
まあ、ドキュメンタリーと思って読んだほうがいいかも。
説明がたいへん多いので(しかしこれは勉強になりました)。
客室乗務員の労働実態は、ある程度知っていましたが、
小説では国際線(ニューヨーク便)を舞台にすすむので、
よりリアルにその過酷さがわかりました。
職業病である腰痛のしんどさとか。たいへんつらそう…。
主人公の客室乗務員(濱砂ゆりえ)の、乗客にたいする、
こまやかな気遣いにも感動ですが。
そして、N航空の労務政策のむちゃくちゃぶりも、
まったく信じられないレベルです。
組合分裂攻撃にはじまり、不当労働行為のオンパレード。
その差別政策にはあきれるばかりです。
「労働者を大事にしない、こんな会社だから、
今のような状況になるわなぁ」と思わざるをえません。
小説を読めばわかるのですが、
航空労働者の闘いというのは、ほんとうに特筆すべき
教訓に満ちていると思います。すごい。
ぜひ労働組合運動に携わる人には読んでほしいと思います。
そして…
恩地元は、ここにもたくさんいるよ、ということなんです。
映画『沈まぬ太陽』は、やはり、そこのところの描き方が
非常に弱いと思います(原作よりさらに)。
団結の力、集団の力、のところが。
この小説に登場する客乗組合(客室乗務員でつくられる、いわるゆ第1組合)の
人たちは、さまざまな会社の差別(昇格差別、労働条件の差別・・・)に
屈しません。スジをまげないのです。
恩地と同じような、まったく不当な差別が襲いかかるのに、です。
「第2組合に入れば、不当な扱いもされないのに、
なぜ頑張れるのか?その勇気はどこからくるのか?」
という問いかけが、やはりこの小説にも出てきます。
その答えは、恩地のモデルとなった小倉さんが
講演会などで、同様の質問を受けたときの答えと同じです。
私はとくべつな人間ではない。
多くの仲間たちに支えらているからがんばれる。
これから続く後輩たちに同じような辛い思いをさせたくない。
先輩達の闘いの積み重ねを、
私たちが途絶えさせるわけにはいかない。
…労働者の力、仲間の力なんですよね。
恩地ががんばれたのは。
たたかう労働者の姿は、やはり美しいと思います。
そのなかで生まれる人と人との連帯の姿も、美しい。
恩地元は、日本中にいるのです。
そんな読後感をもった小説でした。
*****************************
N航空労組のたたかいを学べる文献として、
何年か前に、こんな本も読みました。
こちらもN航空労組の方が書いたもの。これは小説ではないです。
『俺たちの翼
-巨大企業と闘った労働者の勇気と団結』
(土井清、文芸社、2003年)
小倉執行部時代のことも
書かれていて、興味はつきません。
小倉執行部が大きな成果を生みだせたのは、
現場の労働者の実態と声をきちんと
汲み取ったからだという指摘に納得です。
tbiさん、ありがとうございます。
第2組合の問題は、この小説でもかなり詳しく書かれていましたね。
ほんとうに、ため息です。
投稿情報: 長久 | 2013年1 月12日 (土) 05:52
御用組合は、会社の労務部の一部にしか見えませんよ。物言う組合から見ると!
投稿情報: tbi | 2013年1 月11日 (金) 20:05
今も何にも体質変わってません、会社破綻している昨年ですら御用組合の委員長会社復帰と共に係長から管理職。その前の方は6階級特進でしたか?何だか労務体質は公務員並みですね。
投稿情報: tbi | 2013年1 月11日 (金) 20:02
ノッコオンさんはじめまして。
「すくらむ」知っています。
前は読んでいたんですが、最近のぞいてなく…。すみません。
そのインタビュー記事も、
以前読ませていただき、とても感銘しました。
貴重なお仕事をされていると思います。ぜひ今後ともよろしくお願いいたします。
投稿情報: 長久 | 2009年11 月 9日 (月) 12:44
宣伝で恐縮ですが、
『沈まぬ太陽』の原作者である
山崎豊子さんへのインタビュー記事、
読んでいただければ幸いです。
↓『沈まぬ太陽』『不毛地帯』原作者・山崎豊子さんインタビュー
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10372877090.html
投稿情報: ノックオン | 2009年11 月 7日 (土) 22:09
秋闘おつかれさまです!
恩地元の生き方が普通になる社会に早くしたいですね!
そのためにも学習運動をもっと前進させたいと思います☆
投稿情報: 長久 | 2009年11 月 5日 (木) 22:50
当単組は、11月3日の文化の日に『沈まぬ太陽』観賞会〜感想交流会を開催しました。労働組合のちからは、「団結(数)である」に共感です。いま、2009年秋年末闘争真っ最中です。当単組は650名あまりの構成員を擁しますが、今秋闘でたくさんの恩地元に出会いたいものです。
投稿情報: 書記長 | 2009年11 月 5日 (木) 21:54