ソワニエ読書日記3冊目。
また、すごい本に出くわした。そんな感覚。
一見、学習運動とはまったく無関係の分野とも思えるが、
これがどっこい、活きてくるんですよ、ほんと。
「人間的なもので私に無縁なものはない」とは
マルクスの好きな格言だけれど、
「人間的なもので学習運動に無縁なものはない」も、
また真実。
以下、“つぶやき”にしちゃあ、長いメモ書き。
『香りとタッチングで患者を癒す 臨床アロマセラピストになる
ー命のそばで寄り添うケアリングとは』
(相原由花、BAB JAPAN、2008年)
【読んでの、つぶやきメモ】
*ほとんど知らない分野の内容だったので、たいへん興味深く、
またその仕事の内容にも感銘を受けました。すごいです。
こんな「技と心」をもつ人間という存在のすばらしさ。
*「アロマセラピー」って??
「アロマセラピーでは、植物の花・葉・茎・根・実・木幹から抽出した
『精油(エッセンシャルオイル)』と呼ばれるフローラル系、ハーブ系、
スパイス系などさまざまな香りを持つ液体を使用します」(P28)
「精油の使い方としては、部屋に香りを漂わせる『蒸散』や、ティッ
シュやハンカチに垂らして鼻に近づけ吸い込む『吸入』という方法の
ほか、お湯に精油を入れての入浴、手や足を温める手浴、足浴な
どがあります。また、ホホバオイルやアーモンドオイルのような植
物性の油脂に精油を数滴入れ『アロママッサージ』をする方法も
一般的です」(P30)
*「アロマセラピー」+「臨床」
「臨床は『病床に臨む。病人のそばに行くこと』(漢字源)とあり
ます。つまり臨床アロマセラピーとは、何らかの疾病をかかえた
方やその危険がある方に対してアロマセラピーを使ってケアする
ということになります」(P36)
*第1章「ナラティブ(語ること)の大切さについて」、第2章「臨床ア
ロマセラピストってどんな仕事?」、第3章「私が臨床アロマセラピス
トになるまで」、第4章「さまざまな患者さんとの関わり、①心療内科・
慢性疼痛②心療内科・パニック障害③心療内科・摂食障害④婦人
科・不妊症⑤緩和ケア科・がん」、第5章「臨床アロマセラピストに期
待されること」、第6章「これからの臨床アロマセラピストたちへ」
*著者の相原さんの人間性が、びしびしと伝わってくる本です。相原
さん自身のナラティブ(自分の物語を語ること)、また患者さんとの関
わりの物語は、読む人の胸をうつ力をもっています。そして、プロフェッ
ショナルな仕事への姿勢からも多くを学べます。簡単な仕事ではまっ
たくない。自分自身のすべてが問われてくる厳しい仕事でもあります。
「ケアの本質」という意味でも、非常に普遍性があり、感動的です。
*オーダーメイドなアロマセラピー。
「難しいのは、患者さんの心、身体、魂の状態は毎回同じという
わけではないということです。臨床アロマセラピストは短期・中期・
長期の計画を立てて臨みますが、人は常に変化しているので、そ
の都度『今の患者さん』を理解しながら、アロマセラピーの組み立
てを少しずつ変化させていかなくてはなりません」
「考えて、感じて、反省して、そういう真剣勝負を何回も繰り返し
ていくうちに臨床力がついてくる」(P80)
*癒す人、ケアする人自身が問われる、そして成長する。
「こうした高次の癒しのためには、よい香りや心のこもったタッチ
だけでいいのでしょうか。もう1つ大事なことは、それを使うアロマ
セラピスト自身の存在が重要になるということです。アロマセラピ
ストの声も言葉も表情も行動も考え方も思いも言語的、非言語的
なコミュニケーションのすべてが強くクライアントに影響を及ぼしま
す。香りやタッチやそしてアロマセラピスト自身が持っているもの
すべてが統合され、より高次な相互作用が生まれるのです。パ
ターン化されたセリフやマッサージの提供、あるいは一方通行の
関わり方では何も生まれません。香りやタッチに命を吹き込むこ
とができるのはアロマセラピスト自身なのです」(P129)
「私もこれまでの臨床の中で多くの患者さんと出会い、それぞ
れに違う苦しみや考え方を知り、人生の語りを聞き、肌に触れて
きました。そのたびに、私自身が深く考えたり、悲しんだり、喜ん
だり、また人の力強さに感動したり・・・・・・こうした経験を通してア
ロマセラピストになりたての頃とは明らかに違う、成長した今の
自分がいると感じています」(P214)
「決して自分の成長が目的で患者さんと接してはいけない・・・
(略)アロマセラピストのために患者さんがいらっしゃるわけでは
ありません。クライアントのために何ができるのかをしっかり見つ
め、患者さんのためのアロマセラピストであってほしい」(P215)
「私は人を気遣うことこそ、ケアの原点だと考えています。アロ
マセラピーを必要としてくださるクライアントのために、私たちの
職業はあります。つまり私たちは人をいたわり、アロマセラピーを
通してケアすることで、『自分の存在価値』が生まれるのです。
自分以外の人をケアすることを通して、人の役に立つことによって、
私たち自身は生きることの真の意味を感じています。私たちはア
ロマセラピーを通して、クライアントと深い関わりを持ち、その過程
において感じ、考え、学び、そしてその中で“自分”というものを見
つけ、成長していくことができるのだと思うのです。
神聖な香りの中で、クライアントの肌と私の肌が重なり、そこに
お互いの思いが重なり、それが温かい空気のうねりとなってふた
りを包み、そして一体化していく。誰にも傷つけられることのない、
包まれたような安心感の中、お互いが癒され、生きていることを、
出会えたことを感謝できる優しい気持ちが降ってくる・・・。Touching
(タッチング)の意味に、『人に触れる』ことだけでなく『感動的な、
人の心を動かす、胸をうつ』という意味があることも、アロマセラピ
ストなら理解できると思います」(P230)
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