『学習の友』9月号に掲載された、
「カフェの味わい」の4回目(最終回)です。
いや~、このテーマで4回書かせてもらって、すごく良かった。
自分でも新しい発見がたくさんありましたよ。
書くって、すごいなあ。
ご感想など、お待ちしています。
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味わいのある場所
「味わう」。とても好きな言葉だ。
この言葉は、人間以外の他の動物には、基本的には
使われない。逆にいえば、人間にふさわしい言葉、だと
思う。
今、この原稿を書いているカフェで、店員さんが、「本日
のブレンドコーヒーは〇〇でございます。たいへん味わい
の深いコーヒーとなっています。よろしかったらぜひどうぞ」
と紹介してくれた(たまたま)。たとえば私たちがネコにエ
サをあげるとき、「今日のエサは味わい深いから、ゆっくり
食べてね」とは言わない。動物は、目の前にある食料を
「味わって」食べることはできない。エサがあれば、何は
さておいても、がっついて食べるのが基本である。
「味わう」という「食文化」をつくってきたのは、人間だけ
である。ゆっくりと味わいながら食べることができるし、食
材の調理法も多様に発展してきた。それだけではない。
色彩・見た目も重視する。食べる環境、その食材にふさわ
しい器、美しい配置まで、人間の食文化の奥深さは、じつ
に見事。そこには、「味わう」楽しみがある。
食文化だけではない。住まいに心地よさや快適性を求め、
ファッションを楽しみ、心癒される音楽に聴き惚れる。楽し
い会話を味わい、においを楽しみ、スポーツで体を動かす。
読書で喜怒哀楽を感じ、美しい景色に感動し、すばらしい
自然を満喫することで豊かな気持ちになる。人間は、「味
わう力」を多様に発展させてきたのだ。
私たちの生活が豊かになるということは、生活が文化的
になるということと重なる部分が大きい。生活全般を「味わ
い深い」ものにできれば、どんなにステキなことかと思う。
なかなかそういう「ゆとり」がもてないのが、現実ではある
けれど。でもだからこそ、その「ゆとり」を勝ちとることが、た
たかいのスローガンのひとつになるべきだと思う。
さて、カフェ、である。
私はやっぱり、カフェが好きである。そこには、人間らしい
「味わい」がある。珈琲の香りと味覚。お店の雰囲気や照
明。味わい深い器や机や椅子。心地よい音楽。会話を楽し
む人たち。新聞や読書を楽しむ人。ここでは、ゆっくりと時
間を過ごすことができる。忙しい日常のなかで、五感をゆっ
たり解放し、ホッとできる、大事な場所。
カフェは、いつも私のそばにある。
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