『学習の友』8月号に掲載された、
「カフェの味わい」の3回目です。
私なりの、
カフェの活用法を書いています。
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それぞれの役割や意味をもった空間
カフェは、私の仕事場でもある。
まず読書。なまけ者なので、家ではどうしてもだらけて
しまう。私にとって、カフェ・喫茶店ほど、集中して本を読
めるところはない。雑念が入りにくい空間なのだ。
『15分あれば喫茶店に入りなさい』(*)という本がある。
カフェは、「仕事モードのスイッチが確実に入る」「他の場
所では考えられない濃い密度の集中力で仕事や勉強に
取り組め」る、と著者は言う。同感である。私もカフェをそ
のように活用している。
なにをかくそう、この「カフェの味わい」も、事務所近くの
喫茶店で書いている。40~50分あれば、約900字が
パソコンに打ち込まれていく。事務所で書くより、ずいぶ
んはかどる。
大事な仕事上のアイデアを出したいとき、活動上の問
題や課題を整理したいときにも、カフェに入る。ノートと向
きあって、かりかりと自分の考えを集中してアウトプットし
ながら、整理していく。カフェを出るときは、新しいアイデア
が生まれたり、思考の整理ができた満足感で、とてもスッ
キリした気分だ。
人と、仕事や活動の大事な話をするときも、カフェ。事
務所だと、電話がなるかもしれないし、訪問者が突然く
ることもある。一時間、じっくりと集中して話をするには、
やっぱりカフェが一番だ。そうした「真剣な話しあい」の場
として、私は何百回もカフェ・喫茶店をつかってきた。だか
ら、ほんとうに必要で、大切な存在なのだ。
いま、カフェは、たんにお茶を飲んでおしゃべりをするだ
けでなく、「大人が勉強する場」「少人数での打ちあわせ
の場」にもなっている。本を読んでいる人、なにやら分厚
い教科書のようなものを開きながらノートに書き込んでい
る人、レジュメや資料を広げて話しあっている人たち。そ
ういう人をみると、いろいろな想像をして、楽しくなる。な
にを読んでいるのだろうか。なんの勉強かな。その人の
人生や生活の一部をかいまみれる。
ここからなにかを生み出していこうという雰囲気が、カ
フェにはある。
もちろん、純粋に珈琲を味わいたい人もいるし、そういう
人にとっては、こんな活用法は目障りかもしれない。でも、
カフェは、人それぞれの役割や意味をもった空間であって
いいと思う。
カフェは、とっても、ふところが深いのだ。
*齋藤孝、幻冬舎、2010年
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次回、9月号は、4回目。最後です。
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