きょう(13日)は、82期岡山労働学校の第1講義でした。
先週をこえる20名が参加! 初顔の人も何人か!
新鮮な雰囲気の教室になってます。こりゃ楽しいな。
「働く女性の現状―仕事にまつわるジェンダーギャップ」
というテーマ。私が講師を担当しました。
1回目の講義なので、展望や解決の方向性を
バーンと問題提起するよりは、
まず「現状」をつかもうというところに重きを置きました。
あえて語らなかったこともいろいろ。
あとの講師陣のみなさんが、
しっかりそこは語っていただけると思います。
今日ははじめての討論タイムだし、
内容からしても盛り上がるだろうと考え、
なんとか講義を予定の5分前に終了。
討論時間もたっぷりとれたと思います。
もりあがった討論時間。
年代も職種もみごとにバラバラ。だからこそオモシロイ!!
楽しそうでした。
以下、講義の概要です。
どちらかといえば資料説明がメインの講義だったので、
これだけだとちょっと不足ですが・・・。
はじめに
今日は数字をたくさん示します。「数」「平均値」はものごとの
傾向や特徴を判断するのにはとても有効ですが、個別性は
取り除かれています。じっさいには様々な形や思いが数字の
背景にはあります。ぜひ討論のなかで、深めていただけたら
と思います。
一。働く女性の現状ーさまざまな統計から見る
1。シューカツ(就職活動)で
◇女性はじき、補助業務、就職面接でのセクハラ発言、
容姿が採用基準…etc
◇就職したら、「これは女性社員の仕事だから」など
2。雇用者数、M字型雇用、生活時間分類
◇2,329万人で過去最高(2010年度)―資料<1>
雇用者全体の42.6%。
◇典型的なM字型雇用は日本の特徴―資料<2・3>
*1985年に男女雇用機会均等法がつくられるも…
◇なぜ、M字型雇用になるのか―資料<4・5・6・7・8・9など>
*現代日本の経済社会に、女性の手から仕事(経済的自立の
条件)を奪い、女性を家庭に追いやる強力な力が存在している。
*育児と仕事を両立できない。なぜか?
・日本独特の、異常な長時間労働(残業規制がない)。男性の
「会社人間」化による育児への関わりの難しさ(資料<28・30・
31>)、残業なし正社員の肩身のせまさ(感覚マヒ)。
・保育園に入れない、子育て支援などの社会環境整備の遅れ
・伝統的な性別役割分業論(男は仕事、女は家庭)資料<27・29>。
「3歳までは母の手で」(3歳児神話)などの、ジェンダー意識。
≪補論ー「子育てだけ」が招く社会的孤立。育児責任の集中。
社会からの孤立感、「自分」喪失の不安、夫との関係への不
満。自分の時間の著しい制限≫
*4大生活時間分類の統計にみる―資料<25・26>
◇妊娠・出産、育児休暇取得を理由とする解雇も
*厚生労働省の調べでは、2008年度の育児休業を取得
などを理由とした解雇・不利益取扱いに関する相談件数は
1,262件。妊娠・出産などを理由とした解雇・不利益取扱い
に関する相談件数は2,030件(2004年度は、それぞれ521
件、875件であるから、激増していることは明らか)。
3。非正規労働者の割合が半数を超えている
◇再就職=非正規雇用の割合が増える―資料<12・13>
*働き続ける女性に対しては、彼女たちを低賃金に追いや
る力が働いている。
資料<14・15・16・17・18>。 非正規労働者の7割は女性。
*生まれる経済力の格差が、家庭の中の男性優位を生み出
すひとつの土壌にもなっている。「誰のおかげでメシを食って
るんだ!」(養う・養われる関係)。DVも。
*経済力の弱さから、離婚できない女性も多い。低賃金は年
金の低さにも反映。
◇ひとり親世帯(とくに母子家庭)の貧困率の高さ
*2007年で母子家庭の貧困率42.9%。貯蓄ゼロ世帯が29.6%、
50万円以下が14.1%で、あわせると43.7%の世帯がギリギリ
の生活を強いられている。
◇企業にとって都合のいい労働力としての「女性の労働力」の活用
-財界の戦略
*雇用の調整弁としての女性の労働力の活用
*人件費抑制の手段としての女性労働力の位置づけ
*女性労働者の賃金抑制を、社会保障・税制で誘導する。
配偶者控除「103万円の壁」。
*女性の肩に「家庭責任」を一手に背負わせる
・男性の「会社人間」化とその保障としての女性に対する家庭
責任負担の強制
・文部省『家庭の設計』(1968年)は、女性に「主婦・妻・母・勤労
者・市民」の役割を求める。
・持てる労働力のすべてを職場に吐き出す男性労働者の支え
手として、家庭の中の女性労働力が位置づけられる。その役
割は男性会社人間の周到なメンテナンスと、未来の労働力で
ある子どものたちの育成。
・女性だけに対する若年退職の強要は、『男は職場で過剰労働、
女は家庭に全責任』という財界の労働者家庭管理政策の一環
でもあった。高度成長期後半の労働力不足に際して財界は中
高年女性のパート活用をすすめ、家庭責任と低賃金労働力の
両方を強制しはじめる。
≪主婦とはどういう存在か?
ー今後の講義のなかで学べると思うのでご期待を!≫
4。管理的職業従事者の少なさ―資料<19・20>
◇昇進差別は温存
◇今後の講義でも深められる予定
5。女性労働者はたいへん―資料<21・22・23・24>
◇役割の多さ、育児休業は女性がほとんど、セクハラ・パワハラ、
健康問題・・・
解決のためには何が? 課題は? 展望は?
今後の講義や討論で深めましょう!
【参考文献】
『男女共同参画 統計データブック2009』
(独立行政法人国立女性教育会館、ぎょうせい、2009年)
『女性白書2011』(日本婦人団体連合会編、ほるぷ出版、2011年)
『ルポ 職場流産-雇用崩壊後の妊娠・出産・育児』
(小林美希、岩波書店、2011年)
『子どもが育つ条件―家族心理学から考える』
(柏木恵子、岩波新書、2008年)
『働く女性の母性保護』(駒田富枝、学習の友社、2011年)
『はじめてのジェンダー・スタディーズ』
(森永康子・神戸女学院大学ジェンダー研究会編、北大路出版、2003年)
『格差社会を生きるー男と女の新ジェンダー論』
(杉井静子、かもがわ出版、2008年)
『セクハラの誕生―日本上陸から現在まで』(原山擁平、東京書籍、2011年)
『学習の友』2011年11月号「特集『女子力』を生かすためには」
以上。
(すいません、要望で講義の録音データをアップしてほしいと
いうのを受けていたのですが、来週初めにはアップします)
私の今期の講師任務はこれで終了。
今後の講師の方々の講義は、
私自身、とても楽しみです!
以下、参加者の感想文です。
「女性がどれだけしいたげられているか、データで
よーくわかりました。世界と比べると、日本はどれだけ
遅れているか」
「女性と男性の収入の格差がちょっとショック。それ
だけ非正規の人が多いってことかなと」
「労働時間の短縮がやっぱり重要!!だと思った」
「いろいろと勉強になりました。ウチの部署は男も
お茶くみをします。ジェンダーってむずかしいですね」
「ジェンダーは、財界などがもうけるために、差別を
利用して作っている、そのうちの一つだと思う。日本の
異常な資本主義の現われと思う」
「女性の社会進出の発展はめまぐるしいものが
あります。しかし、本当に変わらなければいけない
のは男性だと思います。自分の考え、感情にとら
われることなく、新しい考え方を受け入れることが
男性には特に必要です」
「時代の流れとともにジェンダーの考え方が変わって
きているんだなあと思いました。討論で色々な意見を
聞くことができて楽しかったです」
「データを示されるとおどろきます。男性を会社人間と
するために女性の待遇が悪くなることは、いろいろな
ものが表裏一体だということに気づかされます」
「はじめて参加しました。資料も充実で、勉強になり
ました。・・・班に分かれての話し合いで、いろんな
意見が聞けて、とてもよいですね」
「女性が働きつづけることのむずかしさが、社会の
システムの中にあることがわかりました。また、
女性の生き方として、働きつづけたい気持ちを貫く
ことを大切にしてほしいと思います」
「家は母子家庭だった。母さんが大変だったんだ
なーと思う。長時間労働な相方。アルバイトな私。
やっぱり働き方が問題だ」
「日本社会の中で『つくられた男女差別』について、
色々なデータが出て興味深かった。男は働かされ
すぎで、女も家庭に押し込められて・・・。次回から
もっともっと目からウロコの話が聞けると思い、
楽しみです」
なごみは久しぶりのカレー屋さんで。
初参加の人が何人かいると、良いですね~。
コメント
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