きのう(1日)は、82期岡山労働学校の第8講義があり、
17名が参加しました。
先週に引き続いて、講師は岡山大学大学院客員研究員の
沢山美果子さん。
「変わる家族の姿」というテーマで、
おもに近代家族にスポットをあてたお話だったのですが、
いや~、ほんとうに、素晴らしい講義でした。
とっても分かりやすく、受講生をしっかり巻き込みつつ、
押さえるところをキチンと押さえ…。
参加した受講生は、目からウロコの連続だったと思います。
みんな、目が輝いてましたね。
学習運動の醍醐味を味わえますね。こういう講義は。
「家庭」「主婦」「記念日」「一家団欒」「ちゃぶだい」「家事」「母性」
など、こうしたものについて歴史からひも解いてみると、
「そうだったのか!!」と発見の連続。おもしろい。
研究者としても一流の沢山さんですので、
資料も示し、どのお話もすごく説得力があります。知的です。
沢山さんは学習協にもとてもご理解がありますし、
ぜひ今後も、沢山さん講師の学習会を
定期的に企画していきたいと思います。お楽しみに!
以下、きのうのお話の概要です。
はじめに
あなたたちの家族、夫婦のイメージは?(家族、夫婦の常識)
「標準家族」のイメージ(標準家族とらわれ度チェック)
1、産むこと・育てることにおける男と女の今
・日本女性の労働の特徴:女子の労働力率の M字カーブの強固さ
(潜在的労働力率)
日本の育児期にある男性の労働時間の長さ
「仕事か、結婚・出産か」の選択=
(⇔北欧諸国:1970年代以降M字型の消滅)
岡山大生ジェンダー意識調査【1】←現実の反映
・国際比較のなかで:過去100年の日本の女子労働の位置【2】
→歴史の中での家族と産むこと・育てることを見直す
2、「母性」成立以前の「家」、父、母、子
近世社会(江戸時代)―「父親が子どもを育てた」時代
生産労働における男女の役割→産み育てること=夫婦の役割
→子育てに関わる男たち
柏崎日記【3】、『逝きし世の面影』【4】
家族、共同体の相互扶助のもとでの「働くこと」と「産むこと」
→M字の切れ込みなし:東北の二本松藩、下守屋村の場合
【5】(落合恵美子[2000])
3、「家庭」「主婦」の誕生と母性
アン・オークレー『主婦の誕生』
産業革命がもたらしたもっともドラマチックな変化
→近代社会固有の女性抑圧の焦点
・日本における近代家族と主婦の誕生:「家庭」の担い手の登場
―1910年~1920年代
・「家庭の幸福」=「一家団欒」」←家庭文化
・近代家族=家庭の担い手―新中間層
性別役割分担、職住分離
住まいの変化【6】、家計のやりくり【7】
家事労働の意味(愛情表現としての家事)と割烹着【8】
家庭=「安息所」、「慰安の場」=労働力再生産の場
3、「保護される子ども」観と母性の矛盾
・子どもを育てる母役割の強調(「婦人生い立ち双六」
・「家庭」という「教育」的世界への子どもの囲い込み
家庭石鹸 ライオン子ども歯磨き【9】
・つくるものとしての子ども観(「産児制限」=避妊)→少産少死社会へ【10】
強烈な我が子意識≠社会的存在としての子ども、
私的な存在としての子どもの発見
「母親の愛情と注意」=子どもの保護と囲い込み
おわりに
母性、父性のとらえなおし
野村芳兵衛の場合→近世の夫婦と子育てのあり方の継承
以上。
討論も、いつものように、大盛りあがり。
沢山さんも「すごく活発ですね」と驚いておられました。
「みなさん真剣に聞いてくれるので、話しやすい」とも。
そして、82期の講師の方々が口をそろえておっしゃられるのは、
「仕事を終えて、こうして学びにこれらるなんて、すごい」
ということです。
ほんとうに、私もそう思います。
平日の夜にこうして集うみなさんに、労働学校は支えられています。
以下、参加者の感想文です。
「たいへん、おもしろかったです。“主婦”“家庭”って、
つくられたものだったんですね。知らず知らずの
うちに、つくられた中で、過ごしていたんだと思った」
「家庭の形は労働の形、働きかたの変化で、どんどん
変わっていくものなんだなということがわかった。
固定的なものではない」
「標準家族が既に標準でなくなっている現在、
行政も様々な制度を見直す必要があると感じています。
労働運動も同様ではないでしょうか。見直しによって、
ジェンダーマイノリティの方々も暮らしやすくならない
かしら・・・」
「家庭、家事→どちらも近代につくられてきたんですね。
よくよーく理解しました。これ知ること、大事です。生き方、
変わる!! 江戸の生活・文化に興味津々です。
おもしろーい。」
「社会生産の形が変わる事によって、家族の形も
変わっていくということがわかり、勉強になった」
「ひじょうに面白かったです。前回、来れなかったのが
くやまれます。『家庭』というハリボテの正体がわかり、
目からウロコでした。これからの自分の、何かの
とっかかりになりそうです。特に、父性と母性の話」
「江戸時代以前の家族のあり方は自由でいいなあと
思いました。主婦、一家団らん、記念日などが
作られたものであるというのはびっくり。初めて
知りました。結婚前に性の相性も確かめるというのも
理にかなっていると思います」
「すごろくが印象的でした。自由でいいんだなと
思うことができて、良かったです」
「最後しか聞けませんでしたが、15分でも聞けて
よかったです。与謝野晶子の『親性』という『母性』
でも『父性』でもない概念について。
家庭について愛について、グループ討論が
おもしろかったので、来てよかったです」
大好評だった沢山さんの2回の講義。
聞き逃した方は、
『「家族」はどこへいく』(青弓社、2007年)をお読みください。
(このブログの8月16日の記事にも紹介している本です)
この本の第1章が、
沢山さん執筆の
「家族の歴史を読み解く」
という論文です。
この論文のもくじは、
1.1980年代から90年代へのパラダイム転換
2.近代家族と子育て
3.教育家族としての「家庭」
4.「家庭」という生活世界
5.父親による近代家族批判の試み
6.近世民衆の産むこと/産まないこと
7.出生コントロールの諸相
8.捨て子の諸相
9.近代の捨て子と「母子心中」
10.「子育て」の語の復権
です。
講義でお話されたことも、すいぶん入っています。
活字で学べますよ。
さて、82期の講義も、残り2回です。
ぜひご参加を~
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