最近読み終えた本。
『私たちの教室からは米軍基地が見えます
~普天間第二小学校文集「そてつ」からのメッセージ』
(渡辺豪、ボーダーインク、2011年)
沖縄タイムス記者の著書。
米軍普天間基地に隣接する、
普天間第二小学校。
もう、ほんとうに、信じられないぐらい、
近いんです。
ある小学生の『爆音』という文章を以下。
「ゴォーツ。」「ゴォーツ。」
ものすごい音をたてて
となりのマリン飛行場の
ばかでかい飛行機が
教室の屋根すれすれに、飛んでいく。
三分たって
やっと静かになった。
「さあ勉強だ。」
えんぴつをもったとたん
「ゴォーツ。」「ガガガッ。」
耳をつんざく
ものすごい音。
先生の声が聞こえなくなる。
みんなの声も聞こえなくなる。
ぼくは、
「もうどうでもいいや。」
と、えんぴつをなげた。
* * * * * * * * * * * *
本書は、こうした現実のなかで学校生活を送った子どもたちの、
本質をついたメッセージと、
その文集を書いた子の、その後を追ったルポタージュです。
渡辺さんの前著、
『「国策のまちおこし」~嘉手納からの報告~』(凱風社刊)も、
たいへん考えさせられること大の内容でしたが、
今回の本も、ぜひとも多くの人に手にとってもらい、
基地問題をより私たちの問題として考えてほしいと思います。
著者は、とても丹念に、
一筋縄ではいかない沖縄の現実、実態、
基地周辺に暮らす人びとの
複雑な意識・感情をすくい上げています。
印象に残った言葉のひとつとして、
「普段は決して声高に主張しない人たちの思いの中にこそ、
真の世論が潜んでいるように思う」
というのがありました。
「基地はできることならなくなってほしい!」と願う人でも、
それを表現するとなると、いろいろな制約があり、
簡単ではないのです。
本土の私たちから見れば「あんな基地はいらない」と簡単に
言うこともできますが、
大きな権力・支配構造のなかに組み込まれている、
その当事者の声は、弱者であればあるほど、聞こえにくいのです。
しかし、政治やジャーナリズムは、
そうした声を、まず聴く、ということから出発する必要が
あると思います。
昨年秋に出版された本書。
「基地」と「原発」の構造的共通性にも、多く論及されています。
なにより、沖縄の深刻で複雑な現実と、
そこで暮らす人の声、ぜひ本書で知ってもらいたいと思います。
『日本の手仕事−伝統の手わざが生み出す美しい日用品』
(小澤典代、主婦の友社、2011年)
民藝運動の創始者・柳宗悦の名著、
『手仕事の日本』(岩波文庫)と
タイトルが逆ですが、主旨は同じ。
繊細で、手仕事でしか出ないあたたかみと美しさ。
ずっとずっと残したい伝統(o^_^o)
気持ちがほっこりしました。
これ、ぜんぜん活動と関係ない学びだと思うでしょ、
違うんです。
「大事なもの」を「伝えたい」「継承する」という意味では、
すごく共通性があるし学ぶところがあるんですよ。
ふふふ。
『取り返しのつかないものを、取り返すために-大震災と井上ひさし』
(大江健三郎・内橋克人・なだいなだ・小森陽一、
岩波ブックレット814、2011年)
大江健三郎さんの講演部分に、
とても感銘。井上ひさしさんの偉大さ。
「井上ひさしさんの言葉は・・・『3・11』以後の
いまも私たちに確実に送り届けられています」
と小森陽一さん。 納得です。
『米軍基地の歴史―世界ネットワークの形成と展開』
(林博史、吉川弘文館、2012年)
林さんの著作は、
『沖縄戦と民衆』(大月書店、2001年)
『BC級戦犯裁判』(岩波新書、2005年)
『戦後平和主義を問い直す』(かもがわ出版、2008年)
『沖縄戦が問うもの』(大月書店、2010年)
など読んできて、
この分野でもっとも信頼し尊敬している研究者です。
今度の本も力作です!
「アメリカは日本を守るために基地を置いているの
だという日本人の妄想を断ち切るためには、1度、
ワシントンからの視点で世界を見てみることが必要
だと思います。本書は、そういう意味で、日米関係の
視点を超えて、ワシントンの視点から軍事戦略・海外
基地ネットワークを見た上で、それを批判的にとらえ
なおそうという試みです」(「あとがき」より)
林さんの『前衛』1月号の「いま戦争責任を問いかける意味」
という論文も、必読です。ぜひお読みください。
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