最近読み終えた本。
『女職人になる』(鈴木裕子、アスペクト、2005年)
いやいや、おもしろかったですねえ。
職人の世界の新しい変化を感じました。
そして、彼女たちの仕事への姿勢と
「そのものへの愛」にふれ、
たいへん刺激と励みを受けました。
紹介されている職人による手仕事は、
江戸切子、結城紬、東京手描友禅、和裁、
京竹工芸、陶芸、和菓子、岩谷堂箪笥。
教えるものと教えられるものとの
関係性も、興味深かったです。
「女はむかない・できない」と言われた
職人仕事を、きりひらいている彼女たち。
ジャンダーバイアスを取り払う本でもあります。
以下、本書よりメモ。
「ここでも技術を次代に継ぐために若い
人材が必要とされている」
「プロとして技を極めたいならそういう細かい
作業をきっちりこなさないといけない。できる
ようになるまで、ひたすら練習、練習でした」
「先のことを考えるといまでも不安はいっぱい
です。でも、師匠によく言われたのは、『いつ
の時代も、本物は残っていく』ということなん
ですね。技術をしっかり身につけて、つねに
いいものをつくろうという意識を持って作品を
つくっていれば大丈夫だから、まずはとにかく
技術を磨きなさいと」
「ただ、失敗をして師匠に叱られて初めて
気づいたり、身につくことがあります。それは
教科書には書かれていないことだから、
経験しないと絶対にわかりません。それから
技術以外のこと、たとえば、生地の仕入れは
どうすればいいか、問屋さんとはどうつきあ
えばいいかなど、師匠の姿を見ているから
こそ覚えられることがあって、これは自分ひと
りで仕事を始めてから、ものすごく役立って
います」
「教える側も教えられる側もお互いに言葉で
きちんとやりとりしたほうが、技術が正しく
伝わると思うんです」
「『見て覚えろ』的な関係ではなかなか生ま
れないであろう先輩と後輩の間の連帯感、
そして信頼感」
『住み続けられる権利―貧困、震災をこえて』
(井上英夫、新日本出版社、2012年)
たいへん勉強になりました。
日本の現状を考えた場合、
「住み続ける権利」という
新しい人権が豊かに把握される
必要があると強く思いました。
居住権・居住福祉をベースに、
この権利が実現していく社会にせねば。
以下、本書よりメモ。
「地震は平等に起きるけれども、その被害は
不平等に現われる」
「過疎は人口が少ないのが問題ではなく、
住み続けられないのが問題なのである」
「今は、江戸時代ではなく、日本国憲法第
22条は、『居住・移転の自由』を基本的人権
の1つとして保障している。現代の人権は、
移動の自由のみでなく、生まれ育った地に
住み続ける権利を保障するものでなければ
ならない」
「この自由の保障は、国がその自由の行使を
妨害しないというだけでは足りず、移動しないで
住み続けるための諸条件を満たすという積極的
保障をも内容とするといえよう。その意味で、
労働や所得、医療機関や福祉施設あるいは
交通手段の保障、すなわち健康権や社会保障・
社会福祉の権利、交通権といった権利が保障
されることによってはじめて、『移動しない自由』
も実現されることになる」
「国の政策が『貧困』なのは事実だが、私たち
自身も憲法25条を、社会保障とりわけ生活保護
をあまりに貧しいものとしてとらえてはいない
だろうか。憲法25条はより豊かな内容をもって
いるし、社会保障・生活保護ももっともっと豊かで
いい。金、もの、人という資源を豊かにもっている
日本はそれが実現できないはずはないと思う」
『西表やまねこ診療所』(岡田豊、扶桑社、2009年)
わたしの沖縄分野の師匠、
あきやんさんに紹介された本。
興味深く、おもしろかった。
離島医療のなかに、本来の
医療のあり方がありますね。
以下、またもや本書からメモ。
「『自分の限界を知る』ということは『自分の限界を
広げるためにある」
「県内17ヶ所の離島診療所が『ファーストクラス』
と呼ばれるネットシステムで結ばれ、遠隔診断や
症例の勉強や島医者特有の悩みの解消、意見
交換に役立っている。
同じ閉鎖環境に置かれた医師同士がつながる
ことで、孤立感の解消につながっている。こうした
離島診療所をバックアップするネットの整備は
沖縄県が初めてだそうだ」
「テレビドラマに出てくるようなスーパードクターは
島には必要ない。
診療所では本格的な手術はできない。医療機器
もマンパワーも足りない。そんな限られたなかで、
よりよい医療を実践するには、各機関との連携と、
かかりつけ病院としての診療所を住民が盛り立てて
支えていく意識を育むことが重要だ。
最前線である診療所と後方支援する病院がうまく
連携して初めて成り立つ医療なのだ。何かと孤立
感を深める診療所医師を親病院が支える。一定
レベルの医者が切れることなく診療所をリレーでき
るシステム、どの島でも同等の医療を提供、持続
できるシステムが一番必要なのだ。
ひとりのスーパードクターが私生活を犠牲にして
成り立つ医療では、その人個人の頑張りで終わっ
てしまう。
テレビドラマのようにドラマチックではないが、
記憶に残る個別ドラマを患者と作りあげていくのが、
離島診療所なのだ」
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