『信用金庫の力-人をつなぐ、地域を守る』
(吉原毅、岩波ブックレット、2012年9月)
原発事故からわずか20日で
「脱原発宣言」を発表した城南信用金庫の
理事長が著者。
「お金の弊害を防ぎ、人、地域を守るのが
信用金庫の使命です。だからこそ、脱原発
なのです」と明快です。
それは、言葉だけでなく、さまざまな行動にも
なってあらわれていて。そこがすごいと思いました。
原子力政策の愚かさはもちろん、
信用金庫の歴史から、金融資本主義批判、
効率主義・成果主義批判、
社会や企業にとっていま大切なこと、
などなど、わかりやすく説いています。
信用金庫への見方が変わる1冊ですね。
コンパクトだし、おすすめです。
『社会人の生き方』(暉峻淑子、岩波新書、2012年)
うーん、いい本なんですけどね…。
なんか心ふるえないんですよね。
いや、いい本なんですけど。
『まねが育むヒトの心』(明和政子、岩波ジュニア新書、2012年)
とてもおもしろかった。
ジュニア新書にしては、
ちょっと難度が高いと思ったけど。
私の仕事である労働者教育の立場では、
人間が社会的な生き物だということについて
「労働」ということを通じて説明する場合が多い。
それはそれですごく大事だ。
この本ではしかし、そもそも労働以前に、
人間の赤ちゃんは、
発達過程(子どもを取り巻く養育環境)のなかで、
非常に早く(胎児の段階)から自分が
置かれている環境を学び、
そのなかでさまざまな力を育て、
集団(環境)のなかで生きる「戦略」と「能力」を
もっていることが、
チンパンジーの子育てなどと比較されながら説明される。
赤ちゃんの発達過程の研究については、
これまで何冊か読んだことがあるけど、
最新の研究はここまですすんでいるのかーと驚きでした。
今回、ああ、なるほどと思ったのは、
出産間隔の比較についてで、
チンパンジーやニホンザルは、
赤ちゃんが離乳=自立してから(つまり手がかからなくなってから)、
次の子どもを生むというサイクルになっているのにたいして、
人間の子どもは、離乳=自立とは当然ならず、
さらに10年ほどは、ぼう大なエネルギーをかけて子育てを
しなければならない。
しかもその間に、第二子・三子と生めば、よりいっそう
子育ての負担は増えるという「無理」なことになっている。
それなのに、人間の母親の出産間隔は、
早ければ1年ごとのサイクルで可能で、
それ自体が「そもそもムチャ」なことであり、
「たいへんな一大事業」である人間の子育ては、
とうてい母親だけでは無理で、
母親以外の子育て(アロマザリング)が必須条件に
なっているのだということ。
そのために、人間は他の動物にはない、
喜びやうれしさも共有できる高度な「共感力」を
発達させる(それが他人が子育てに関わる動機となる)のだ、
という指摘。
母親に育児の責任がのしかかる日本において、
子育てしやすい社会とは何かへの示唆にもなっている。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。