参加は3週連続の18名。
ワンポイント講座は、くっきーくんが
な、なんとパンづくりの話で、実際に自分で
焼いたパンを参加者全員分持ってきてくれました。
これがひとり分。 むしゃむしゃウマ-イ!
ありがとうございました。
講義は、「憲法の人間観-13条・14条のはなし」
ということで、講師は引き続き私が担当。
基本的人権の核になる
考え方・価値観を学んでいきました。
以下、講義の概要です。
一。現代日本に広がる人間観
1。部分、一面だけをみて、その人の全体を評価する
◇「~ができる」
(ただし、これは自己肯定感を支える重要な要素でもある)
*「役立つか、役立たないか」「できるか、できないか」
*人間への評価が、能力主義に特化しつつある
*仕事ができるか、コミュニケーション能力、さまざまなスキル
*子どもは、「なにができるか」「成績」でランクづけされる
→日本の労働現場が(すべてではないが)、競争と能力
主義の価値観が支配する場となっていて、それが人へ
の見方にも反映している。「使えるやつ」「使えないやつ」。
「『不良品をよこすなよ。とっとと返品して』 それは、“妊娠
している派遣社員”の私のことだった」
(小林美希『ルポ職場流産』岩波書店、2011年)
2。自己責任論と人間観
◇「現実の正当化」としての自己責任論
*さまざまな苦しみの原因を「個人の問題」とさせる力が
強い社会
*橋下大阪市長などが言う「自立した個人」とは、「人に
助けを求めない力」。
*自助・共助論。「がんばり」「努力」「助けあい」ができる
条件を無視。
*行き着く先は、「おまえはダメな人間」「役立たず」「いらない」
3。「わかりやすく」「単純」に人の評価をくだす傾向
◇ひとつの「ものさし」で判断・断定する。
敵をつくる(憎悪は容易に増幅できる)。
◇独断、偏見、レッテル、十派ひとからげ・・・簡単にできる。
排除の論理。
*「バカ」「公務員」「既得権益に」「学者」
◇「先入観」という便利なメガネ。かんたん。
◇キャラ化、序列化
「この世の中は、いつのまにか命にたくさんのレッテル
をはり、フィルター越しに人を見るようになってしまいま
した。姿格好、成績などフィルターをかけて見ればすぐ
に答えが出ます。けれど、すぐ答えが出るようなものに、
真実があるでしょうか」
(松崎運之助さん『われら高校生新聞』09.5.25付)
二。日本国憲法の人間観
1。基本的人権の核心-13条「個人の尊重」
「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由
及び幸福追求に対する国民の権利については、公共
の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、
最大の尊重を必要とする」
◇無条件の肯定
*個人の尊重-みんな、かけがえのない存在
1)みんな同じ人間
2)みんな違う人間
◇すべての国民1人ひとりが、生命を輝かせ、さまざまな
自由(精神的・身体的・政治的・経済的・文化的)を獲得し、
幸せを追求することを、最大限尊重する。
*それを権力担当者は自覚して仕事しなさいよ、ということ。
*公共の福祉ー人権を制限できるのは他の人の人権だけ
◇「個人の尊重」が価値の根源であり、他の人権規定は
その具体化
◇日本の侵略戦争のなかで、「個人の尊重」はあったか
*「取替え可能」な命として扱われ
ー兵士の命は「鴻毛より軽し」(軍人勅諭)
「ひとりにはひとつの命、というのは実感だもんねえ。
海軍に入って、夜はハンモックをつるして寝るんです
が、当時の軍隊では人間よりハンモックのほうが大
事だった。練兵場の一番はずれにハンモック用の防
空壕があって、空襲警報が鳴るとまずハンモックをた
たんでそこへ持って行き、ハンモックの安全を確保し
なければならない。一番安いものは人間だということ
になっていて、『おまえらの代わりは1銭5厘(はがき
の値段)でいくらでもくる。ハンモックがいくらするかわ
かるか』と何度いわれたことでしょうか。もうめちゃく
ちゃだったねえ。僕らは員数として扱われた。員数の
ひとつだと思い知らされた。けれども数じゃない。ひと
つひとつが大事な命だぞ、と。それは、本当の、僕の
心の底からの叫びだもの」
(島本慈子『戦争で死ぬ、ということ』岩波新書より、
城山三郎さんのインタビュー部分を引用)
*日本軍の戦死者(230万人)の過半数が、広義の「餓死者」
*降伏することを許さないー無謀な玉砕作戦
*軍隊内での制裁や体罰、人権無視
ー他国の人民への残虐な殺戮・略奪
*「捨て石」として扱われた沖縄での壮絶な地上戦
◇「選ぶ」ことは、その人をその人にする(その人を保つ)
ーできなかった戦中
請願権(16条) 苦役からの自由(18条)
思想及び良心の自由(19条) 信教の自由(20条)
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由(21条)
居住・移転・職業選択・外国移住・国籍離脱(22条)
学問の自由(23条)
【補論(1)-幸福追求権は、新しい人権をつつみこむ包括的な権利】
◇環境権、プライバシー権、知る権利etc
*これらの「新しい人権」は、13条が保障する「幸福追求権」に
ふくまれるというのは、憲法学では常識で、判例などでも定着
している。
*社会の現実に応じて新たな人権が必要になったとき、それを
「ドラえもんのポケット」(憲法学者・浦部法穂氏)である13条か
ら引き出すことができる。
【補論(2)ー「自分は大切な人間である」だと思うためには】
◇自己肯定感には2つある
①自分のことを「とてもよい」と思えること
→前向きに生きる姿勢、問題と取り組んで解決しようとする
姿勢を生み出す
②自分は「これでよい」と思えること
◇「とてもよい」と思えるためには
*~ができるようになる
*こういう見方ができるようになった +他人からの適切な評価
*「役に立つ」ことができる
→ただし、これにはおおきな限界がある
「できな(くなる)い」「役立たな(くなる)い」ときに、
自分の存在意味がぐらつく
→そのときに、「こんな自分でも大切な存在なんだ」と思える
には、「支え」が必要。それは人によってさまざまで、個別
性が高い。
2。差別はゆるさないー14条の平等権
「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、
信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、
経済的又は社会的関係において、差別されない」
*社会的身分とは、人が社会においてある程度継続して
もっている地位をさしている。門地とは、ぞくな言い方で
いえば家柄。
◇大日本帝国憲法には、平等の原則を定めた条文はなかった。
◇日本でもヨーロッパでも、人権をめざすたたかいは、「差別
反対」「平等」への要求としてはじまった。身分差別、男女
差別、障害者差別、雇用差別、賃金差別・・・
◇「人種・信条・性別・社会的身分・門地」の5つをおもなもの
としてあげているが、この5つ以外は差別は認めてよいとい
う意味ではない。
◇「平等の原則」は、13条の「個人の尊重」とあわせて考える
ことが大事。
3。基本的人権のなかでも特別大事な位置をしめる、
21条「表現の自由」
「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の
自由は、これを保障する。
②検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、
これを侵してはならない」
◇表現とは、人にものを伝達するすべての活動
*「一切の」という言い方の中に、表現の自由を最大限尊重
していることがあらわれている。
◇表現をつうじて、人は自己実現をしている
*自分の考え、思いを伝える(表現する)。また他人の考え、
思いを知る(伝えられる)ことによって、人は人間的、人格的
な成長をしていく。
*知的存在・社会的存在である人間にとって、表現の自由は
人間の尊厳そのもの。
◇さらに、国民の意見を政治に反映させる自己統治の社会的
価値も大きい
*言論活動(表現)は、国民が政治的意思決定に関与する
という、民主主義にとって不可欠なもの。ファシズムは「違
う意見の徹底した排除」「だまってついていく」。
*民主主義が機能し、自分たちで自分たちのことを決めてい
くことは、社会の発展に貢献する。したがって、「表現の自
由」は社会的な意味や価値をもっている。
*集会やデモ行進も「表現形態(伝え方)」のひとつ
◇集会・結社・言論・出版ー「表現しあう場や手段」の価値
「違ってちっとも構わない。違って当たり前なのだから、
とことん話しあうことによって、互いにどう新しくなれるか
が一番大事です。自分の考えより、もっといいものが生
まれ得る可能性を考えたい」(鶴見和子)
(『私の座標軸ー憲法のいま2』かもがわ出版より)
以上。
講義をうけてのグループ感想交流。どこも盛り上がり。
まだ中盤に差しかかったところなのに、
なんだろうね、この一体感は。すごいね。
講義の感想をご紹介!
◆憲法が最大の尊重をする幸福追求権と
人間の生きる目的を感じさせる深い内容で
勉強になりました。
◆現代日本に広がる人間観、人を支える
3つの柱など、おもしろかったです。表現を
深め、伝え、受け入れ、互いに新しくなれる
ように努めたいです。
◆人間ひとりひとりがかけがえのない存在
である。この言葉をうまく活用して生きていく
ことができる人がどれだけいるのだろうか。
みんながお互いを大切にしていける世の中に
少しでも近づいていけたらと思いました。
◆人を見方は、いつも自分を悩ませている
気がする。「この人なんでこんなこと言うんだ
ろう」とマイナスイメージを持ったときに、立ち
どまって考えこんでしまう。
人権の尊重という権利を行使することと、
補論であった自己肯定感を持つことは、同時
に追求していかないといけないと思った。
戦争っていう、最悪の人権侵害を経験した
上にできた憲法。そんな憲法を改悪されて
たまるか。
◆自己責任論・・・。「自立した個人」「人に
助けを求めない力」。弱い人は切り捨て、こ
わい。ニュースを観ていると、個人の尊重が
なくなっている政治がいけない。政治が違憲
です。
◆憲法を守るため、私は私を肯定できるよう
になろう。
◆戦時中の人のあつかいがハンモックより
下だったなんて、考えただけで腹が立ちます。
同じ人間どうしなのに。なぜ差別が生まれる
のかわかりません。
◆憲法13条、幸福追求権の深い意味がわか
りました。また、自己肯定感についての話は、
よかったと思います。赤塚冨士夫のバカボン
「これでいいのだ!!」と思い出しました。
◆憲法の人間に対する見方は優しいなぁ…。
みんな同じでみんな違う。ステキです。私も
つい先入観で人のことを見てしまうので、気を
つけたいなー。憲ちゃんはいいやつですね。
コメント
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