17名が参加。
きのうは寒かったけど、みなさんよく参加していただきました。
講義は、「自分が自分であるために-自由権のはなし」
ということで、いつものように講師は私が担当です。
講義後の討論のようす。
解散総選挙という情勢もあり、
まず「解散」について憲法で確認していきました。
みなさん「国会」「内閣」のところを探しておられましたが、
(それで間違いではないけど)
1章「天皇」のなかの第7条に、内閣の助言を受けて、
天皇が衆議院を解散するってあるんですよね。
首相に解散権限があるとは直接には書いていないのですが、
解散権については、「内閣の助言」=事実上内閣総理大臣の専権事項。
となっているようです。わかりづらいですね。
こんな話をしていたら、
死票が多く民意が正確に反映されない小選挙区制度のことや、
選挙になればなるほどダメダメがふえる日本の選挙活動への規制の
問題などにも話が飛びまくり、これだけで20分ほど時間をつかうことに。
いやいや、ついつい熱くなってしまいました。
以下、講義の概要です。
はじめに:解散総選挙
一。基本的人権のそれぞれの性格
◇自由権は別名「国家からの自由」
◇参政権は別名「国家への自由」
◇社会権は「国家による自由」(来週講義で詳しく)
二。参政権・請願権-国民主権の原理にもとづいて
1。参政権を獲得してきた歴史
◇男女区別ない普通選挙はほとんどの国で20世紀に獲得
*財産や税金を納めた額による選挙権の制限があった
*女性の選挙権の制限があった
◇参政権
*公務員の選定・罷免権、普通選挙、投票の秘密(15条)
・成年者による普通選挙(日本は20歳。世界の大勢は18歳)
*被選挙権(43条・44条)
*最高裁判所裁判官国民審査権(79条)
*特別法の制定同意権(95条)
◇参政権はどうなっているか
*日本の異常に高い選挙供託金
衆議院小選挙区300万円、比例代表600万円(参議院も同額)
都道府県知事300万円、市長240万円
都道府県儀60万円、市議50万円
*他国は、イギリス9万円、カナダ7万円、韓国150万円、
オーストラリア(下院)5万円、インド2万5千円など。
*アメリカ、フランス、ドイツ、イタリアなどは供託金制度その
ものがない。
◇投票率はどうなっているか
*過去3回の衆議院選挙
2003年(59%)、2005年(67%)、2009年(69%)
*過去3回の参議院選挙
2004年(56%)、2007年(58%)2010年(57%)
*岡山県知事選挙
2004年(37%)、2008年(43%)、2012年(38%)
2。請願権ー「不断の努力」のひとつ
◇別紙資料参照
3。2012年12月16日総選挙の意味
◇公約をことごとく破った民主党政権への国民の審判
◇消費税増税・社会保障の変質・削減で一致した自民党・公明党
◇東日本大震災以後、はじめての国政選挙
◇震災復興、原発問題、税制、貧困問題、社会保障、
TPP、基地問題、外交・・・
◇自分なりにこだわりのある問題で、政党を
比較(何をしてきたのか)
◇この国の未来を、私たちは選択することができる-主権者の力
二。自由権について
1。憲法に書き込まれている自由権の種類
〔身体の自由〕奴隷的拘束及び苦役からの自由(18条)
法的手続の保証(31条)
逮捕に対する保障(33条)
抑留・拘禁に対する保障(34条)
住居侵入・捜索・押収に対する保障(35条)
拷問及び残虐な刑罰の禁止(36条)
刑事被告人の権利(37条)
自白強要の禁止(38条)
〔精神の自由〕思想及び良心の自由(19条)
信教の自由(20条)
集会・結社・表現の自由(21条)
学問の自由(23条)
〔経済の自由〕居住・移転・職業選択の自由(22条)
財産権(29条)
2。精神(内心)の自由について
◇心のなかで何を考えているかは、人それぞれ
ーそれが人格にもなる
*個人の尊重(13条)という価値観を大事にするならば、
それを他から(とくに国家)から強制することはできない。
◇ところが、歴史的にはこの自由もなかった(思想弾圧・差別)
*自分の考えを強制的に表明させられた
・キリシタンを見つけ出す「踏み絵」
・「日の丸」「君が代」を強制
*思想弾圧は世界中いたるところであった
・日本でも、戦時中の弾圧をはじめ、1950年のレッドパージ、
大企業による思想差別など。
◇内心を表明しない自由(沈黙の自由)も大事
*大阪の橋下市長が市職員にたいして行った思想調査は
憲法違反で実施できず
◇信教の自由
*戦時中は、国家と宗教が結びつき(国家神道)、侵略戦争を
推進。その反省から。
*政教分離の原則
・2度と国家が個人の心に入り込み、侵すことのないように
という縛り
*総理大臣や国務大臣の靖国神社公式参拝の問題
*入りたくない人も強制的に合祀する靖国神社
・仏教徒とも、キリスト教徒も、朝鮮・台湾の人も、戦争に
反対だった人も
「私は、ここに靖国の本質が出ていると思います。本当
は、遺族のことなんて関係ないんですよ。遺族の追悼
感情なんて全く無視している。本当に遺族の追悼のた
め、遺族の追悼感情を満たすためであれば、遺族がや
めたい、自分のやり方でやりたいと言ったときに、取り
下げるのが宗教法人としては当然でしょう。信者が離れ
たいときに宗教団体が許さないということになったら、人
権問題です。なぜ靖国だけが認められるのか。結局、
『国家のため』に祀るからでしょう。徹頭徹尾『国家のた
め』に祀るわけであって、遺族のことは関係ない。靖国
に祀ってほしいと思っている遺族はたまたま国家の意
志と一致しているだけです」(高橋哲哉『現代思想』8月号)
◇学問の自由について
*ヨーロッパでは、学問の自由は、主としてキリスト教との
たたかいのなかで主張されてきた。
・ガリレオ裁判
・進化論も猛烈な攻撃を受ける
*日本では、天皇制とのたたかいのなかで
・天皇の歴史的役割をめぐって
・国体をおびやかす書物を持つだけで問題になった
*学問の自由は、一般に、真理を明らかにする学問研究の
自由、研究結果を発表する自由を保障しているだけでなく、
大学の自治も当然に保障されると考えられる。
・しかし、これも近年の日本の大学は危機に
・大学評価。予算配分に手加減。国公立大学は独立行政
法人に。研究の自由の制限へ。
3。経済の自由について
◇職業選択の自由(営業の自由)
*国によって職業選択を制限された戦中
*営業の自由は「公共の福祉」という制限がつく
◇居住の権利
*「どこに居住して(移り住んで)もよい」
*住み続けたいと思える場所に「住み続ける」こと
「過疎は人口が少ないのが問題ではなく、住み続けられ
ないのが問題なのである」
「今は、江戸時代ではなく、日本国憲法第22条は、『居
住・移転の自由』を基本的人権の1つとして保障している。
現代の人権は、移動の自由のみでなく、生まれ育った
地に住み続ける権利を保障するものでなければならない」
「この自由の保障は、国がその自由の行使を妨害しない
というだけでは足りず、移動しないで住み続けるための
諸条件を満たすという積極的保障をも内容とするといえ
よう。その意味で、労働や所得、医療機関や福祉施設
あるいは交通手段の保障、すなわち健康権や社会保障・
社会福祉の権利、交通権といった権利が保障されること
によってはじめて、『移動しない自由』も実現されることに
なる」
(井上英夫『住み続けられる権利―貧困、震災をこえて』
新日本出版社、2012年)
以上。
参加者の感想文!
◆自由権、参政権、社会権はしっかり区別したい
と思います。居住の権利は、「移動しないで住み
続けられるための条件を満たす」という積極的役割
も意味してくると聞き関心を持ちました。ちょうど今、
ドラマで高知県四万十市の過疎地を盛り上げよう
という内容の作品をやっているので、居住の権利を
意識して見ようと思います。
◆最後まで国民の願いそっちのけで国会が解散
された。多くの青年と対話して、どうしたら青年の
願いが実現される政治になるのか、一緒に考えて
いきたい。おかしいことをおかしいと言える表現の
自由を!
◆自由権!!大切ですね!! 今まであまり聞い
たことのないことでしたが、これで、この国に生きる
人が自分のアイデンティティをもって生きていけるん
だなーと。
◆供託金について感じたこと。ある程度お金を持っ
ている人でないと、政治に関わっていくことが難しい
のではないか。もっといろんな人たちの意見が反映
されるような世の中になってほしいです。
◆憲法の中の「自由」は、国家⇔個人(国民)を
考えなければいけないとい教えていただきました。
「日の丸」「君が代」については、歴史のなかで
深い意味を知らないと「なぜ?」と思いますが、きっ
と戦争で深く傷ついた人にとっては本当にいやな
ものなのかなと思いました。「私を生きる」が観たい
です。
◆自由って、選択するために考える力がないと、
発揮されないのだなと思いました。選挙権はみんな
にあたえられていて、一見自由にみえるけど、選挙
のしくみが与党や大きい力のある党に有利になる
ようにつくられていて、多数の声は反映されにく
かったり、選挙中の発言が規制されていたり・・・。
みえないところで自由が規制されていると思いました。
◆あの(知らないが)暗黒の時代から、戦争を
体験して生まれた憲法の自由を奪われないように、
参政権のひとつ、必ず選挙にいこう。
コメント
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