『グロテスク』上巻(桐野夏生、文春文庫、2006年)
人間関係・感情の負の部分を
これでもかと(それこそグロテスクに)
みせつける作品。
憎悪、嫉妬、差別意識、欲望、執着…
かなり、ねちっこい。
しかし、グイッと読ませる内容と文体である。
『グロテスク』下巻(桐野夏生、文春文庫、2006年)
上巻とあわせ800ページをこえるが、
吸引力のある小説で、一気に読む。
この負のエネルギーを
描ききる筆力と構成に脱帽。
しかし、良い子には勧められない…。
そもそも、このグロテスクを買って読もうと思ったきっかけは、
『前衛』2011年12月号の唐鎌直義さんの論文のなかに、
以下の紹介があったから。
「現代日本の階級社会の一面を描いて慄然(りつぜん)と
させられる、桐野夏生さんの『グロテスク』もお勧めです。
東電OL殺人事件を題材にした小説ですが、金持ち以外の
登場人物は全員壊れていく世界を描いていて圧倒され
ました。『金・知・美』の崇拝という資本家的価値観を、
知らず知らずのうちに共有し、それに踊らされてしまった
庶民の悲劇を描いた小説です」
『方法序説』(デカルト著、谷川多佳子訳、岩波文庫、1997年)
「われ思う、ゆえにわれあり」があまりにも
有名な、近代精神の確立を告げる古典。
原著は1637年刊。
デカルトの生きた社会や時代背景を
ふまえて読むことが大事。そうすれば、
彼が説いている内容の、
その当時における革新性が理解できる。
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