きのう(20日)は、岡山医療生協労組の
中央委員会の前段学習会で、
「ストライキというたたかい方」というテーマで
30分ほど話をしました。
会場のようす。
3年連続で、岡山医療生協労組はストライキの
学習会をしていて、私もほぼ同じ話をしています(笑)。
情勢は変わりますが、基本点は変わりません。
以下、その内容です。
一。世界中で行なわれているストライキ
1。仕事を一時的に、“いっせいに放棄”する「たたかい方」
2。世界各地ではこんなストライキが(一部を紹介。2011年)
◇韓国
*造船業の韓進重工業で、整理解雇に反対する労働者
1000人がストライキ。(1月)
◇タイ
*近年は、年をおうごとにストライキが増えている。
2009年218件、2010年422件、2011年978件。
◇インドネシア
*ニューギニア島パプア州グラスベルグ鉱山で労働者
1万人が賃上げを求めて94日間のストライキ。大幅な
賃上げを勝ち取る。
◇インド
*バンガロール州のボルボ工場(バス製造)では、契約
労働者の正規雇用、賃上げを求めて8月から11月まで
約60日間にわたってストが行われる。
◇オーストラリア
*教師、看護師、警察官・刑務官、消防士、バス運転手
などニューサウスウェールズ州の公務員、およそ3万人が
9月8日、公務員賃金抑制法案に反対しストライキ。
◇アメリカ
*米大手テレコム、ベライゾン・コミュニケーションズで
8月6日に労働者45,000人が賃上げ、待遇改善を求め
てストライキ。
◇アルゼンチン
*インフレ率20%以上のなかで石油、天然ガス、大豆
粉砕、輸出穀物検査官、港湾、都市交通、銀行、病院
など多くの部門で労働組合が20数%の賃上げを要求し、
ストライキや道路封鎖などの実力行使を行った。
◇ブラジル
*2011年は重工業、公務、サービス部門、農業で多くの
ストライキが行われた。
*銀行労働組合は経営側の8%の賃上げ回答を拒否し
て21日間のストライキを決行。26の州で合計8000余り
の職場がストに参加。9%の賃上げを勝ち取る。
◇南アフリカ
*10万人が参加したストライキで鉱山労働者が7.5%の
賃上げ勝ち取る(8月)
◇イギリス
*年金改悪に対して公務員労働者が6月と11月(200万
人参加)に大規模スト。
◇ドイツ
*ジャーナリスト労組6月から7月にかけ、80社以上の
約3600人が賃上げを求めてストに参加。
◇ポルトガル
*2012年度の国家予算案に反対する24時間のゼネラル
ストライキが11月24日に行われる。
◇ギリシャ
*1974年以来最大のゼネストで「緊縮政策」に反対。
(2月、10月)
3。日本はストライキが激減
◇1970年代の末には「ストライキのない国」と言われはじめた
*80年代、90年代、2000年代と、減少はさらにすすむ
二。確認しておきたいこと-ストライキは基本的人権
1。日本国憲法
◇基本的人権とは、人間らしく生き・働くための“欠かせないもの”
「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体
行動をする権利は、これを保障する」(憲法28条)
*団体行動=争議権
(ストライキを中心とする実力的たたかいの権利)
「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の
多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの
権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に
対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたも
のである」 (日本国憲法97条)
◇ストライキは、労働者の欠くことのできない権利
*「ストなんかしやがって」は人権思想の欠如
*使用者はストライキによって受けた損害については
賠償請求できない
「使用者は、同盟罷業(=ストライキのこと<長久>)その
他の争議行為であつて正当なものによつて損害を受けた
ことの故をもつて、労働組合又はその組合員に対し賠償を
請求することができない」(労働組合法第8条)
2。ストライキは目的でなく手段
―要求実現のための団体交渉をバックで支える
◇仕事を放棄することは、やはり大変なこと
◇ストライキをすることが目的ではなく、交渉力アップのための手段
*要求が団体交渉によって実現されれば、ストライキは回避できる
*「力」vs「力」
三。ストライキは、労働者の力を引き出し、育てる
1。なぜストライキをするのか。それが労働組合だから。
◇労働組合とは何か
*私たちが人間らしく働くために、絶対に必要な組織
*日本の労働者の働き方は、なぜこんなにも遅れてる?
・・・労働組合の力が弱いから
*資本家(経営者)のもつ力に対抗するには
・・・・・・労働者の「数の力」をひとつに。
*数の力とはなにか?
・経営者は労働者がいなければ、職場が成立たない。
なぜなら、現場で仕事をしている圧倒的多数は、労
働者だから。
・その労働者が、要求を旗印にひとつになって経営者と
対峙すれば、大きな力に。
◇「数の力」を最大限生かす「たたかい方」
*経営者がもっとも嫌うこと・・・労働者が働かないこと
*職場の多数の労働者が仕事を放棄する
・・・利益が生み出されない
2。職場や社会を動かしているのは私たち
ーストライキのもうひとつの意義
「ストライキが決行された空港の様子を見ながら私は、
会社という巨大な組織を動かしているのは、1人ひとり
の従業員であることを思い知ったのである。それはと
ても新鮮な感動だった」
(土井清『俺たちの翼-巨大企業と闘った
労働者の勇気と団結』文芸社、2003年)
3。ストライキは、私たちのもっとも鮮明な「表現手段」
四。医療労働者のストライキ
1。その出発点1960年の「病院スト」
◇1960年、初めての統一闘争「病院ストライキ」
*60年秋から61年春にかけて、歴史的なたたかい
「病院スト」にたちあがる。
*330病院、3万人をこえる医療労働者が参加する。
*あまりにも低い賃金と前近代的な労使関係に怒りを
爆発させた医療労働者が、「無賃(ナイチン)ガールは
ごめんだ」と、劣悪な労働条件の改善、看護婦の
結婚・通勤の自由、全寮制打破などを要求して、十数
波におよぶ全国的なストライキを実施。
*当時全日赤の看護師・川島みどりさんの回想
(『女の自立』勁草書房)
「全日赤傘下の私の病院でも、看護婦の労組加入
はこの時期にかなり増えて、再び従軍看護婦には
なりたくないといった形で関心を高めました。一方、
国立高田病院の看護婦の妊娠制限や妊娠割当な
どに反対するたたかいも、私たちの人権意識をよび
さましたのです。
こうした前段のたたかいから、あの全国に燎原
(りょうげん)の火の如くひろがった医療統一闘争
へとつながっていくわけですが、私もやっと2歳に
なった長男をかかえて労組役員となり、教宣部長
として、機関紙“いずみ”を復刊し、連日カベ新聞
を組合掲示板に貼るなどの活動に取り組みました。
看護婦の人権ストともよばれたストライキは、生ま
れてはじめての体験でしたが、地域の労働組合か
らの支援の赤旗の林立する病院正面玄関の池の
周囲、そして伝統の苔むした白い建物の屋上に
労組旗がはためいた光景は忘れることができませ
ん。白衣に赤い腕章を巻き、スクラムを組んで、秋
空にむかって歌った歌、“夜勤に疲れた重い足に、
みんなで云い聞かそう夜明けがくる、人なみのしあ
わせもとめて・・・”、みんなの頬(ほほ)から涙がつ
たわっていました。
“看護婦が職場を離れるなんて!”“患者さんは
どうなるの?”“私たちは看護婦よ、労働者じゃない
のよ” 前日の夜を徹しての討論、そして団交によ
る無責任な病院側の態度に業をにやしてとうとう立
ち上がったのでした。
賃上げ闘争、週44時間労働の実施、増員、通勤
の自由、時間外手当の支給、全寮制の廃止などが
主な要求項目でした。世論もこの要求の正当性を
支持して、病院の前近代的経営を批判、看護婦の
人権を認めよという論調が新聞各紙にとりあげられ
ました」
*病院経営者や政府からの弾圧、首切り攻撃、組合
分裂攻撃も激しくなる
*しかし、めざめた人権意識
「いったい医療統一闘争は、私たちに何をもたらした
のでしょうか。それは、看護婦が1人の人間として
生きる権利を自覚し、それまで無理だとわかってい
ても上の人に対しては何もいえなかったのが、自分
の意思をはっきりと述べることができるようになった
こと、そして、労働者の連帯や団結の大切さをひし
ひしと体験できたことではなかったでしょうか。
(略)のどもとすぎれば・・・のことばがありますが、
こうした歴史的経過をみつめて、先輩たちの苦労に
よって獲得された諸権利を無駄にしてほしくないと
思います」 (川島みどり、前掲書)
◇もう1度確認・・・・・・ストライキで獲得される2つの側面
*数の力をバックに、相手に譲歩させ、労働者の
要求をのませる。
*ストライキをつうじて、団結をつよめ、労働者とし
ての人権意識を高める。
2。ストライキをじっさいに配置するうえで配慮する点
◇ストライキの目的・要求項目を、“組合員全体のものにする”
*そのための職場集会・討論が大事
*ニュースやチラシなどの宣伝活動を徹底しておこなう
*連帯感をつくりだす雰囲気づくりも大切に
◇患者さん・利用者さんへの配慮、ストライキへの理解を十分に
さいごに
「私たちは、どんなことにしろ、そのものの意味を知ら
なければ、それを大切にしたり愛したりすることは出来
ない。現実を理解しなければ、それを愛し、そこに働き
かけてゆく人間の歴代の努力のうけつぎ手として今日
生きているよろこびや感動を味わうことも出来ない」
(宮本百合子「若い娘の倫理」)
以上。
路傍の人さん、ありがとうございます。
講座もがんばります!
投稿情報: 長久 | 2013年2 月22日 (金) 09:14
大事な講義だと思います。ストライキは労働者に労働者階級の持つ力が偉大であることを教えてくれます。私が前回申し上げた科学的社会主義の人間論に階級的見地を入れてほしいというのは、こういうことなのです。そういう角度からとらえれば、これはもう立派な科学的社会主義の人間論になるのではないでしょうか。期待します。
投稿情報: 路傍の人 | 2013年2 月21日 (木) 23:52