今日(17日)は、「社会進歩と女性講座」の最終回、
4回目でした。参加は5名でした。
なごやかに感想交流。
おつかれさまでした~。
テーマは
「女性の『公的産業への復帰』-日本ではどうなっているか」。
日本の現状の話でした。
予定オーバーの約90分の講義でした。
つたなく、たぶん不正確なところも多い講義でしたが、
みなさん真剣に聞いていただき、ほんとうに感謝いたします。
ぜひ新婦人での「昼の部」も実現したいですね。
以下、講義の概略です。
一。女性の「公的産業への復帰」-日本社会での実態は
1。一連の条約は批准をしているが
◇関連条約の批准状況
◇女性の「公的産業への復帰」の度合い(資料)
*労働力率
*国会議員や地方議員のなかでの女性議員の割合
*管理職のなかでの女性の割合
*その他
◇男性と女性との賃金格差
*貧困問題と女性
◇育児などへの社会的支援の規模
2。世界から怒られつづけている日本の現状
◇ILOからの相次ぐ勧告
◇国際人権委員会からの批判
◇国連女性差別撤廃委員会からは包括的な批判と勧告
二。日本では女性差別がなぜ根強く残っているのか
1。近代日本の歴史的側面から
◇明治維新後の資本主義化のなかで
*西洋の科学技術、文化や思想、制度などをどんどん取り入れはじめる
*上流階級になるほど、女性の「恋愛・結婚」「生き方」は枠をはめられる
*明治時代の女性は、選挙権とともに、政治活動への参加も厳しく制限
*自由民権運動に参加した先駆的な女性たち-岡山では福田英子
◇明治民法の成立(1898年、明治31年)-「家」制度(家父長制)の確立
*戸主に絶大な権限(居所指定権、婚姻の承認、離籍などすべて
戸主の権限)
*婚姻によって妻は夫の家に入る。氏(姓)の強制変更。妻は1人で法律
行為ができない(「無能力者」に)。子の親権者は原則父親。財産権もなし。
「旧民法の『家』制度と、そのもとでの女性の地位は非常に低くいわ
ゆる『家父長制』でした。それが法律になっていたということです。単な
る慣習ではなかったのです。江戸時代の武家社会では家や家禄のな
かでの儒教的な倫理があったとしても、それが全国的な法律としてあっ
たわけではありません。たとえば江戸時代に百姓や商家のように実質
的には女性が活躍して、それぞれの家庭ではけっこう平等な立場にい
た女性たちもいました。そういう人たちも含めて、旧民法の下では貧富
の差別なく、財産などない人でも、家督相続はあるわけですから、その
過程で女性は排除され、女性は一段劣った者として法律上もみられ、
そのような女性蔑視がジェンダー・イデオロギーとして当然のことのよう
に国民のなかに定着していったのです」
(杉井静子『格差社会を生きる-男と女の新ジャンダー論』
かもがわ出版、2008年)
◇教育上の女性差別
*男女別のカリキュラム-女学校では「さしすせそ」の良妻賢母教育。
*「女に教育はいらない」
*教育の差別は職業の差別に結びつく-限られていた女性の職業
*「女らしさ、男らしさ」へとはめ込む強力な力
◇日本資本主義の勃興期を支えた繊維産業で働く女性たち
*貧しい農村が労働力の供給源
*日本の歴史上最初のストライキは雨宮製糸の女工たち(1886年)
2。侵略戦争(1931年~1945年)を推進する「総動員」体制下での女性の役割
◇「産めよふやせよ」-「母性」の動員
*女性は21歳までに結婚を厚生省が推奨(1夫婦平均5人の子どもを
もてるよう)
◇銃後を支える役割を
*日常生活を戦争政策のために制約する「家庭報国三綱領」「実践14項目」
など
*1942年20歳未満の未婚者を除く2000万人の女性を統合して大日本婦人会
が発足。隣組を活動の母体とし、戦争協力に大きな役割を果たす。
◇日本軍「慰安婦」-性の奴隷化
3。利潤第一主義の「ルールなき資本主義」のもとで
◇戦後改革により、女性差別は理念上は禁止される(日本国憲法14条・24条、
民法)
◇しかし、実質的平等にはほど遠い実態(今日の最初にみたとおり)
①女性の手から仕事(経済的自立の条件)を奪い、女性を家庭に追いやる力
②働きつづける女性に対しては、彼女たちを低賃金に追いやる力
が、強く働いていることにより「公的産業への復帰」を阻んでいる
◇財界の戦略。以下は、石川康宏「長時間労働・女性差別とマルクスのジェン
ダー分析」(『前衛』07年3月号掲載)を参考に。
*雇用の調整弁としての女性の労働力の活用
*人件費抑制の手段としての女性労働力の位置づけ
*男性の「会社人間」化とその保障としての女性に対する家庭責任負担の
強制
「持てる労働力のすべてを職場に吐き出す男性労働者の支え手とし
て、家庭の中の女性労働力が位置づけられる。その役割は男性会社
人間の周到なメンテナンスと、未来の労働力である子どものたちの育
成である。女性だけに対する若年退職の強要は、『男は職場で過剰労
働、女は家庭に全責任』という財界の労働者家庭管理政策の一環でも
あった。高度成長期後半の労働力不足に際して財界は中高年女性の
パート活用をすすめ、家庭責任と低賃金労働力の両方を強制しはじめ
る。この段階で今日的な女性M字型雇用の原形が形成される」
(石川論文)
*文部省『家庭の設計』(1968年)は、女性に「主婦・妻・母・勤労者・市民」
の役割を求める。
*本来は「労働力」の再生産費である賃金が、「労働」の対価として支払
われることにより、家事労働や子の養育にたいする資本の支払いを、
夫による妻と子どもの「扶養」という観念に転化させ、それが「家長」の
権威の根拠ともなる。
◇女性たちのねばり強いたたかい-差別の壁をくずす
*結婚退職制、30歳定年制などの撤廃のたたかい。定年差別のたたかい。
*雇用機会の平等。昇給・昇格差別。
4。ジェンダー・バックフラッシュの歴史と現状
◇戦後から1990年代後半までの動向
*男女特性論
*文部省は家庭科を女子のみに課す
*しかし、1980年代後半にはジェンダーフリー教育も盛んに
◇2000年前後からのジェンダー・バックフラッシュ
*家庭科の教科書攻撃
*性教育への攻撃
*ジェンダーフリー教育の歪曲した宣伝
*言論・出版活動への攻撃
◇ジェンダー・バックフラッシュは、“靖国派”“保守政治”の大きな政治的課題
三。すべての人が輝く21世紀に
1。ルールある経済社会をつくるたたかいの一翼として
◇形式的平等から実質的平等を勝ちとるためには
*女性が働きやすい職場環境をつくる-職場における女性差別をなくす
*「仕事と家庭」の両立を可能とする社会的条件づくり
*日本の異常な長時間労働を是正する
*そうした条件づくりこそ、少子化問題の危機を打開するなによりの力
*多くの人と共同できる課題
◇政治変革の課題
*憲法の理念や女性差別撤廃条約を実行する政治のリーダーシップを
*2009年は、自民党政治の終焉のビックチャンス
◇多様な恋愛・結婚・家族・仕事のかたち-個性が輝く21世紀に
2。社会的な啓発活動の必要性-学習活動を草の根から
◇伝統的な性別役割論の風潮を変えるという大仕事
◇女性差別撤廃条約をはじめ、世界の「女性の人権」の到達点を学ぶ
◇世界の努力と、その生きた姿を知らせる活動
さいごに:おもしろい時代を、しなやかにたくましく生きよう
講座を終えて
以上。
講義録はこちら。
090317_001.mp3をダウンロード
(始まるまで時間がかかるかもしれません)
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