きのう(9日)は、77期岡山労働学校の
第8講義でした。テーマは、
「私たちの生きている時代とは-言葉の力で未来を創る」でした。
とうとう最後の講義となりました。
あとは土曜日の修了式を残すのみです。
講義前のワンポイント講座も
きのうが最後でした。
Kっしーが本の紹介をしてくれました。
今期はワンポイント講座の
充実ぶりが見事でした。
きのうは、入学式以来となるHさんが
来てくれ、なんと78期(10月1日開校)の申込みを
持ってきて「来期は受講します」と差し出すではないですか!
びっくりでした。
講義あとのグループ討論。
きのうは16名の参加でした。
討論後、土曜日の修了式に参加できない人が、
今期をふりかえって、みんなの前でひと言ずつ、
発言してもらいました。
「会社にいるだけでは得られなかった、知識の幅が広がった」
「労働学校の雰囲気いいなと思った。来期受講します」
「記念講演の石川先生の話が衝撃で、学ばなければ
と思って受講した。遠い道のりだけど、語れる力をつけたい」
「今回初めてだったけど、なじみやすい雰囲気でよかった。
これから自分なりに勉強していきたい」
「これまでふれたことのないようなことを学び、楽しい講義
だった。いろんなことを考えるいい機会になった」
「資本主義のしくみを学んで、働くことに不安があった
けど、怖くなくなった。みんな大好きです!」
それぞれの思いが凝縮されて語られました。
みんな、よくぞ2か月間、通い続けてくれました。
その努力に、毎度のことながら、頭が下がります。
さて、以下、最後の講義の概要です。
未来社会論が中心でしたので、
あまり現実味がわかなかったようですが・・・。
一。前回までのおさらいポイント
(省略)
二。マルクスが考えた未来社会論
1。未来社会は、目の前の社会の分析のなかから
◇マルクス以前にも、理想社会を描いた社会活動家はたくさんいた
*トマス・モアの『ユートピア』とか
*サン・シモン、フーリエ、オーウェンなどの空想的社会主義者など
(ただし彼らの評価は○×方式ではいかない。すぐれた思索と実践も)
◇マルクスは、知恵のしぼり方が違った
*資本主義の害悪がどこから生まれてくるのか
*誰が次の社会をつくりだす担い手になるのか、どんな道すじをたどるのか
*未来社会に受けつぐべきものは何か
「人間は、自分で自分の歴史をつくる。しかし、自由自在に、自分で
勝手に選んだ状況のもとで歴史をつくるのではなくて、直接にありあ
わせる、あたえられた、過去からうけついだ状況のもとでつくるので
ある」 (マルクス『ルイ・ボナパルトのブリュ-メル18日』)
◇資本主義の社会悪とその根源(あらためて確認)
*実際に富を生み出している生産者の貧困
・生産手段から生産者(労働者)たちが切り離され、つくられた生産物
が生産手段の所有者である資本家の手に入る仕組みになっている
*周期的な恐慌
・生産の目的が、資本の利潤の増大にあるため。一方で社会の多数を
占める生産者の消費を押さえ込み、他方で生産の無制限的な拡大の
衝動。矛盾の爆発。
*あとは野となれ山となれ-地球温暖化など
・結果に責任を負わない経済活動の無責任主義
2。生産者が主人公になる社会
-「社会主義社会」または「共産主義社会」と呼んだ
◇矛盾の解決策-生産手段の社会化
*復習です「生産手段」とは?-簡単に言うと、工場や建物、機械や
原材料のこと。資本主義社会では、主な生産手段は資本家が私的
に所有している。
*その生産手段を社会化するとは?
・よく考えれば、巨大な生産手段を現実に管理・運営しているのは、
労働者。つまり社会全体を支え、実際に動かしているのは労働者
階級であり、資本家階級ではない。それならば、資本家という存
在は、はたして必要といえるのか。
・生産手段の社会化とは、現在資本家がもっている主要な生産手段
の所有・管理・運営を、社会の手に移すことをいう。そしてこれこそ
が、もっとも合理的な矛盾解決の方法となる。生産者が真の主人
公となる社会。社会化の形態については、いろいろ考えられる。
今から具体的な青写真を描くことはできない。
◇労働は、本来の人間的な性格を取り戻す
「労働が生きるための手段だけでなく、労働そのものが生活の
第一の欲求となる」(マルクス『ゴータ綱領批判』)
3。人類社会の「本史」がはじまる
◇貧困と差別を一掃する
*富の合理的な分配が可能となる
*経済活動の「推進的目的」(現在は利潤)が、根本的に変わるから
*階級も国家も不必要になり、自治的な社会に移行していく
◇経済の計画的運営を本格的にすすめることができる
*生産力の発展が社会的調和を保ちながらスムーズにすすむ
「資本主義社会では、『社会的理性』はいつも“祭りが終わって”か
ら顔を出すから、経済の大きな攪乱が起こらざるをえなくなる。共
産主義社会では、『社会的理性』が事前に働いて、経済の調和の
ある発展を保証する」 (『資本論』第2部第16章)
*自然と共存できる経済発展の道を慎重に進む
◇人間の全面的発達の機会と条件を保証することが、社会全体の目標となる
*労働時間の大幅な短縮がその根本条件-自由の拡大
*働く能力をもつすべての構成員が労働に参加する方向で社会体制が
再編成されれば(つまり現在のように失業者が大量に存在する社会で
はなく)、1人ひとりの労働時間は今よりもずっと短縮される。
*今後の生産力の発展により、さらに労働時間は短縮される。
【労働時間の短縮が、なぜ人間の全面的発達につながるのか】
「時間は人間の発達の場である」(マルクス『賃金、価格および利潤』)
「『自由に利用できる時間』…この時間は、直接的に生産的な労働に
よって吸収されないで、享楽に、余暇に、あてられ、したがって自由な
活動と発展とに余地を与える。時間は、諸能力などの発展のための
余地である」 (マルクス『資本論61~63年草稿』)
「労働時間は、たとえ交換価値が廃棄されても、相変わらず富の創造
的実体であり、富の生産に必要な費用の尺度である。しかし、自由な
時間、自由に利用できる時間は、富そのものである」(同前)
・人間の諸能力についての考察(別紙資料)
◇人間社会の飛躍的発展の時代が開かれる
*あらゆる社会構成員の知的能力の全面的発達が保証される社会
になるということは、その結果として、自然認識の前進の面でも、そ
こでの成果を経済活動に応用する技術の発展の面でも、人類史の
新時代を画する躍進が可能になる。
*生産力の飛躍的な拡大・発展が、一方では労働時間のさらなる短
縮、他方では自由な時間のさらなる拡大をともないながら実現され
るという、人類社会の新しい生活形態が現れることが予想される。
*個人の発展が、社会の発展へと結びつく
「各人の自由な発展が万人の自由な発展のための条件である共同社会」
(マルクス・エンゲルス『共産党宣言』)
4。マルクスの未来社会論を考えるときのポイントについて
◇詳しい青写真は描かない
*新しい社会が誕生する過程というのは、たいへん複雑な道すじをたどる。
*今からこまかい設計図を描くことはできない
◇過渡期について
*多くの試行錯誤を経ながら新しい経済体制をつくりあげていくという、長
期にわたる難しい仕事。「はい、今日で資本主義おわりました」というよう
な変わり方はしない。
◇社会発展の道すじについて
*議会の多数を得ての革命。国民主権と人権を保障する民主共和制。つ
まり、あらゆる変革の段階での、国民合意。平和はもちろん大前提。社
会主義・革命を他国に押しつけることはできない。
三。マルクスから私たちへのメッセージ
1。私たちは、どんな時代に生きているのか
◇いま私たちが生きている資本主義社会は、人類史の1つの通過点
*いま「あたり前」に思っている現実は、不変ではない
◇21世紀という時代
*資本主義を維持し続けようとする流れと、社会主義(資本主義をの
りこえた未来社会)をめざす流れとが、どちらが人類的、地球的な課
題により的確にこたえうるかをめぐって競争しあうという性格をさらに
強める時代となる。
*私たちのたたかいによって、「資本主義の限界」をあぶりだす
*人類社会の「本史」を引き寄せる過程での大きな役割を担う世紀とし
て記録される
2。私(たち)とは、いったいどんな存在なのか
◇そういう時代に、労働者階級の一員として生きている
*生産者こそが社会の主人公になる時代をつくりだす
*私たち1人ひとりのなかに、そうした力がある
*人間の無限の可能性をひらくことと、社会発展が結びつく時代
◇社会進歩と、自分の生き方が重なり合うとき
「人間の本性というものは、彼が自分と同時代の人々の完成のため、
その人々の幸福のために働くときにのみ、自己の完成を達成しうる
ようにできているのである」
(マルクス「職業の選択にさいしての一青年の考察」)
3。学ぶことの力
◇自分たちの無限の力、可能性を開くのが学習活動
◇創造的なたたかいは、創造的な学習活動から-さらなる学習を引き続き
◇言葉の力で未来をつくる
2か月間おつかれさまでした!
以上。
受講生の感想文
「今までの講義の資本主義の欠点と未来社会
への期待が合わさって想像力がかきたてられ
ます。個人の発展は社会が支えるものっていい
ことだと思います」
「今まで当り前に受け入れて、それについて特に
何も考えてこなかった、資本主義というもののしく
みや矛盾・害について立ち止まって考えるいい
機会になりました。でもこんな未来社会、本当に
来るのかなぁ…。いや、他人まかせにして来るの
を待つのではなく、来させるための働きが大切
なのですね」
「共産主義、社会主義といった言葉にあまりいい
イメージがなかったのですが、マルクスの言うよう
な社会はとても良いなぁ・・・と思いました。ただ、
そんな社会になるには時間がかかるだろうと思
います」
「学習後の討論のおかげで2ヶ月を通して資本論
のさわりぐらいは理解できたかなと思います。
私的には日本国内でのお金の流れについて勉強
したいです。自己学習しよっと!」
「今日で講義は終わりだが、これでおしまいにする
んじゃなくて、本などを通してもっと理解を深めたい
と思った」
「いろいろ夢をえがけました。人が大事にされる社会
実現したいですね。ただ、そのためには語れる力を
つけなければなりません」
今期最後のなごみも、
9名参加で
わきあいあいと。
みなさん、
ほんとうに
おつかれさまでした。
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