きのう(2日)の晩は、77期岡山労働学校の第7講義でした。
テーマは、
「ルールある経済社会を-資本主義のあり方を問う」でした。
講義開始まえのワンポイント講座(15分間)、
先週は、Nさんが、『銭ゲバ』と『銭』という面白そうな
マンガを生き生き紹介してくれたのに続き、
今週は、同じ職場のSくんが、なんと三線(さんしん)を披露!
じつはSくん、
沖縄の宜野湾出身。
職場でも頼まれて
たまにひいているんだとか。
三線の生の音色に沖縄を感じ、
しばし心が癒されました…。
今期のワンポイント講座は、
過去最高の充実度かもしれません。
それだけ個性豊かな受講生が集まっているという
ことでもあります
さて、講義ですが、
資本主義の利潤第一主義の横暴を
規制する「社会的ルールづくり」の意義と現状に
ついてお話しました。
レジュメはこちら→ru-ru.pdfをダウンロード
資料で、ILO(国際労働機関)がこれまでつくった条約と、
日本の批准状況がわかる表をくばりました。
(こちら)で見れます。ILO駐日事務所のHPにあります。
受講生のみなさんは、日本の批准条約が
少ないのにびっくり。
ちなみに、現在188あるILO条約のうち、
日本は48しか批准していません。
他の先進国と比べても、著しく少ないのです。
労働時間に関わるものは1つも批准していません。
世界の「労働のルール」の水準から、大きく
立ち遅れているのが、日本の現状です。
この夏の選挙で、自民党政治を終わらせ、
憲法どおりの日本、世界基準のルールにおいつける
日本にしなければいけません!
私も1か月のバカンスに行きたい!(笑)
グループ討論のようす。
いつものように、
話はつきない感じでした。
きのうは19名の参加でした。
以下、講義の概要です。
一。前回までのおさらいポイント
(省略)
二。社会による規制が、資本の横暴を規制する
◇社会による「強制」とは
*ふたたび、マルクスのこの言葉を考えてみましょう
「“大洪水よ、わが亡きあとに来たれ!”これがすべての資本家
およびすべての資本家国民のスローガンである。それゆえ、資
本は、社会によって強制されるのでなければ、労働者の健康と
寿命に対し、なんらの顧慮も払わない。肉体的、精神的萎縮、
早死、過度労働の拷問にかんする苦情伊に答えて資本は言う
――われらが楽しみ(利潤)を増すがゆえに、われら、かの艱苦
(かんく)に悩むべきなのか?と(*)。しかし、全体として見れば、
このこともまた、個々の資本家の善意または悪意に依存するも
のではない。自由競争は、資本主義的生産の内在的な諸法則
を、個々の資本家にたいして外的な強制法則として通させるの
である」 (『資本論』第8章、464P)
*ゲーテの詩の一節をもじったもの
◇2つの「強制」の言葉は、意味がそれぞれ違います
*文章の最後のところに出てくる「強制」の意味。資本主義経済の
しくみそのものが、資本家に「利潤を追い求める」ことを「強制する」。
*文章冒頭の「強制」の意味。利潤第一主義の横暴から労働者や
国民の利益をまもる社会的な強制、すなわち「社会的バリケード」を
つくり、資本の手をしばる。
◇「意識的かつ計画的な反作用」
*マルクスは、イギリスの労働者が闘いとった労働時間を10時間に
制限する「工場法」を高く評価し、その意味を明らかにする。
「工場立法、すなわち社会が、その生産過程の自然成長的姿態
に与えたこの最初の意識的かつ計画的な反作用は、すでに見た
ように、綿糸や自動紡績機や電信機と同じく、大工業の必然的産
物である」 (『資本論』、828P)
「工場立法の一般化は、生産過程の物質的諸条件および社会的
結合とともに、生産過程の資本主義敵形態の矛盾と諸敵対とを、
それゆえ同時に、新しい社会の形成要素を古い社会の変化契機
を成熟させる」 (『資本論』、864P)
◇資本主義の歴史的発展の度合いをはかる重要な尺度
「むきだしの資本の論理を、社会全体の安心や安定、平和や豊か
さを求めるその国の労働者・国民がどこまで制御し、管理すること
に成功しているか…つまり、…国民による資本主義の民主的管理
がどこまで達成されているか」
(石川康宏「『資本主義の限界』を考える」、『経済』09年1月号)
三。「ルールある経済社会」は世界の発展方向
1。大きな発展をとげてきた「社会的ルールづくり」
◇労働時間の規制だけではなく
*賃金、雇用形態、解雇規制、差別禁止…
*社会的・政治的自由、女性差別、障害者差別…
*企業活動のルール、企業の社会的責任、環境対策…
◇「社会による規制」の方式も多様に
*国法(法律)による規制を基本にしながらも
*国際的な条約
*全国的な団体協約
*行政の指導や世論の監視など
2。その歴史的経過を3つの節目をとおしてみる
◇第1次世界大戦(1914~1918)を転機にして起った変化
*1917年のロシア革命
・8時間労働制など働く人びとの権利、社会保障制度の旗をかかげる
・ドイツのワイマール憲法(日本国憲法25条の源流のひとつ)に影響を与える
*1919年、国際労働機関(ILO)の創設
・労働者の権利を守ることを任務とした国際機関の誕生
・利潤第一主義の横暴を制限する「社会的ルール」を国際化する道が開か
れた
・ILO憲章の「前文」
「世界の永続する平和は、社会正義を基礎としてのみ確立すること
ができるから、そして、世界の平和及び協調が危くされるほど大
きな社会不安を起こすような不正、困苦及び窮乏を多数の人
民にもたらす労働条件が存在し、且つ、これらの労働条件を、た
とえば、1日及び1週の最長労働時間の設定を含む労働時間の規
制、労働力供給の調整、失業の防止、妥当な生活賃金の支給、雇
用から生ずる疾病・疾患・負傷に対する労働者の保護、児童・年少
者・婦人の保護、老年及び廃疾に対する給付、自国以外の国にお
いて使用される場合における労働者の利益の保護、同一価値の労
働に対する同一報酬の原則の承認、結社の自由の原則の承認、
職業的及び技術的教育の組織並びに他の措置によって改善するこ
とが急務であるから、また、いずれかの国が人道的な労働条件を
採用しないことは、自国における労働条件の改善を希望する
他の国の障害となるから、締約国は、正義及び人道の感情と世
界の恒久平和を確保する希望とに促されて、且つ、この前文に掲
げた目的を達成するために、次の国際労働機関憲章に同意する」
◇1936年、「人民戦線」の時代に、フランスで勝ちとられた団体協約
*経営者の全国組織と労働組合の全国組織とのあいだて、労働者の
権利と労働条件を定めた団体協約が成立。階級と階級とのあいだの
協定といっていい全国協約。
*有給休暇制度も、このとき初めて誕生したもの
【横道話-ヨーロッパの有給休暇事情と、有給教育休暇について】
・イタリア憲法36条には、有給休暇を「放棄することはできない」とある。
「自分のバカンスの権利を大切にするイタリア人は、他人の権利
行使を非難しない」(脇田滋さん)
・まとめて取得が常識。産婦人科医もバカンス!
「バカンスは人間を取り戻す時間」「人間の基本的人権として社会
に深く根ざしている」(同前)
・有給教育休暇(ILO140号条約、1974年)って、知ってますか?
≪ILO日本事務所HPより≫
[概 要]
有給教育休暇とは、教育を目的として所定の期間労働者に与
えられる有給休暇とされる。そして、この休暇は 1. あらゆる段
階での訓練 2. 一般教育、社会教育及び市民教育 3. 労働組
合教育の3種のものに限定され、これ以外のものはこの条約の
適用対象ではない。
加盟国は、このような有給教育休暇の付与を促進するための
政策を策定し、適用する。政策の策定と適用については、公共
当局、労使団体、教育訓練機関が参画するものとされる。有給
教育休暇のための財源は、費用をまかなうに足りるほど十分
な額であるだけでなく、永続的なものでなければならない。
・ヨーロッパなどでは、有給教育休暇の導入が広がってきている
・日本では、日本青年団協議会(日青協)がこの条約を批准すべきだ
と日本政府に熱心に訴えているが、日本政府は拒否し続けている。
◇第2次世界大戦と国際連合発足
*国連は、「社会的ルール」を活動の新たな領域に広げ、その国際化を
新しい段階に高める上でも、大きな役割を果たした。
*世界人権宣言(1948年)、国際人権規約(1966年、自由権規約と社会
権規約がある)、女性差別撤廃条約(1979年)などが採択され、そうし
た「社会的ルール」の全面実施が世界のすべての国の条約上の義務
となった。
*国際労働機関(ILO)も国連の一機構として新たな位置づけをもち、力
強い活動を展開している。
*これらの機構や機関が、国際的な「工場監督官」の役割を果たしている。
→これらの国際的な「社会的ルール」をつくらせる原動力は、人びとの闘い
*欧州連合(EU)の果たしている役割
・EU加盟各国での「ルールづくり」の司令塔として、先導・監督の役割を
担っている。
・資本主義の枠内での数々の矛盾や問題をかかえながらも、ルールあ
る経済社会としての歩みを進めている。
≪参考文献≫
『労働法を考える』(脇田滋、新日本出版社、2007年)
『ルールある経済社会へ』(松竹伸幸、新日本出版社、2004年)
『マルクスは生きている』(不破哲三、平凡社新書、2009年)
四。日本国憲法と、国民の知的成熟
1。日本は先進国でまれに見る「ルールなき資本主義」
◇ILOの労働時間に関する条約を、日本はひとつも批准していない
◇男女差別・格差の激しい国
◇非正規労働者にたいする差別・格差
◇解雇規制法も存在しない
◇社会保障はあまりに貧弱
◇利潤第一主義への「規制」をどんどん取っ払う「構造改革」を推進
など、あげればきりがない。
2。日本国憲法という大きな「バリケード」を私たちはもっている
◇日本を「ルールのある経済社会」に変えていくための具体的イメージは?
*日本国憲法どおりの日本にすること
*より具体的には、憲法を権力担当者に守らせること
◇世界でもトップランナーをゆく人権規定(主に第3章部分)
≪平等権≫法の下の平等(14条)、両性の平等(24条)、
選挙権の平等(44条)
≪自由権≫〔精神の自由〕思想及び良心の自由(19条)、
信教の自由(20条)、集会・結社・表現の自由(21条)、
学問の自由(23条)
〔身体の自由〕奴隷的拘束及び苦役からの自由(18条)、
法的手続の保証(31条)、逮捕に対する保障(33条)、
抑留・拘禁に対する保障(34条)、住居侵入・捜索・押収
に対する保障(35条)、拷問及び残虐な刑罰禁止(36条)、
刑事被告人の権利(37条)、自白強要の禁止(38条)
〔経済の自由〕居住・移転・職業選択の自由(22条)、
財産権(29条)
≪社会権≫健康で文化的な生存権(25条)、教育を受ける権利(26条)、
勤労の権利(27条)、勤労者の団結権・団体交渉権・団体
行動権(28条)
◇25条(生存権、国の生存権保障義務)を具体化すれば…
*医療、介護、福祉、社会保障の充実。誰でも安心して暮らせる年金
制度。最低賃金の大幅引き上げ。穴なしの生活保護制度。障害者の
権利。など…
◇26条(教育を受ける権利、教育の義務、義務教育の無償化)は…
*義務教育はきっぱりタダに。高等教育の無償化。有給教育休暇の
創設。など…
◇27条(労働の権利・義務、勤労条件の法定主義、児童労働の禁止)は…
*雇用政策の促進。解雇規制法の制定。労働基準法の抜本的改善。
派遣業務は原則禁止。職業訓練の保証。など…
憲法どおりの日本にすることで、
ルールある経済社会が実現する!
◇さらに、日本国憲法98条2項に注目
「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に
遵守することを必要とする」
*国際的に決められた「社会的ルール」を日本国内にどんどん取り入れ
ることのできる開放性を日本国憲法はもっている。
3。国民・労働者の知的成熟が日本の社会変革の大きなカギ
◇こうした改革を実現するのは、国民・労働者のたたかい
*学ぶ課題は山ほどある
*自分の言葉の力で、まわりの人を変えていく
*自分の言葉を磨くには、徹底的に学ぶしかない
*学習することをあらゆる運動の柱に位置づけ、広げる
*まずは『学習の友』を読みましょう。本をどしどし読みましょう。
◇近づく総選挙
*主権者として行動しよう、行動のエネルギーは学習から
以上。
受講生の感想。
「ILOの条約がたくさんあって、国際基準がかなり
確立しているにもかかわらず、日本は1/3も批准
していなくて、労働のルールが弱いなぁと思った」
「“有給休暇”がきちんとしっかりとれるヨーロッパが、
うらやましく思いました。めぐまれている方だとは思
いますが、なかなか言いづらいのが現状。もっと、
よくなっていってほしいと思いました」
「資本主義を学べば学ぶほど、奥が深いと思いま
した。班討論では日本のお金の仕組みについて、
色々教えてもらい、学習を深めていく為のキーワード
をたくさんもらいました。個人的には、『お金の仕組
み』についてもっと深く知りたいと思いました」
「ILOで条約が出来上がっているなら、それを守ら
せれば良いという道筋はできている。条約を批准
していないという事実を広めていきたい」
「ILOが決めた条約を日本が半分も批准してない
ことにびっくりしたというよりは、ああ・・・と納得して
しまったことが嫌でした」
「日本国憲法は、世界の進歩をどんどん吸収して、
日本国内の人権を豊かにできる可能性までもって
いるなんて☆ぬかりなし・・・!
有給教育休暇☆ぜひとも実現させてゆっくり学び
たーい!」
「自分の周りに学習する場がなく、おかれている
現状に我慢していた。学習することによって、この
ままではだめだと思うように、考えが変わりつつ
あります」
さて、終了後の楽しいなごみ・・・
きのうは13名が参加して、
「Myルール」というテーマで
1時間ちょい。22時すぎまで。
今期はじまった頃とはかなり
違う雰囲気。初めて受講した
人もすっかりなじんでおります。
楽しい時間です。
なごみのお店で
いま注目度急上昇なのがこちら。
生レバ。
疲労回復!?だったっけ?
Sくんは、
ふたたび三線。
なごみにピッタリの
癒しの音色。
毎週やってほしい(笑)
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