きのう(12日)、ごく少数の青年たちに、
「チラシ・ニュースづくりの基礎力」と題した学習会を
行なうことになった。
発端は、「長久さん、そういう学習会をしてください」という
1人の青年の要望であった。
個人レッスンのつもりでいたのだが、
どういうわけか4人青年が集まっての学習会となった。
19時半から、1時間ほどしゃべり、その後質疑応答。
21時には終了する。
このテーマでの学習会は、1年半ほど前に、
1回だけしたことがあるが、
今回はさらに少しヴァージョン・アップをした。
この「チラシ」「ニュース」づくりの技量というのは、
社会を変えようとする民主勢力にとって、大きな課題である。
はっきりいって、水準があまりにも低い。位置づけも弱い。
一生懸命努力してつくったものという
形跡が感じられないチラシ、ニュースが多い。
そういうものには、心が動かないのである。
素人でも、少し勉強すれば、一定レベルの技量には
すぐに到達できる。残念ながら、それを怠っているのである。
学習会でも紹介した本だが、少なくともこの2冊を
読めば、一定水準の力量はすぐに身につく。
活動家の独習指定文献に指定したい(笑)。
『チラシデザイン-チラシ制作基本マニュアル』
(南雲治嘉、グラフィック社、2003年)
チラシのデザインの基礎を実践的に学べる。
技量向上の原動力の根本は、
チラシ制作者の「誠意」と、相手にメッセージを
届けたいという、モチベーションである。
『レイアウトデザイン-レイアウト基本マニュアル』
(南雲治嘉、グラフィック社、2009年)
こちらも、基本原動力は同じ。「誠意」と「熱意」である。
レイアウトとは、文字と絵と空白を、どのように
配置していくかという技術である。
法則をきちんとつかめば、どんなものにも応用はきく。
どちらも値段は1,800円+税である。
この初期投資を行なえば、一生使える技術の基本が
身につく。安いものである。
では、以下、講義の概要を紹介したい。
一。チラシづくりの基礎力
1。チラシの役割
◇人びとの身近にあるメディア
*とくに私たちの運動は、チラシであふれている
◇送り手と受け手の関係
*送り手(企画・イベント情報、告知、ニュース、招待)
*チラシとして形に(おり込み、街頭配布、手渡し、郵送、ポスティング)
・チラシの内容に、送り手のメッセージをこめる
・チラシデザイン・レイアウトは、送り手の「誠意」「熱意」が表れる
【チラシの役割】
①知らせる(情報・知識)→まず、興味を引く、目を引く
②理解させる(賛同・共感・好奇心)→共感を生む
③行動させる(参加・購買)→心を動かす
・知らせるためには目につきやすく、理解させるには適切な内容・素材
を用い、行動させるには、受け手にとっての納得と利益を盛り込むこ
とが必要。
・多くのチラシ(ニュース)は、「見る」段階で捨てられており、それをいか
に「読ませる」ところまで高めるか、そして受け手の「行動」を生み出す
ことが、最終目的。「行動」を生み出すには、心を動かすメッセージが
相手に届く必要がある。
2。チラシのメカニズム
◇送り手のメッセージ
*何が、どこで、いつ、どのように、対象は、メリットは
*つねに「受け手」をイメージしながらつくる。ユーザビリティ(見る人への
配慮)がデザイン・レイアウトの条件。
◇チラシの構成材料は、大別すると2つしかない
①文字(キャッチコピー、見出し、情報、解説)
②絵(イラスト、写真)
*文字と絵の構成と配色。配置=レイアウト。
*これにもう1つ付け加えるとすれば「空白」(ホワイトスペース)。
◇受け手の反応
*イメージの印象、情報内容の理解、好感・共感・前向きな疑問、関心
と行動
*メッセージに人の心を動かす価値がなければ、人は動かない。
3。チラシデザイン・レイアウトの基礎
◇基本は、なめらかなメッセージ(読む「流れ」をつくる)
*なぜ、なめらかなメッセージが必要か→伝えたいことがあるから
*レイアウトデザインの役割は→混沌に秩序を与える
*その中で最も大切なことは→見る人への思いやり
◇まず、人の目を引くために
*受け手の目を瞬時にとらえる役割をもつものを「アイキャッチャー」という。
*イラストや写真などの絵を「アイキャッチャー」といい、文章を「キャッチコ
ピー」と呼ぶ。
*アイキャッチャーは、受け手の目をとらえ、即座にイメージを伝えるもの。
・興味を引くキャラクターをつかう、形(星型や丸型など)の心理作用を利用
する、安定しているもの(横や縦など)より斜めの構図は誘引性が高いetc
・アイキャッチャーは、チラシの重要な位置におかれ、そのすぐ近くにキャッ
チコピーがくるのが一般的。
・何よりも受け手の目をとらえるのは、「人」である。人(とくに個人)が登場
してくるチラシやニュースは、必ずそこに目がいく。
・ポスターは「0.3秒の勝負」といわれている。
*写真の効果-圧倒的な情報力でリアル感が出せ、信憑性を高める
・チラシの目的にそった写真を
・講演会などのチラシは、可能なかぎり講師の写真を載せる
*美しさ・カッコよさ
・人は美しいものを見るのが好き。逆に醜いものは敬遠される。美的なセ
ンス、刺激をもつということは、チラシの重要な要素のひとつ。しかし、
それを追求しすぎると、わかりやすさ、読みやすさをジャマすることもあ
るので注意が必要。
◇キャッチコピーの役割
*キャッチコピーは、見た人に、すばやく好奇心や問題関心を起こさせるも
のであることが必要。読むには一瞬といえども時間が必要であるため、キ
ャッチコピーは簡潔で、語呂のよいものが適している。
①人の目をひく(はっとさせる文章、書体・大きさ)
②興味を感じさせる(新鮮さ、メリットのある情報)
③印象に残す(語呂のよさ、特徴ある語句)
*文字は、飾らなくても十分美しいので、飾り文字はできるだけ避ける。飾る
のはイラストや写真の役目。
◇文章を読ませるためには
*読みやすさと、読みやすいレイアウト
*「意義・任務」「押しつけ」型ではなく、相手の気持ちに呼びかける姿勢で
*フォント(書体)で印象はずいぶん変わる。デザインの大事な要素。文字が
つぶれるようなフォントは避ける。読みやすさが最優先。
*文章は短くくぎり、テンポ良く読ませる。だらだらと説明する文章は読まれ
ない。
*人が目で追える限界は、横組だと1行26文字、縦組41文字まで。
26字をこえたあたりから、最初の文字の記憶が失われ始める。
それをこえたら改行を。
*文章は囲みや罫線のギリギリから始めないようにする(余裕をもたせる)
◇構成力は、バランス力
*1枚のチラシにより多くの情報を入れたいのが一般的な傾向。しかし、情
報がめいっぱいのチラシ(「埋め尽くし」という)は敬遠される。とくに字がび
っしりのチラシは受け手に圧力をあたえ、まず読まれない。
*空白(ホワイトスペース)をしっかりつくる。空間がないと、美的効果が阻
害され、視覚誘導もしづらくなる。ホワイトスペースをつくる技量は、レイア
ウト力が試される。余裕があるものは読みやすい。
*罫線は、メリハリをつけたり、全体を引きしめるときに使う。
*囲みは1面のなかで3か所まで
*チラシの構成力は、バランスをとる力でもある。
◇デザイン・レイアウト発想力の源泉
*発想力は訓練によって高まるもの
・新聞の広告やチラシ、雑誌などを「デザイン・レイアウト」の意識を
もって読む
・すぐれた文化や芸術に日常不断に接する
・訓練にいい方法は、いいアイディアを真似てみる、ということ。
◇実践編-プロの技とチラシの良し悪しを見極める力(日々の鍛錬が必要)
*私たちの身のまわりにあるチラシを題材に考える
【参考文献】
◆『チラシデザイン』(南雲治嘉、グラフィック社、2003年)
◆『レイアウトデザイン』(南雲治嘉、グラフィック社、2009年)
二。ニュース・機関紙づくりの基礎力
1。ニュース・機関紙は運動の組織者
◇草の根のメディア
*定期で発行するニュース、機関誌、ホームページ&ブログなど
*「定期で」というところが大事
*「情報」をきちんと正確に、定期的に伝えられるかどうかは、活動推進の
重要なポイントのひとつ。
◇良い運動・組織には、良いニュース・機関紙
*ニュース・機関紙をみれば、組織の元気度がわかる
*ニュース発行・機関紙活動は、組織活動そのもの
*機関紙がなかったら、組織の活動が1人ひとりに伝わらないし、1人ひ
とりの声が組織にも伝わらなくなる。血液循環と同じ役割。
◇組織の運動が記録に残る-歴史や活動をふりかえる資料として
2。人にこだわり、人に執着する
◇1人ひとり、名前をもつ「個人」をたえず登場させる
*抽象化されたデータ・数字や、組織活動全体の記事は、客観的事実の
記録にはなるが(それも大事だが)、読み手に迫るものがない。
*記事の素材が個性的であること。他の人間と取り替えがきかない人間が
登場してきて、「この人でなければ言わないセリフ」が出てくるニュースや
機関紙は読まれる。
*「個」のリアルな声や姿、喜怒哀楽をつうじて、その背景にある職場の問
題や社会構造をあぶりだすことができたなら、その記事は共感をひろげる。
*人と人をつなげていく。そして前へ向かって歩き出そうという呼びかけが
飛び交うような、そうした声の組織者としての役割をニュース・機関紙が
果たす。
*上意下達型のニュース・機関紙では、なかなか人は動かない。
3。企画の立て方
◇企画を考えるスタンス
*「次の号をどういう内容のものにしようか」。これが企画。
①どういうテーマにするか
②そのテーマをどういう内容・形式の記事にするか
*企画を考えるというのは、読者に提供したい情報・テーマを探ること。
したがって、編集する側に求められるのは、「企画を考える」ことでは
なく、「いま組織や運動はどういう状況にあるか」「個々の職場・部門
はどうなっているか」「組合員や組織員は何を考えながら働いて(活動
して)いるのか」…といった諸点について、つまり「組織と人の現在と未
来」について、分析・考察することが求められる。
*ニュース・機関紙の目的は、「発行する」ことではなく、「コミュニケー
ションを促進する」ことであり、「何をコミュニケーションしたいのか」「な
にをコミュニケーションすべきなのか」をじっくり考えることが大事。
◇企画力を高めるのは情報収集と問題意識
*「企画力を高める」「いいアイデアが突然パッと思いつく」というのは、
日常の問題意識の高さと情報収集(学習)の広さに規定される。
◇読者のニーズを尊重しながら、読者をリードする
*読者は、自分の関心・問題意識の範囲内でしか情報に「反応」しない
*読者の関心の高い問題や射程距離内にある企画は読まれやすい。し
かし、「ニーズの尊重」ばかりでは、読者の問題意識をこえる企画はで
きなくなる。それでは、編集側も、読者にも、成長はない。
*「ニーズを尊重しながら、読者をリードしていく」「適度な新しさや刺激
に満ちたニュースや機関紙をつくる」。こうしたバランス感覚が編集す
る側には求められる。
4。記事・文章の基本
◇記事の形式
*活動報告、お知らせ、論考・論文、読者の投稿、人物紹介、インタビ
ュー記事、座談会、対談、アンケート調査、ルポタージュなど
*テーマ・目的にそって、どういう形式の記事にするかが決まる
◇文章を書くということ
*文章表現で一番大切なことは、「他人(読者)に伝えたいという欲求」
「心のなかから、自然に込みあげてくるコミュニケーションの衝動」が
あること。
*文章のうまい・へた、ではなく、心から言葉があふれてきて、その真摯
な内面の吐露が人の心をとらえる。
*言葉を知る-読書の積み重ねと国語辞書の活用。文章力のある人の
書き物を読む。
*考える力を育てる-とにかく「書く」。そのプロセスをつうじて、「考える
力」「感じる力」が伸びてゆく。
◇文章の基本ポイント
*5W1H(いつ、だれが、どこで、なにを、なぜ、いかに)。記事やニュース
の内容によって、それぞれのウエイトが変わってくる。
*句読点は、20字あたり最低ひとつ、できれば2つぐらい。1行(20字
程度)にひとつも句読点がない文章というのは避ける。「短く」「簡潔に」
が基本。
*日本語は漢字、ひらがな、カタカナで構成。読みやすさという点では、
一般的に漢字含有率は30%以内におさえることが望ましいとされて
いる。漢字が多い文章は紙面が黒っぽくなり、文章を読むことが苦手
の人にとっては、非常にとっつきにくい印象を与えてしまう。
*こまめに改行する配慮も必要
*「書き出し」を工夫し力を集中する。読者を引き込み、続けて読んでもら
うために。
5。見出しづくりのポイント
◇見出しの重要性
*見出しは、その記事を読むかどうかを読者に判断させる最初の決め手。
とくに忙しい現代社会では、まず目に入る「見出し」の重要性は高まって
いる。
*どういう見出しを立てるかは、記事の内容と編集者の感度・センスによる
◇見出しを考えるポイント
*見出しは大きくわけて2種類。ひとつは、記事内容を端的に表現したもの
(代表例は新聞の見出し)。もうひとつは、本文への誘導をねらった見出し。
*記事の内容にない見出しは避ける。長い「見出し」は「見出し」ではなくなる。
*「主見出し」に「○○集会に○○名が参加!」など、中身を伝えないもの
は避ける。それが読者の知りたいことではない。「みんなの力で○○を達
成しよう!」など、使い古された一般的なスローガンも心に響かない。
*新しい言葉を使う努力・探求を-実践・たたかいのなかから言葉は生まれる
6。読みやすいニュースレイアウトの基礎
◇ニュースレイアウトは、料理でいえば盛りつけの役割
*いくら素材がよくても、見た目で敬遠されることのないように
*レイアウト作業で大切なことは、原稿を書いてくれた人や、取材に応じてく
れた人への「思いやり」「感謝の気持ち」。記事を最良のものに仕上げるこ
とで報いる。
*記事の内容を「読者に届けたい」というモチベーションが技術の向上につ
ながる。
◇読みやすいものにするために、十分なスペースを
*窮屈さは自由度を低くし、魅力的で美しいレイアウトを困難にする
*新聞や雑誌などのレイアウトをつねに研究することで技術は身につく
【参考文献】
◆『もっと読まれる社内誌の創りかた』(木村幸男著、NOMA総研、2000年)
◆月刊『機関紙と宣伝』(日本機関紙協会出版部)
以上。
このテーマもふくめ、いつか、若い青年たちに向けて、
運動論・活動家論の系統的な講座をやりたいなと思う。
圧倒的に教えられていないのである。
さて、学習会が終わって、21時から
ドイツにある西大寺町商店街州の「パブ」へ移動。
2人の青年が加わって、総勢7名での懇親会となる。
久しぶりに訪れた場所で
あったが、やはりビールが
うまい店であった。
よくみると、77期労働学校の
参加者で占められていた。
そして、天然素材とあがめられた
女性四天王のうちの3名が
集結していたのである。
必然的に、笑いの絶えない
飲み会であった。
とある青年組織への勧誘も行なわれ、
前向きな方向に事態は動いていたのであった。
これまたふとみると、私は唯一の30代。
ついに、「平均年齢を引き上げる人」になったのだと
感慨にふける。
青年たちと、選挙、がんばろう。
大野さんありがとうございます。
プロの教えをこわないといけないですね。よろしくお願いします。
まなべさんもありがとうございます。
はい、なんでもやりますので、今後ともご活用ください。
選挙、体調に気をつけながらがんばりましょう。
仲間をたくさん増やしたいですね。
投稿情報: 長久 | 2009年8 月17日 (月) 07:30
先日はリクエストに応えた学習会ありがとうございました!とっても勉強になりました。
>運動論・活動家論の系統的な講座
もぜひ開催してほしいです!
選挙のなかで学んだり、交流したり、仲間が増えるって本当に楽しいことですね。
みんなで成長できる喜びを感じられるような選挙にしたいです。がんばります!!
投稿情報: まなべ | 2009年8 月15日 (土) 17:19
機関紙講座の講義台本を拝読いたしました。また機会が訪れるといいですね。
投稿情報: 大野智久 | 2009年8 月15日 (土) 10:15