きのう(20日)の夜は、
「マルクスの思想を今に生かす講座」の1回目(全2回)でした。
内容は、
「マルクスの『宗教とその未来』論」。
講師は、伊藤敬さん(哲学・宗教・芸術論研究者)でした。
兵庫の明石からおこしいただきました。
学習の友社刊『マルクスの思想を今に生かす』の
8人の執筆者のうちのお1人で、
この本の7章部分を書かれています。
私自身、この論文にたいへん感銘と刺激をうけて、
1回目にぜひお呼びしたいと思ったのでありました。
かなり内容の濃いテーマであったにもかかわらず、
熱心な参加者17名が集いました。
伊藤さんのお話の概要は、以下です。
(レジュメはかなり詳細で膨大でしたが、骨子のみ)
はじめに
*宗教の圧倒的影響力と脱宗教化
*非科学的迷信VS内面的安心立命
*宗教を社会科学の眼で外的にみるVS宗教的求道にふみこむ
1。国教としてのキリスト教
①マルクス以前の歴史的キリスト教
②19世紀ヨーロッパのキリスト教
2。フォイエルバッハから史的唯物論へ
①「キリスト教の本質」
②倒錯した世界が宗教を生みだす
③史的唯物論の確立
3。現実社会の変革が宗教を変える
①第二バチカン公会議
②中南米の解放の神学
③キリスト教の中心教義の変化
4。宗教の未来
①マルクスの宗教止揚論
②人格神が人々の精神に与えた歴史的影響
③宗教の深化(鈍化)。の徹底から宗教の止揚へ
5。現代日本の宗教状況
おわりに
以上。
内容はたいへん多岐にわたり、
現実社会と宗教との関連についての根本的で
豊かな見方が提示されていたと思います。
また、現代社会における宗教の影響力、
日本の宗教状況なども、興味深いお話ばかりでした。
「難しかった」という感想も出されましたが、
めったに学ぶことできないテーマだったこともあり、
質疑応答も活発に質問が出て、
おおいに深まった学習会になったと思います。
参加者の感想より。
「宗教は思想として、現実社会から全く独立して
存在しているイメージが強いものだと思われる
ことが多いのですが、逆なんだということが分かり
おもしろかったです。
宗教を考えることは、神のことを考えるというより、
人間とその宗教を生み出した社会について考える
ことなんだな、と。支配の道具になっている面や、
文化や学問を発展させた(また足かせともなった)
面など、宗教も多面的に見ないと分からないこと
いっぱいですね。
興味あるけど、つっこんで勉強する機会はちょっと
というテーマを聞くことができてよかったです。日本
の自然宗教状態ももっと考えてみたいなーと思い
ました。新宗教のこととか」
「『神の本質は、人間の自己意識である』という
フォイエルバッハの言及は鋭い。宗教について
日ごろ考えていなかったので、新鮮なお話でした」
「期待していた学習会の内容だったと思います。
科学的社会主義と宗教との関係についての
考え方が少し整理できました。マルクスがキリスト教
を批判したのは、イデオロギーとしての宗教を
批判したということが分かりました。現代日本の
宗教状況はこういう分析があるのかと思いました」
さて、講座の2回目は、
「今日の労働時間問題とマルクス―損保産業の現場から」
というテーマで、
松浦章さんを講師に、5月18日(金)に行います。
ぜひご参加ください
伊藤さんのお話は、たいへん刺激的なものでした。
史的唯物論の宗教のとらえ方はひじょうに根本的です。
投稿情報: 長久 | 2012年4 月23日 (月) 09:45
「現実社会が宗教を変える」という部分が私も聞きたいです。世界史の勉強をしているとパレスチナ問題とか十字軍とかピューリタン革命のように宗教(をめぐる争い)が社会を動かしているように見えますが、本当は逆なのですね。さすがマルクス主義の宗教分析です。
投稿情報: 路傍の人 | 2012年4 月22日 (日) 23:48