最近読み終えた本。
『愛撫・人の心に触れる力』(山口創、NHKブックス、2003年)
ソワニエ読書日記、今年の1冊目。
かなり面白かったです。
やっぱり皮膚という臓器はすごいのであります。
以下、学生さんむけの紹介文をそのまま貼り付け(横着)。
著者の専攻は、臨床心理学・身体心理学。
最近同じ著者の本で、『子どもの「脳」は肌にある』
(光文社新書、2004年)も読みました。子育て中の方には、
こちらがオススメですが、全体的には、
『愛撫』のほうが読みごたえがあります。
ところで、「愛撫」とは何でしょうか。
著者は、
「人に愛情をこめて接触する行為」と定義しています。
そして、「愛撫は人と人の絆(きずな)をつくりそれを深め、
大切な人を癒し、また愛撫する自分自身をも癒す力を
もっている」と強調します。
とりあえず、おおまかな目次を紹介します。
≪序 章≫ 「愛撫」という驚異
≪第1章≫ 親子の愛撫・・・子どもにどう触れるとよいのか
1.動物の親子のふれあい
2.子どもにどう触れるとよいのか
3.タッチケアとカンガルーケアー触れることの驚異的な力
4.触れられない子どもはどう育つのかー愛撫の発達的意味
≪第2章≫ 愛撫の身体感覚
1.愛撫の起源をたずねて
2.夫婦や恋人の愛撫
3.愛撫の男女差
4.コミュニケーションとしての愛撫
5.「くすぐり」にみる身体感覚
6.セルフタッチー自分自身への愛撫
≪第3章≫ 愛撫で癒す
1.不安やストレスを癒す
2.高齢者へのスキンシップ
3.ボディ・ワークと「体ほぐし」-身体への気づき
4.相手に「触れない」愛撫ーセラピューティック・タッチ
以下、引用メモ。
「触れるという触感覚の特徴は、触れる対象と触れる身体が
同時に実在するという『同時性』と『実在性』にある。見たり聞
いたりするのとは違って、『今、ここで』両者が同時に実在しな
ければ成り立たない感覚である。・・・蝕感覚は、視角や聴覚
のあり方を基礎づける『根源的感覚』であって、視角や聴覚と
並列的に論じることはできないのである」(17P)
「子どもの側からみれば、抱かれることは母親にしっかり保護
され、自分は必要とされている、という感覚を『身をもって』感じ
るために必要なことである」
「母親からしっかり抱きしめられる経験は、他の何にも替える
ことのできない安心感をもたらすのだ。それは愛情を十分に
与えられていることの証であり、いつまでもその人の心に残っ
ているものだ」(38~39P)
「生理的には、『皮膚は露出した脳』であるといわれる。皮膚は
発生学的には、脳や中枢神経系と同じく外胚葉(がいはいよう)
から形成され、その広い面積で外界からの刺激を知覚する。
また、皮膚に分布している感覚受容器からの刺激は、脊髄(せ
きずい)から間脳を経て大脳皮質に至り認知される一方で、大
脳辺緑(へんえん)系、視床(ししょう)、視床下部、脳下垂体(の
うかすいたい)へと伝わっていく。精神神経免疫学の発展によっ
て、これらは情動や自律神経系、免疫系、内分泌系に影響を
与えることがわかってきた。したがって、皮膚に接触して刺激を
与えることは、心と身体の両面に好ましい影響を与えることにな
るのである。このような、科学的な研究を背景としてタッチケアが
誕生した」(55~56P)
『日本タッチケア研究会』というのもあるそうです。
ネットで検索したら出てきます。
「頼みごとをするときには相手にタッチすると印象をよくし、それ
が頼みごとの承諾率を上げているようである」(126P)
『レーニン 最後の模索-社会主義と市場経済』
(松竹伸幸、大月書店、2009年)
レーニンの模索と実践について、
現代的課題を念頭に、かなり整理して学べました。
不破さんの『レーニンと「資本論」』でも思ったけど、
社会主義を語るうえで、このレーニンの実践には、
たいへんな教訓がつまっているなぁと、あらためて。
市場経済の活用の部分ではとくに。
マルクスブームがやってこようとしている
昨今の日本社会のなかで、
あえてこのテーマに挑んだ松竹さんの問題意識にも、
とても刺激を受けました。
また、以下のレーニンの
姿勢は、真の科学的態度といえます。
簡単にはできないことですが。リーダーはとくに。
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つまりレーニンは、戦時共産主義の誤りについて、ただ「戦
時」だったとして逃げたわけではない。つぎの段階にすすむう
えで不可欠な、深い分析をおこなったのである。
レーニンは、みずからの誤りをみとめることをおそれなった。
それどころか、「危険なのは、敗北よりも、むしろ自分の敗北
をみとめるのをおそれること、その敗北からすべての結論を
引き出すのをおそれることである」「もし、敗北をみとめると、
陣地の明けわたしと同じように、士気の沮喪(そそう)をおこし、
闘争力をよわめる結果になるという見解をとるとすれば、そん
な革命家は三文の値打ちもないと言わなければならない」(レ
ーニン全集、第38巻81~82P)とのべ、断固としてネップへの
転換をすすめていったのである。
(81~82P)
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困難に満ちたロシア情勢のなかで、
「目の前の現実に立ち向かって」いこうとする、
レーニンの力強さと、科学的態度は、
私たちの日々の実践を励ますものとなっています。
そして、補論「ソ連崩壊は国際政治をどう変化させたか」も、
「ははぁ」「なるほど!」と一気に読みました。
いろいろと議論になりそうなところもあるかもしれないですが、
これまでの固定観念や「枠」をはみ出す指摘は、
読むほうとしてはたいへん面白いのであります。
私も、もっともっと勉強しなければ
いけないと思いました。はい。
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