きのう(28日)は、77期岡山労働学校の第2講義。
テーマは、
「カネ!カネ!カネ!-資本主義社会における貨幣の役割」。
参加は17名でした。
今週も、新しく「受講します」という人が!
入学式には参加してくれたのですが、先週は参加できず、
きのう2回目の参加で決断(?)してくれました!
とある病院の事務職員の女性なんですが、
その職場の先輩職員が、
「彼女が定着するまで私が足になる」と、自分も子育て中の
たいへん困難な条件のなか、一緒に参加してくれています(涙)。
こういう努力の広がりが、今期の労働学校を
支えてもらっています。ほんとうにありがとうございます。
ということで、今期の労働学校は毎週いいことがあって、
精神的に栄養状態が良いです(笑)。
班討論のようす。
今期の班討論は
とても面白そう。
活発に疑問がだされて、
盛り上がっています。
講義の不十分さの
反映かもしれませんが(笑)。
で、かんじんの講義ですが・・・。
どうだったんでしょうね~。
でも、ここまで、「価値」「使用価値」「貨幣」など、
「生身の人間」がでてこない、小難しい内容なのですが、
みんな「がんばってついていこう」という学習意欲の
エネルギーを感じます。すばらしい。
講義の組み立ては、とにかく、
「はじめて経済学を学ぶ受講生」の立場にたって、
マルクスの論理展開とは少し違う展開にしてみたり、
「あえて言わない」ことも多々あったりしています。
あと、やってみて気づいたのですが、
『資本論』は弁証法を駆使しての分析が
行なわれているので、哲学学習をしていないと、
「矛盾」とか書かれていても、「なんでこれが矛盾?」と、
ついていけてない人もいるようで、
なかなか難しい問題だなと思いました。
いずれにせよ、
講師(私)の力量不足はいなめず、
班討論に助けられているかんじです。
がんばります。
では、以下、講義の概要です。
本物のレジュメには、理解のイメージを助けるために、
ところどころ写真をペタペタ貼っていますが、
このブログでは再現できません。あしからず。
一。前回のおさらい
◇商品とは…その二つの性質
①商品はまず第1に、人間のなんらかの欲求・必要をみたす(有用
性という)性質をそなえているもの=「使用価値」という。
②他のものと交換されるという性質=交換価値
*交換価値の本質は、人間労働の生産物ということ
*人間労働の結晶のことを、「価値」といいます(目には見えない)。
*使用価値をつくる労働が「具体的有用労働」。価値をつくる労働が
「抽象的人間労働」。労働の二重性。
◇商品の価値の大きさはどうやって決まるか
「商品の価値の大きさは、その商品を生産するのに社会的に必要な
平均の労働分量(労働時間)によってきまる」
→つまりどれだけ「手間ひま」がかかったか
二。貨幣とは何か?
1。“お金”の魔力
◇お金さえあれば・・・・!?
「金はすばらしいものである! 金をもつ者は、望むことはなんでも
できる。金をもってすれば、魂を天国に送り込むこともできる」
(コロンブス『ジャマイカからの手紙』1503年-『資本論』に出てくる引用)
<コロンブスの言っているのは、紙幣ではなく、ほんものの金goldのこと>
*宝くじに「夢」を求める!?
「1等と前後賞を合わせると3億円が当たる『ドリームジャンボ宝くじ』が
18日、全国一斉に売り出され、各地の売り場には“夢”を求める人た
ちが列をつくった」(山形新聞09.5.18付)
*どんな商品とでも交換することができるお金。不思議ではありませんか?
「蓄蔵貨幣形成の衝動は、その本性上、限度を知らない。貨幣は、
どの商品にも直接的に転化されうるものであるから、質的には、
あるいはその形態からすれば、無制限なもの、すなわち素材的
富の一般的代表者である。しかし、同時に、どの現実の貨幣額も、
量的に制限されたものであり、それゆえまたその効力を制限され
た購買手段であるにすぎない。貨幣の量的制限と質的無制限性
とのあいだのこの矛盾は、貨幣蓄蔵者を、蓄積のシシュフォス労
働に絶えず追い返す」 (マルクス『資本論』第3章226P)
◇「金」にまつわる「ことざわ」から
*「阿弥陀の光も銭次第」
(以下は、時田昌瑞著『岩波ことわざ辞典』の解説)
・金の威力は絶大で、すべて世の中は金次第であるということ。何
事も金の世の中で、仏様の御利益までも、賽銭(さいせん)が多い
か少ないかで決まってしまうという。たしかに仏教の一部宗派では、
死者に付けられる戒名(かいみょう)にしても金額の多少によって
ランク分けされているし、お経にしても包む金の額によってどの経
を読むか異なるというから、まさに金次第といえる。
*「地獄の沙汰も金次第」
・金はどんなことでも可能にするというたとえ。「地獄の沙汰」は、
死んで地獄に落ちた者が苛烈な裁判を受けて処罰が課せられる
こと。そこでさえ、金を使えば判決が有利に働くというのがことわ
ざの意。「阿弥陀の光も銭次第」と、金の威力は同じように仏様に
も有効なのだから、ましてこの世は万事金の世の中、というのは
当然の認識だったと言えよう。もちろん、金の力が認識されるよう
になるのは貨幣経済が社会運営の機軸になってからのこと。
*「金が敵」
1)金銭によって世の中の災いは起り、人が苦しむ。金はまるで、
敵のようなものだということ。
2)敵を探してもなかなか見つからないように、金運に巡り合い金
儲けをするのは難しいということ。
◇「ハゲタカ」(真山仁小説、NHK土曜ドラマ、6月6日~映画公開!)
*「誰かが言った。人生の悲劇は二つしかない。ひとつは、金のない
悲劇。そしてもうひとつは、金のある悲劇。世の中は金だ。金が悲
劇を生む」(by鷲津政彦)
なぜ、お金は、そのような力をもつのか?
そもそもお金とは何か? まず、それを歴史的に明らかにします。
2。商品交換の発展から生まれた「貨幣」
◇商品の価値の大きさをあらわす「等価物」
*商品は、自分の価値を自分であらわすことができない
1着の上着=2キロの小麦
*この場合、1着の上着は、2キロの小麦という「他の商品の使用価値
の一定量」によって、自分の価値を大きさをあらわします。
1着の上着=2キロの小麦
=50個のジャガイモ
=3本の首飾り
↑こうした、ある商品の価値を目に見える形であらわ
す役割を担う商品を「等価物」といいます。
◇商品交換の不都合から必要とされる一般的等価物
*「小麦」「ジャガイモ」「首飾り」の所有者みんなが、「上着がほしい」とは
思わないかもしれない。物々交換の限界。
*すべての商品の価値をあらわす役目を引き受ける特殊な商品の登場
2キロの小麦=1頭の羊
50個のジャガイモ=
3本の首飾り=
↑自分の使用価値の一定量によって、他のすべ
ての商品の価値をあらわす鏡としての役割を果
たす商品のことを、「一般的等価物」といいます。
*歴史的に、「誰でも喜んでうけとる」ような商品が、一般的等価物の役
割を果たしてきました。時代によっても地域によっても異なった商品が
担ってきた。
・羊や牛(家畜)、食塩、コショウ、貝殻、お米・・・
*しかし、家畜は交換の途中で死んでしまったり、食塩は雨でとけてしま
うなど、さまざまな困難がありました。こうして、一般的等価物として不
適当なものがだんだん排除され、最適の商品が選択されていきます。
そして、「一般的等価物」(誰でも喜んでうけとる商品)の役割を一手に
引き受ける商品が登場します。それが「貨幣」なのです。
◇貨幣の発生
*貨幣とは、一般的等価物の地位と役割をひとりじめにすることになった商
品にほかならず、具体的には「金gold」がその役割を担うことになりました。
*もちろん、「金」もさまざまな商品のなかの一つです。入れ歯やぜいたく品
などの材料としての「使用価値」をもっています。
*なぜ「金」が?ーその自然的性質に理由が
①どんなに分割しても融合しても均質であること
②化学的変化がおきにくく、くさったり破損することが少ないこと
③もち運びや保管がしやすいこと
④少量で大きな価値をもつため、少量の金で他の多くの商品と交換できる
こと
こうした金の自然的性質は、一般的等価物の役割をはたすのにもっ
ともふさわしい商品であることを、人びとが歴史的にみつけだし、商
品交換の一定の歴史的発展段階のなかで、金が貨幣となったのです。
*価格(ねだん)とは、商品の価値を貨幣(金の一定量)の単位であらわしたもの
◇私たちが使っている「お金」
*貨幣は最初の段階では、地金そのものが流通していた。しかし、それ
では交換のつど、目方をはかったり、品位をたしかめたりしなければな
らず、不便でした。そこで、国家が金を鋳造(ちゅうぞう)して、金鋳貨を
通用させるようにし、この不便を解決することになりました。
*流通の発展にしたがい、しだいに、完全な金でなくても、「金の価値を
あらわす“しるし”」であればよい、ということになってきました。
*そこで国家は、貴金属ではなしに、金鋳貨の代用品として、それ自身
ではほとんど価値をもたない紙幣を、強制通用力(法律によって通用
力を強制すること)にもとづいて発行し、金鋳貨と同じような機能をはた
させるようになりました。それが、私たちが使っている「お金」です。
*日本の貨幣の歴史(別紙資料)
*世界の通貨制度は、どう変わってきたか(別紙資料)
三。貨幣の機能と、貨幣の資本への転化
1。貨幣の機能
①価値の尺度
②流通手段
③貨幣(貨幣蓄蔵・支払手段・世界貨幣)
2。「お金もち(貨幣蓄蔵者)」と「資本家」は違う
◇お金の増やし方が違う
*「お金もち」も「資本家」も貨幣を一定量もっている、またはそれを増や
すことへの熱情は共通しているが、その「増やし方」が違う。
*「お金もち」は、「入ってきたお金」よりも、「出て行くお金」を少なくする。
つまりケチ(節約・貧欲)になることによって、お金を貯めこむ。
*資本家は、「合理的な貨幣蓄蔵者」
「資本家は合理的な貨幣蓄蔵者である。価値の休みのない増殖―貨
幣蓄蔵者は、貨幣を流通から救い出そうとすることによってこのことを
追求するのであるが、より賢明な資本家は、貨幣を絶えず繰り返し流
通にゆだねることによってこのことを達成する」(『資本論』第4章261P)
◇貨幣所有者は、市場で「労働力」商品を発見するー資本への転化
3。資本とは何か(来週講義のさわり)
◇私たちが労働力を売るのは、「金もうけ」のためではない
(労働力の説明は次回講義で!)
商品 - 貨幣- 商品 が私たち(労働者)のお金の流れ
*私たちが最終的に必要なのは、「使用価値」(商品)
◇これに対して、資本家が労働者の労働力を買って商品生産をする流れは…
貨幣 - 商品- 貨幣 ということ
しかもここで重要なことは、はじめの貨幣量よりも、おわりの貨幣量が
大きくなるということ(この表の説明も来週詳しくやります)。同じ量では
意味がない。
生産手段
/
貨幣 ・・・・ 生産 ・・・・ 新商品 ―― 貨幣
\
労働力
この運動の目的は、貨幣の増加、つまりより大きな貨幣(価値)の
獲得にあること。 資本=自己増殖する価値のこと。
「回り道をして貨幣を貨幣と、同じものと交換することは、ばかばか
しくもあれば無目的でもある操作のように見える。総じて、ある貨幣
額が別の貨幣額から区別されうるのは、その大きさの違いだけに
よるのである。それゆえ、過程G-W-G(貨幣-商品-貨幣、の
こと…長久)は、その両極がともに貨幣であるから、両極の質的な
区別によってではなく、もっぱら両極の量的な相違によって、その
内容が与えられる。最初に流通に投げ込まれたよりも多くの貨幣が、
最後に流通から引き上げられる」 (『資本論』第4章255~256P)
では、なぜ「はじめ」より「おわり」の貨幣が大きくなるのか?(次回に)
次回講義(6/4)は
「いよいよ最大の謎解き!-賃金と搾取のヒミツにせまる」です!
以上。
講義録はこちら。またまた恥を天下にさらします。
090528_001_1.mp3をダウンロード (前半)
090528_001_2.mp3をダウンロード (後半)
(始まるまで時間がかかるかもしれません)
受講生の感想文より。
「今日のお話の範囲では、貨幣がどういうものか
わかった気がします。IMF体制とか変動相場制と
か、今日はあまり触れなかったところがよくわから
ないし、知りたいような気がしました」
「班討論でみんなの話を聞いて、改めて『お金を
増やすためにお金を使う』ことの不思議さ、害を
よく考えることができました。お金がない(払えな
い)ところに必要なモノやサービスがまわらない
というのが、いろんな問題をひきおこしているん
ですね」
(先週の話を聞けなかった受講生の感想)
「*価値=労働分量=手間ひま ←本当に~??と
思ったけど、そこでつまづくのはいかんと思いスルー。
*質的無制限⇔量的制限 ←なんで矛盾?あたりまえ
やんと思ったんですけど話が先に進むのでスルー。
*資本=自己増殖する価値 ←も~わけわからん…
みたいな感じでした。でも楽しかった☆」
「今回の講義でお金の成り立ちやしくみなどが分
かった。人はお金に夢を持つけど、お金は敵に
なることが多いなと思った」
「今日も難しい内容でした。金(gold)→貨幣までは
ついていっていたのに・・・。自己増殖する価値で
こんがらがってきました」
「貨幣=商品の一つ、という考えは、とても新鮮でした。
お金はなかなか便利(?)な商品なのだな、ふーんと
思いました。でもお金を資本家がどんどんふやして
いるのだとしたら、地球上のお金の総量はどんどん
増えていくのでしょうか?それとも変わらないのでしょ
うか?少しギモンに思いました」
「久しぶりの参加。班討論で、分からないところをみ
んなで考えることができて、楽しかったです」
終了後の「なごみ」。
12名の参加で、
自己紹介をしながら、
「いい習慣・悪い習慣」の
話題で
かなーり盛り上がりました。
今期は
楽しい人が多いなぁ。
遅くまでおつかれさまでした。
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