あまり人の悪口を書くのは好きではないのだが、
今回はお許しを。
写真は、街を歩けば、いやでも目に入る、公明党のポスターである。
岡山県は公明党が強いところで、国政選挙での得票率は、公明党のなかで、
全国でも5番目ぐらいの高さを誇る。岡山市議なんて10人もいる(定数52)。
だから、街中、公明党のポスターだらけである。
キャッチコピーは、
「生活を守り抜く」である。
非常に力強い。
庶民の願いを反映した
コピーだと思う。
しかし、である。
「それをオマエが言うか?」
と思わざるをえない。
大きなキャッチコピーの横に、
じっくり近づかなければ読めない3行がある。
なぜこれだけ小さいのか?とも思う。
「景気の回復」「雇用の安心」「中小企業の支援」「社会保障の充実」。
どれも破壊してきたのが、自分の党であることに
引け目があるのかもしれない(まあ、これは詮索しすぎだと思うが)。
『前衛』7月号に
「自民党政治の全面的な擁護、推進者となった公明党」という
論文(小松公生)が掲載されていたので、ぜひ読んでほしい。
以下、その論文に依拠しながら、
2点だけ強調し、事実を紹介したいと思う。
まず、「生活を守り抜く」はずの公明党が、
自民党とともに、どんな雇用・生活破壊の悪法を国会で通してきたかである。
自民党との連立参加10年の公明党自慢の「実績」である。
(主要なもののみ紹介しています。ごく一部です)
【労働者派遣法・職業安定法改悪 99.6.30】
人材派遣業を原則自由化し、民間の職業紹介書を原則自由化した
【年金改悪法 00.3.28】
厚生年金の支給開始を65歳に繰り延べし支給額の賃金スライドを
停止するなど、年金給付額を大幅カット
【雇用保険法改悪 00.4.28】
失業給付の日数を、それまでの最高300日から4ヶ月切り縮めて180日に
【健康保険法改悪 00.11.30】
70歳以上の窓口負担に、1割負担を導入
【医療法改悪法 00.11.30】
病床を削減し、世界にも例をみない看護基準を設定(一般病床で患者3人
に1人、療養病床は6人に1人)
【医療改悪法 02.7.26】
サラリーマン本人の患者負担が、03年4月から3割に。70歳以上の窓口
負担を完全に定率化(1~2割)
【労働者派遣法改悪 03.6.6】
派遣労働者の派遣期間の上限を1年から3年に延長し、製造現場への
派遣を解禁
【国民年金法等改悪 04.6.5】
マクロ経済スライド制を導入し、給付水準を自動的に引き下げ、
保険料は毎年アップ
【介護保険法改悪 05.6.22】
特養ホームや老人保健施設の食料・居住費を全額自己負担、
軽度者からの「介護とりあげ」
【障害者自立支援法 05.10.31】
障害者の福祉や医療に原則1割の「応益負担」を導入。事業所の支払い
方式を月額性から日額性に。
【健康保険法改悪 06.4.11】
後期高齢者医療制度という差別医療の仕組みを導入し、
療養病床を大幅削減
【雇用保険法改悪 07.4.11】
「自己都合」とされた離職者について、受給に必要な保険加入期間を、
それまでの半年から1年に延長
他にも、大企業支援、憲法無視の重要法案に
ことごとく賛成をしている。
「悪法になんでも賛成、公明党」なのである。
個々の法律について、公明党の人たちは、
「いや、それにはこういう理由があるのだ」と反論するかもしれない。
しかし、これら一連の悪法が、庶民の生活を圧迫し、命の格差を生み出し、
セーフティーネットを破壊し、貧困を広げる背景になったことは、
間違いのない事実である。
公明党が政権参加し、自民党政治の延命に手をかしたこの10年間で、
日本社会は良くなっただろうか。
暮らしやすくなっただろうか、安心が増しただろうか。
公明党支持者の人は、自分の実感を通じて、よく考えてほしい。
そして、もうひとつ、重要な問題がある。
それは、こうした悪法が「公約違反」のオンパレードによって
つくられたという事実である。
まず、押さえておきたいのは、
これだけの国民への激痛を強いておきながら、
「マニフェストをはじめとする公明党の公約で、
国民に正面から負担増をもとめたものは、ごく
一部をのぞいては、まったくといっていいほどない」
のである(前掲論文、小松さんの指摘)
自民党との連立自体が「公約違反」の出発点となっている。
以下、個々の「公約違反」を紹介しておきたい。
【自民党との連立】
≪公約の内容≫
自民党との連立、連携は考えていません。自民党からすれば、
多数決型の政治の方が国会を乗り切りやすいということから、
自民党を中心とした枠組みをつくりたいということでしょうが、
今はそういう時代ではない。私たちは、自民党の補完勢力に
なる気はまったくない。
(新公明党結党時の神埼代表の発言、「公明新聞」98.11.10付)
≪公約違反の実態≫
上記の神埼代表の発言から1年もたたない1999年10月5日に
自民党、自由党との連立内閣を発足。
【年金制度改悪】
≪公約の内容≫
政府は「保険料を上げて給付額を下げる」という“年金改悪”を
行なおうとしていますが、公明は断じて反対です。国は、老後の
暮しを守るだけの年金は責任の持つという姿勢を明確に示す
べきです。公明は、国民年金(基礎年金)については、国で負担
する部分を現行の3分の1から早急に2分の1に引き上げさせ
ます。そして、現役世代の負担を軽くし、公的年金の給付を恒久
的に保障するようにします。(1998年参院選向けのパンフレット「公明」)
≪公約違反の実態≫
1999年10月に政権入りしたとたんに公約をあっさり投げ捨て、
2000年3月、厚生年金の報酬比例部分の水準を5%減額、
年金支給開始年齢を60歳から65歳にくりのべるなど、全世代
にわたって給付減(年間9千億円)となる年金改悪法を強行。
【医療費の負担増】
≪公約の内容≫
公明は、医療費の新たな患者負担には断じて反対です。このた
め、やはり行政改革や公共事業見直しを断行して税金のムダ
遣いをなくし、この財源を活用して、高齢社会に対応した医療
制度改革を実現する考えです。(参院選前の「公明新聞」98.6.6付)
≪公約違反の実態≫
2000年11月、定額制だった高齢者の医療費に1割負担を
導入。2002年通常国会で、サラリーマン本人の医療費を2割
から3割へ引き上げると同時に、保険料アップ、高齢者医療の
全面定率化を強行。
【年金給付水準】
≪公約の内容≫
「基礎年金の給付水準を見直し、年金額の引き上げを行ないま
す」(01年7月の参院選前に出した政策提言)。各政党の主張を
特集した東京新聞(01年7月11日付)でも「年金水準を引き上げ
る」と公約。
≪公約違反の実態≫
2003年度の年金額を物価の下落にあわせて減額することを決
定。公明党の冬柴鉄三幹事長は、2002年の物価下落分(0.6%)
の引き下げは「やむを得ない」と表明(02年8月5日)
【健保本人3割負担】
≪公約の内容≫
(2001年、全国保険医団体連合会のアンケートへの回答)
本人3割負担に「反対」と回答。(アンケートの回答欄には、「賛
成」「反対」「その他」の3つのなかから選べるようになっていた)
≪公約違反の実態≫
回答から1年もたたないうちに、公明新聞で「成立を急ぐべきで
ある」(03.6.7付)と主張。2003年4月からの健保本人3割負担
を強行。この法律を所管したのは公明党所属衆院議員である
坂口力厚生労働大臣。
【児童扶養手当】
≪公約の内容≫
「児童扶養手当の打ち切りや、難病の方々のための公費による
治療の打ち切りなどが実行に移されてしまう。そうしたことを許す
わけにはいきません」(冬柴「平和・改革」幹事長、98.3.22付「公
明新聞」など)。
このほかにも、「公明」の浜四津代表は、女性団体との懇談で
「児童手当が命綱」と要請され、「問題を抱え困っている人の最
大の味方でありたい」「現状を改善していきたい」と答えている
(「公明新聞」98.4.23付)。
≪公約違反の実態≫
2002年に児童扶養手当を最大で半額削減する法改悪を強行。
(国民の批判を受け、現在凍結中)
【100年安心】
≪公約の内容≫
厚生年金の給付水準は、現役世代の平均的な手取り収入の
50%から50%台半ば程度を確保する。
(2003年総選挙のマニフェスト)
≪公約違反の実態≫
厚生労働省の4月の試算でも、基礎年金部分を共有する国民
年金保険料の納付率がこのまま推移すれば50%台も難しく、
49%台となると分析。
【サラリーマン増税】
≪公約の内容≫
野党が選挙戦略として意図的に喧伝している「サラリーマン増税」
は行なわないことを明確に宣言する。
(2005年8月26日、総選挙連立与党重点政策)
≪公約違反の実態≫
総選挙直後から定率減税廃止に動き出し、2006年度通常国会
で廃止決定を強行。07年度から全面的に廃止。
【自動車重量税】
≪公約の内容≫
自動車重量税については、その財源が本来の道路整備事業に
活用されていない現状に鑑み、例えば、暫定税率の引き下げに
より納税者に還元することや、その使途のあり方を検討すること
など、見直します。(2007年参院選マニフェスト)
≪公約違反の実態≫
参院選から9ヵ月後の08年4月30日、ガソリン税の暫定税率を
元に戻す特例法を、自民党とともに、衆院3分の2条項をつかって
強行成立。その半月後の5月13日には、自動車重量税を含む
道路特定財源を10年間維持する道路特定法を、同じく3分の2
条項をつかって強行。
以上、公明党の「公約違反」である(一部)。
「言葉じりだけをとらえて」と言う人がいるかもしれない。
でも、「言葉」を信じないで、何を信じればいいのだろうか。
まして、1度や2度の「公約違反」、ではないのである。
「狼少年」なみの、「もう、誰も信じてくれない」レベルである。
もちろん、人はときに、「ウソをつく」ものである。
あまりつきたくない、つかれたくないもの、ではあるが。
しかし、「政党・政治家のウソ」は、個人的ウソとはまったく
次元が違う。権力を担う人たちだからである。
政治への信頼は、まず、「ウソをつかない」ことから
始まるのだと、私は思う。国民を騙してはいけないのである。
言葉と行動の統一に責任をもつことが大事なのだ。
哲学者の高田求さんは、『新人生論ノート』(新日本出版社)のなかで、
「約束ができる」ということが“人間らしい”特徴の重要な
要素であることを指摘し、こういうことを言っている。
*************************
「人格的存在」であるためには、すくなくとも、つぎの三つの
条件が必要だろう。
第一。昨日の言動について責任がとれるということ。たとえ
ば、「昨日あなたと結婚の約束をしたが、しかし今日の自分は
もう昨日の自分ではない」という人間に「人格」を語ることは
できないだろう。これでは、保険などという商売もなりたちよう
がない。
第二。現在の言動に統一性があるということ。たとえば、「A
子さんが好きで好きで死ぬほど好きだ」といいながら、同時に
そのA子さんを「顔を見るのもキライだ」という、そんなのをたぶ
ん「人格分裂症」というのだろう。
第三。明日の約束ができるということ。たとえば、「今日たし
かにあなたと結婚をするが、明日は明日の風が吹く、明日の
ことなどわからない」という人間に「人格」を語ることは、これま
た不可能だろう。
私たちが人格的存在であるために欠かしえない、この三つの
条件のうち、もっとも基礎的なもの、それなしには他のすべてが
なりたちえないものはなにか。それは「明日の約束ができる」と
いうことではなかろうか。
*************************
テレビの政治討論などで、平気な顔をしてウソをつく政治家が
いる(ほとんど与党)。言っていることと、やっていることが、違うのである。
「いったいこの人の人格はどうなっているのだろう」と思う。
ウソを平気な顔をして言えるようになったら、
人間おしまいだと思う。人格喪失である。
「生活を守り抜く」と、街中に「約束の言葉」を張り出した公明党。
その約束、ほんとうに守ってくれるのですか。
ふとめしんどさん、ありがとうございます。
「ワカモノ実績…」もヒドイですよね。
見るたびにムカムカしてしまいます。
カゲ茶さんもありがとうございます。
「財界を守りぬく」。ほんとうにそうです。
紹介した前衛論文にはその財界との蜜月ぶりも紹介されています。
投稿情報: 長久 | 2009年6 月22日 (月) 09:27
(国民の)生活を守り抜くではなく、(財界の)だからではないでしょうか?
投稿情報: カゲ茶 | 2009年6 月20日 (土) 23:17
まったくその通り。ボクは「ワカモノ実績№1」について書いたよ。http://shizuku5342.blog45.fc2.com/
投稿情報: ふとめしんど | 2009年6 月20日 (土) 09:47
母親大会の分科会でも実感しましたが、商売人の方は
本当に切実な課題をかかえているなと思いました。
消費税や景気の問題、社会保障の負担増や年金など、
将来不安が増しています。
夏の選挙で、かならず自公政権は終わりにしたいですね。
投稿情報: 長久 | 2009年6 月18日 (木) 08:56
>哲学者の高田求さん
何十年か前、一度だけ高田さんの講演を聞かせていただいたことがあります。民主青年同盟に加盟していたときのことだったと思います(高田さんは私の母と同じ年齢のようです)。懐かしいです。自公政権が存続しているためか、市民税を前年度より多く納めなくてはならないようです。
投稿情報: 野澤 | 2009年6 月17日 (水) 20:19