1年前に出版されていたのに、ちょっと読むのが
遅かったと後悔しました。
『助けてと言えない―いま30代に何が』
(NHKクローズアップ現代取材班編著、文藝春秋、2010年)
表紙がなぜボロボロの
スニーカーなのかは、
本書を読めばわかります。
本書は、
いまの30代の特徴のひとつとして、
人に“助けて”と言えない、
誰かに頼ることを“恥”と考える傾向があることを、
丹念な取材をもとに、浮き彫りにしています。
客観的にはあきらかに追いつめられている状況で、
ひとりの力ではその状態から脱出できないにもかかわらず、
「自分でなんとかします」
「こうなったのも自分の責任なんで」
という気持ちを強くもっている。
「自己責任」という言葉を、社会のほうも、
彼ら自身も口にする。
助けてといわせない、社会のあり方の問題を、
するどく問題提起しています。
本書の詳しい内容は、
ぜひ読んでいただくこととして、
私は読みながら、労働組合活動において、
若い人の気持ちを表現してもらう難しさについて、
考えをめぐらせていました。
労働組合運動の原点のひとつは、
労働者どうしの「助けあい」にあります。
「困ったこと」「なんとかしたいこと」を
共通の認識にしていく作業が欠かせません。
そのためには、それが「表現」されなければ、
お互いの認識にはなりません。
そこで、要求討議、が必要なわけです。
そして、資本に比べて労働者は弱いけれども、
団結の力で、
自分たちの要求を実現させていくわけです。
ところが、自己責任論や競争主義的環境のなかで
ずっと育ってきた20代・30代は、
客観的に見たら「おかしいよ、それ」「なんとかしないと」と
思うことであっても、
「いや、自分でなんとかします」「こんなことぐらいで」と
思ってしまう傾向がある、というわけですから、
これは「要求討議」などが
困難になる強い要素となってくるわけです。
人権意識や権利意識もとても弱い。
(若い世代の責任ではまったくないのですが)
困っても、それを「表現する」ことができにくい。
これは、「助けあい」が本質のひとつである
労働組合活動にとっては、なかなか大変なことなわけです。
「要求を」といっても、
なかなかそれが表に出てこない、というわけですから。
じゃあ、どうすればいいのか。
それも、この本のなかに、
ヒントのひとつが提示されている、と思います。
もちろん、権利学習は、欠かせません。
それは、労働組合の学習教育活動の大きな課題の
ひとつになってくると思います。
それと同時に、
「寄り添う」「聴く」「関係性(信頼関係)」
という、本書のなかの教訓も、
労働組合活動に生かすべき点があると、
強く思いました。
読みました。
ノックオンさん、いつもありがとうございます。
人間と社会、自分のことを豊かに考えられる哲学。
学習運動のおおきな課題です。がんばります!
投稿情報: 長久 | 2011年9 月26日 (月) 06:27
↓クローズアップ現代“助けて”と言えない30代 - 内面化する自己責任回路
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10366687205.html
↓クローズアップ現代「“助けて”と言えない~共鳴する30代」-孤独死もたらす自己責任論の呪縛
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10439961956.html
当時、番組をレポートしたものです。こうした問題に対して、科学的社会主義の哲学が有効性を発揮してもらいたいと切に願っています。
投稿情報: ノックオン | 2011年9 月25日 (日) 20:18