土曜日(12日)、
愛知県労働組合総連合(愛労連)の、次世代育成を
目的とした、「第1回特別セミナー」があり、
私は第2講義の「ものの見方-人間観を中心に」を
担当してきました。
講義は土曜日だったんですが、前日の11日から前泊。
夕方16時過ぎの新幹線にのって、
岡山→名古屋→蒲郡と移動。
蒲郡の夕陽。
偶然なんですが、蒲郡市職労のY本委員長と
バッタリ出会って、駅から宿近くまで案内していただきました。
(Y本さんとはツイッター友だち。この日が初対面)
会場の蒲郡荘に、18時40分頃到着。
夕食をいただき、
20時から今回の特別セミナーの意義と日程について
説明がありました。
愛労連の田中副議長から開会のあいさつ。
同じく愛労連の吉良事務局長からカリキュラムなどの説明。
40分ほどで初日の日程は終了。
21時から、部屋での交流会となりました。
みなさん、飲む飲む。私が寝たのは23時頃でしたか。
朝。部屋からは、三河湾がみえました。
朝食をいただき、9時から2日目の日程が始まりました。
9時すぎから、第1講義は「現代資本主義の特徴-世界と日本」。
講師は、経済学者の友寄英隆さん。
いつものように、内容の濃い、
視野がいっきに広がるお話でした。
展望がわきますね。歴史的にものごとをみると。
私も聴けてラッキー。
講義のようす。
今回の特別セミナーは、3つの講義のあと、
グループにわかれて必ず討論をするというスタイル。
こういうのが大事ですね。
午前中は、友寄講義をうけての討論にわたしも参加しました。
現場の声もいろいろと聴けて、とても良かったです。
午後、13時から、私の講義に。
「ものの見方-人間観を中心に」です。
ちょっと盛り込みすぎで、時間も足らず、
まとまりのない話になってしまったかもと思いますが、
討論はまずまず活発に行われていたようであります。
ありがとうございます。
以下、概要です。
一。なぜ、ものの見方を学び、みがくことが大事なのか
1。「ものさし」の大切さ
『新訂 看護観察と判断』(川島みどり、看護の科学社)より
◇『キャラ化する/される 子どもたち
-排除型社会における新たな人間像』
(土井隆義、岩波ブックレット、2009年)
「この世の中は、いつのまにか命にたくさんのレッテルを
はり、フィルター越しに人を見るようになってしまいました。
姿格好、成績などフィルターをかけて見ればすぐに答えが
出ます。けれど、すぐ答えが出るようなものに、真実があ
るでしょうか」(松崎運之助さん『われら高校生新聞』09.5.25)
◇ものの見方によって、「実践」が変わってくる
*対象(社会、人間、労働組合、他人、自分自身)どう見るのか
2。したがって、ものの見方も、重要な「たたかいの舞台」となる
◇「立場が意識を規定する」はずなのだが・・・
◇支配するものは、少数なのに多数を支配する力をもつ。なぜか。
「ある時代の支配的な諸理念は、つねにただ支配階級の
諸理念にすぎなかった」
(マルクス、エンゲルス『共産党宣言』)
*フランス革命における啓蒙思想家たちの果たした役割
「彼らの書きものは国境のかなたで、オランダまたはイギリス
で印刷され、彼ら自身はしばしばバスティーユ監獄になげこま
れる危険にされされていた」
(エンゲルス『フォイエルバッハ論』)
◇現代日本における「たたかい」
*ごまかし、ウソ、隠蔽、迷信、本質そらし
……資本主義は目的意識をもって
*教育、巨大に発達したマスメディアをにぎり、総動員で。
*「人格」「ものの見方」まで資本にコントロールされる
「日本社会では、競争空間が人々の活力を引き出すの
だという観念が強固な常識、実感として受け止められて
いるかに見える。しかしそれは競争からの脱落の恐怖
を意欲の源泉とし、またその競争の敗者を意欲と希望
喪失の奈落へと落とし込んでしまう仕組みを当然の正
義として受容することにつながる。
…そういう社会構造は、資本の専制を許す社会であ
る。資本がつくり出す競争の磁場においてのみ、人々
の人格の中に意欲―生きる目的と活力―が、競争の意
欲として引き出されるということは、人間の人格の中枢
までもが資本によってコントロールされていることを意味
しているのではないか」
(佐貫浩「子ども・青年の傷つきの場としての
学校を組み替える」『前衛』2010年1月号)
*損か得かで判断する。自分の持ち時間の使い方。
【はたらくものの「哲学」を学ぶ文献として】
*『人間の未来への哲学』(高田求、青木書店、1977年)
*『人間と倫理』(牧野広義、青木書店、1987年)
*『新・働くものの学習基礎講座1 哲学』
(労働者教育協会偏、学習の友社、1998年)
二。新自由主義の人間観―「あなた」ではなく「それ」
1。人格と生活をもった人間としてではなく、
「搾取材料」(「人的資本」)として
◇「新自由主義は、労働者をどう扱うか」
*友寄英隆『「新自由主義」とは何か』より
(新日本出版社、2006年)
「資本とは投資によってその価値を増大させることの
できる財貨であるが、この考え方を投資対象としての
人間に適用したものが<人的資本>の概念である」
(島田晴雄)
*いかに効率的に、無駄なく、低コストで活用するかという
搾取の方法の「発展」
*新自由主義にとって、労働組合は「自由市場の競争を
阻害するから解体せよ」となる。歴史的にはイギリスの
サッチャー政権の労働運動敵視など。
◇モノ、コストとして
「『不良品をよこすなよ。とっとと返品して』 それは、
“妊娠している派遣社員”の私のことだった」
(小林美希『ルポ職場流産』岩波書店、2011年)
*高速バス事故問題etcー「いのち・安全」より「コスト」
*「労働は、商品ではない」
・ILO総会は、「国際労働機関の目的及び加盟国の政策
の基調をなすべき原則に関する宣言」(フィラデルフィア、
1944年5月)で、「この機関の基礎となっている根本原
則」の一つとして、「労働は、商品ではない」ことを確認
している。
・労働者は生きた人間であり、生活を保障されなければ
その労働力自体を保持できず、また商品として売り渡
すことのできない人格をもっている。
・労働者は、1人ひとりが多様な生い立ち、環境、人間関
係、能力、生活をもっている。なにより、人間としての尊
厳をもつ存在。基本的人権。表現の主体者。
*『いっぽんの鉛筆のむこうに』(谷川俊太郎文、福音館)
2。新自由主義と自己責任論
◇「現実の正当化」としての自己責任論
*新自由主義は、貧困と格差を極限まで拡大していく。
人間の生活や文化も破壊。
*「問題の個人化」として把握させようとする力
*橋下市長などが言う「自立した個人」とは。社会権にたい
する徹底した敵視。
*自助・共助論について。「がんばり」「努力」「助けあい」が
できる条件を無視。
◇「わかりやすい」「単純」ということ
ー橋下市長が支持される理由のひとつ
*ひとつの「ものさし」で判断・断定する。
敵をつくる(憎悪は容易に増幅できる)。
*独断、偏見、レッテル、十派ひとからげ
・・・簡単にできる。排除の論理。
・「バカ」「公務員」「既得権益に」「学者」
・哲学的にいうと、主観的観念論
*事実にもとづいて、「なぜ?」「どうして」「もっとよく考えて
みよう」「話を聴いてみよう」と努力するより、「どうせこうだ
ろう」と思うほうがラク。「ゆとり」がないときに。
*おまかせ民主主義。社会を変えるのは英雄ではない。
*自治体におけるポピュリズムについて
◇表現することを押さえ込む
*『助けてといえないーいま30代に何が』
(NHKクローズアップ現代取材班、文藝春秋、2010年)
*弱者の口を封じる手段としての自己責任論
「社会問題が個人の弱さに起因するという論理が自己
責任論の核心だとするならば、社会問題をまさに社会
問題として認識、考察できるようにすることが、教育の
責任であろう」 (佐貫浩、前掲論文)
【自己責任論をのりこえる「ものさし」への文献として】
*湯浅誠『どんとこい、貧困!』(理論社、2009年)
3。「競争神話」をのりこえるために
◇競争空間(弱肉強食型の)がいたるところに張り巡ら
されている社会
*学校教育、受験、就活、働き続けること、成果主義賃金、昇進・・・
*競争(とその評価)によってこそ意欲が引き出されるという
人格の形成
*競争に求められる価値
ー効率、個人的能力、スピード感…。1人称の「スキル」。
◇なんのための競争か
ー1人称の競争、2人称の競争、3人称の競争
*みんなの幸せにつながる競いあいか
三。日本国憲法の人間観ー「それ」ではなく「あなた」
1。日本国憲法の人間観
◇基本的人権とは何か(憲法参照)
◇「不断の努力」の主体としての労働運動。要求を柱に。
2。教育機関として労働組合が役割を果たさざるをえない時代
ー学習教育活動を土台に
◇民主主義とは、基本的人権とは。人間をとりもどす。学校。
◇自己責任論を緩和し、それとたたかう場としての労働組合
◇事実を大切にする
ー唯物論の立場(労力がいる。集団での認識が有効)
◇社会科学を学ぶ
*人間とは? 労働者とは? 賃金とは? 資本主義とは?
*「科学は、厳密に考え、『見えないものを見る』すぐれた方法」
(池内了『科学の考え方・学び方』岩波ジュニア新書、1996年)
*ほんものの労働者とは
*科学を学ぶことは簡単ではない・・・集団で、量的積み重ねを
◇学習教育の専門店としての学習運動組織(学習協)の活用を
3。ヒューマニズムと民主主義の場として
ー「こっちのほうが魅力的でおもしろい」に
◇サイエンスとアート。
正しくて魅力的。正しくてカッコイイ。感性での共感。
◇居やすい、という機能。サードプレイスとしての労働組合。
会議、集会、事務所etc
「近代的な社会組織は、特定の目標を達成するために
必要な機能を果たすだけでなく、生きていく『居場所』と
しての役割を持たざるをえないこともある。そこでの活
動を通じて、そこに『居やすい』という機能を、労働組合
などはとくによく考える必要があると思います」
(中西新太郎「若者の生活や経済的な困難と
『声に出せない』苦しさ」『前衛』2010年1月号)
◇表現する主体者としてー表現の自由は民主主義の大原則
*労働組合の運営に民主主義をつらぬくとは、どういうことか
*対話、議論、参画、表現、異論者を排除しない
ー民主主義はめんどうくさい
*こんにちのマスメディアの状況のなかで
ー個人としても集団としても発信する
◇手仕事から学ぶていねいさ(効率主義、忙しさとのたたかい)
*オリジナルーひとりひとり違う。一般教育と、個別教育。
少人数学習の大切さ。
*あたたかさーヒューマニズム(微温)
*てまひま
ー量的つみかさね。大量生産できない。伝わる力。心ゆさぶる力。
さいごに:労働運動の担い手としてのみなさんへの期待ー「継承者」とは
以上。
16時過ぎには、役割が終了。
疲れていたので、寄り道もせず、
蒲郡→名古屋→岡山と戻ってきました。
蒲郡駅前には、ヨットのモニュメントが。
愛知のみなさん、お世話になりました☆
ありがとうございました!
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