『カデナ』(池澤夏樹、新潮社、2009年)を読み終える。
ベトナム戦争真っ最中の
沖縄が舞台の小説。
B-52爆撃機が、嘉手納基地から
次々と飛び立ってゆく。
そのベトナム戦争をめぐっての、沖縄の人びと、
在沖米軍、それぞれの立場で「スパイ」となった人びとが、
見事なリアルさで描かれている。
小説は、ベトナム戦争下の沖縄だけではなく、
さまざま事情や背景をもつ登場人物を巧みに交錯させ、
不自然でなく、旧日本軍のこと、フィリピン戦(マニラ市街戦とか)のこと、
米軍内の雰囲気、沖縄戦の悲劇、人びとの気分感情などが描かれる。
小説としての読みごたえ、面白さも、十分。
池澤夏樹さんが、どれだけのバックボーンを
つくりあげて、この小説を書いたかは、読んですぐに理解できる。
相当な量の文献にあたり、また取材をされたことだろう。
すごい作家である。
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