きのう(11日)は、77期岡山労働学校の第4講義でした。
テーマは、
「ワークとライフのバランス-労働時間とはなんだろう」でした。
参加は17名でした。
きのうの講義前の
ワンポイント講座は、
現役学生18歳のNくん。
出身の熊本県にまつわる
ことをお話してくれました。
よく準備していて、おもしろい。
今期のワンポインとは
充実しとるなー。
さて、講義ですが、
レジュメはこちらです→roudouzikan.pdfをダウンロード
労働時間のことを資本論の中身を紹介しながら
話すのはもちろん初めてで、
終わってみれば「あ、あれ言い忘れた」とか、
いろいろ反省点もありますが、
参加者のみなさんには、労働時間の話は
やはり身近な問題でもあるので、
けっこうおもしろかったようです。
以下、講義の概要です(長い)。
一。前回のおさらい
(省略)
二。搾取を強める方法
(先週に引き続き、生産労働の職場をイメージしてください)
◇資本家は、たえずかれらどうしのあいだの激しい競争戦に
さらされています。かれらはこの競争戦にうちかっていかな
くてはならないという事情に強制されて、できるだけ多くの
剰余価値を手に入れようと、労働者にたいする搾取強化
をすすめます。資本家による搾取強化には以下の3つの
基本的な方法があります(数字は単純化)。
1。労働時間の延長(絶対的剰余価値の生産)→今日のお話です。
(図省略)
2。労働生産性の向上(相対的剰余価値の生産)
(図省略)
3。労働強度の増大(相対的剰余価値の生産)
(図省略)
三。労働時間とは何か、どうやって決まるのか
1。労働時間の最低限度と最高限度
◇労働時間の最低限度は?
*必要労働時間分は、働かなければならない(社会が維持できない)
◇労働時間の最高限度は?
*最高限度を規制する二重の規定
①労働力の肉体的制限
「1日のある部分のあいだにこの<生命>力は休息し、睡眠をと
らなければならず、また他の部分のあいだに人間は食事をし、身
体を洗い、衣服を着るなどの他の肉体的な諸欲求を満たさなけ
ればならない」 (『資本論』第8章、394P)
②社会的慣習の諸制限
「労働者は、知的および社会的な諸欲求の充足のために時間を
必要とするのであり、それら諸欲求の範囲と数は、一般的な文化
水準によって規定されている」 (前掲、394P)
*弾力性に富む「制限」
「それゆえ、労働日の変化は、肉体的および社会的な諸制限の内
部で行なわれる。しかし、この二つの制限はきわめて弾力性に富
むものであって、変動の余地はきわめて大きい。こうして、8、10、
12、14、16、18時間からなる労働日、したがってきわめて相異
なる長さの労働日が存在するのである」 (前掲、394P)
2。権利vs権利
◇資本家の「権利」
「資本家は、労働力をその日価値で買った。一労働日のあいだ中、
労働力の使用価値は彼のものである。したがって、彼は労働者
を1日のあいだ自分のために労働させる権利を手に入れた。
しかし、一労働日とはなにか? いずれにせよ、自然の一生活日
よりは短い。どれだけ短いのか? 資本家は、この“極限”すなわ
ち労働日のやむをえない制限については彼独自の見解をもって
いる」 (前掲、395P)
◇労働者の「権利」
「私の日々の労働力の使用はあなたのものである。しかし、私の
労働力の日々の販売価格を媒介にして、私は日々この労働力
を再生産し、それゆえ新たに売ることができなければなら
ない。年齢などによる自然的な消耗を別にすれば、私は、あす
もきょうと同じ正常な状態にある力と健康とはつらつさで労働でき
なければならない。(略)私は分別のある倹約な一家のあるじの
ように、私の唯一の財産である労働力を管理し、そのばか
げた浪費はいっさい節約することにしよう。私は毎日、労働
力の正常な持続と健全な発達とに合致する限りでのみ労働力
を流動させ、運動に、すなわち労働に転換しよう」(前掲、397P)
*先週つかった図をもう一度。
(図省略)
◇強力がことを決する
「ここでは、どちらも等しく商品交換の法則によって確認された
権利対権利という一つの二律背反が生じる。同等な権利と権
利とのあいだでは強力がことを決する。こうして、資本主義的
生産の歴史においては、労働日の標準化は、労働日の諸制
限をめぐる闘争…総資本家すなわち資本家階級と、総労働者
すなわち労働者階級とのあいだの一闘争…としてあらわれる」
(前掲、399P)
まとめ。
労働時間は、資本家階級と労働者階級の
たたかいの力関係によって決まる!
四。資本を社会的に規制せよ!
1。資本は、生きた労働を吸収することによって吸血鬼のように活気づく
(マルクス)
◇労働時間の「ひったくり」「こそどろ」「ちょろまかし」(資料①~③)
◇昼夜労働と夜勤労働ー交替制
「1日の24時間全部にわたって労働をわがものとすることが、資
本主義的生産の内在的衝動なのである。しかし、同じ労働力が
昼夜連続的にしぼり取られるなどということは、肉体的に不可能
であるから、この肉体的障害を克服するために、昼夜食い尽くさ
れる労働力と夜間に食い尽くされる労働力との交替が必要になる」
(前掲、440P)
◇現代日本ではどうか
*先進国でもまれにみる長時間労働。あいまいな労働時間の「くぎり」。
*有休休暇は取得率50%をきる。バカンスって、なんの話?
*サービス残業・・・吸血鬼がもっとも活気づく時間!
2。労働者は、働きすぎるとどうなるか
◇「不幸をもたらす」
*家庭的および私的生活への不法な侵害
*健康をむしばみ、早い老化と早死においこむ(資料④⑦)
*道徳的退廃(資料⑧)
◇「感覚麻痺が彼らを襲う」
「ロンドンのある大陪審の前に3人の鉄道労働者、すなわち車
掌、機関士、および信号手が同時に立っている。ある大きな鉄
道事故が数百人の乗客をあの世に送ったのである。鉄道労働
者たちの怠慢が事故の原因である。彼らは異口同音にこう言
明している。10年ないし12年前には、自分たちの労働は1日
にたった8時間にすぎなかった。最近の5、6年のあいだに、労
働は14、18、20時間へしゃにむに引き上げられ、また行楽専
用列車の時期のように旅行好きな人人がとくに激しく殺到する
場合には、労働は、しばしば中断なしに40―50時間続く。彼ら
は普通の人間であって、キュクロープスたち〈ギリシア神話に登場す
る巨人族〉ではない。ある時点では、彼らの労働力は役に立たな
くなる。感覚麻痺が彼らを襲う。彼らの脳は考えることをやめ、
彼らの目は見ることをやめる、と」 (前掲、432P)
*また、その後の文章の(注)で、マルクスは別の鉄道労働者の声を
紹介している。
「週刊紙は、毎週のように『おそるべき宿命的な事故』『凄惨な悲
劇』などという『センセーショナルな見出し』をつけて、たくさんの
新しい鉄道事故を掲載している。これにたいし、北スタッフォード
線の一労働者は次のように答えている―『機関士と火夫の注意
力が一瞬でもゆるめば、その結果がどうなるかはだれもが知って
いる。それにしても、ひどい荒天のなかで、中休みも休養もなしに
際限なく労働が延長される場合、どうしてそれ以外のことが起こり
えましょうか?』」 (前掲、433~434P)
*これは、現代日本のさまざまな「事故」「労働災害」にも
言えるのではないか。
3。資本を社会的に規制せよ!
「資本は、剰余労働を求めるその無制限な盲目的衝動、その人
狼的渇望のなかで、労働日の精神的な最大限度のみではなく、
その純粋に肉体的な最大限度をも突破していく。資本は、身体
の成長、発達、および健康維持のための時間を強奪する。それ
は、外気と日光にあたるために必要な時間を略奪する。それは
食事時間をけずり取り、できれば食事時間を生産過程そのもの
に合体させようとし、その結果、ボイラーに石炭が、機械設備に
油脂があてがわれるのと同じように、食物が単なる生産手段とし
ての労働者にあてがわれる。それは、生命力の蓄積、更新、活
気回復のための熟睡を、まったく消耗し切った有機体の蘇生の
ためになくてはならない程度の無感覚状態の時間に切りつめる。
この場合、労働力の正常な維持が労働日の限度を規定するの
ではなく、逆に労働力の最大可能な日々の支出が―たとえそれ
がいかに病的で強制的で苦痛であろうと―労働者の休息時間の
限度を規定する。資本は労働力の寿命を問題にしない。それ
が関心をもつのは、ただ一つ、一労働日中に流動化させられう
る労働力の最大限のみである」 (前掲、455~456P)
◇わかっちゃいるけどやめられない!(次週、より詳しくやります)
「“大洪水よ、わが亡きあとに来たれ!”これがすべての資本家
およびすべての資本家国民のスローガンである。それゆえ、資本
は、社会によって強制されるのでなければ、労働者の健康と寿命
に対し、なんらの顧慮も払わない。・・・自由競争は、資本主義的
生産の内在的な諸法則を、個々の資本家にたいして外的な強制
法則として通させるのである」 (前掲、464P)
これを、長久風にかみ砕くと、次のようになります。
「“わかっちゃいるけどやめられない!”これがすべての資本家
およびすべての資本家たちのスローガンである。それゆえ、資
本は、社会的な規制(法律など)をつくって彼らを縛るようにしな
ければ、労働者の健康と寿命に対し、なんらの気づかいも払わ
ない。・・・資本主義社会は、『生産のための生産』『資本家どうし
の命がけの競争』という諸法則を、個々の資本家にたいして逃
れられない強制的な法則として貫徹させるのである」
*傍線部分を「失業問題」「非正規労働者や派遣労働者」「貧困に
苦しむ人びと」「地球環境問題」「乗客の安全」「住居の安全」「食
の安全」「国民の健康で文化的な生活」など、読みかえてみてください。
*「でもここは、お金がうんともうかるところですよ!」(資料⑧の最後)
*マルクスは、資本論の「注」でこんな話も紹介している。
「住民の健康は国民的資本のきわめて重要な要素であるにも
かかわらず、遺憾ながらわれわれは、資本家たちがこの宝
を保存し大切にする用意がまったくないことを認めざるを
えない。・・・労働者の健康への顧慮が工場主たちに強制された」
(『タイムズ』 1861年11月5日)
「『他の資本家たちとの競争』は、自分たちが児童の労働時間
を『自発的に』制限することなど許さない。それゆえ、いくらわれ
われが上記の弊害を嘆いたところで、工場主たちのあいだで
なんらかの種類の協定によってそれを阻止することは不可能
であろう。・・・これらすべての点を考慮した結果、われわれは
強制法が必要であると確信するにいたった」
(『児童労働委員会 第1次報告書』1863年)
◇標準労働日(労働時間の国家的規制)の確立は
*「資本家と労働者とのあいだの数世紀にわたる闘争の成果である」
(前掲、466P)
*『資本論』には、イギリスの労働者が、労働時間を制限するために、
半世紀にわたって闘いを続けた歴史が、生々しく記述されている。
*労働時間を10時間に制限する工場法獲得の結果、イギリス資本
主義は驚くべき発展をみせた!(生産性があがった)
◇マルクスの指摘ー自由な時間の確保は、仕事にも反作用する
「労働時間の節約は、自由な時間の増大、つまり個人の完全な
発展のための時間の増大に等しく、またこの発展それ自身がこ
れまた最大の生産力として、労働の生産力に反作用を及ぼす。
・・・余暇時間でもあれば、高度な活動のための時間でもある、自
由な時間は、もちろんそれの持ち手を、これまでとは違った主体
に転化してしまうのであって、それからは彼は直接的生産過程に
も、このような新たな主体としてはいっていくのである」
(マルクス『資本論草稿集2』)
◇自分自身の時間の主人になることによって・・・(資料⑥)
「われわれは、労働日の制限こそ、それなしには改善と解放の
ための他のいっさいの企てがむだに終わるような予備条件であ
ると考える。それは労働者階級、すなわちあらゆる国民の基幹
をなす多数者の体力と健康とを回復させるために必要である。
それは、知識的発達や社会的交際や社会的政治的活動の可能
性を労働者に返還させるためにも、それにおとらず必要である。
われわれは、労働日の法定限度として8労働時間を提案する」
(1866年9月、ジュネーブの国際労働者大会の決議)
◇社会的バリケードを
「自分たちを悩ます蛇にたいする『防衛』のために、労働者た
ちは結集し、階級として一つの国法を、・・・強力な社会的
防止手段を、奪取しなければならない」 (前掲、525P)
*資本への「社会的規制」は、今後の社会発展を考えるうでの重要な
キーワードに!
≪労働時間についてより学びたい人は≫
『労働基準法を考える』(不破哲三、新日本新書、1993年)
『人間らしい労働と時間短縮』(西村直樹、新日本出版社、1996年)
『「仕事が終わらない」-告発・過労死』
(しんぶん赤旗国民運動部、新日本出版社、2003年)
『働き方を見直しませんか』(西村直樹、学習の友社、2004年)
次回(6/18)は「わかっちゃいるけどヤメラレナイー資本主義の矛盾とは」
労働時間 資料編
(省略)
以上。
班討論のようすを、
部屋の外から撮ってみた。
受講生の感想。
「今日の話はとてもわかりやすかった。
マルクスの時代にあった労働問題が
現代の日本で起っている、ということに
ビックリ!! しました。これからはその
問題を改善できるようなことをしなけれ
ばならないと思いました」
「最近、疲れがとれず、しんどい毎日を
過ごしています。今日の話は、人ごと
ではないと、身につまされながら聞きました」
「労働時間の短縮で、いろんな可能性が
拓けるのですね。仕事も人生の“一部”
他の部分を豊かにしてこそ、さらに輝く
ものの気がします」
「うちの会社が『売上予算を達成しなかっ
たら残業しても休みの日に出てきてでも
なんとかしろ!』って会社なのですが、
それでみんなのモチベーションが上がったり、
がんばろう!って思いながら働いているか
というと全然そうじゃなくて、みんなしんど
そうやし、予算は達成できないし…。
人間らしい労働時間をちゃんと決めること、
ホント大切なことだと今回学んで思いました」
「自分自身はけっこう恵まれた職場で働い
ていて、なかなか実感できないけど、長時
間労働が人間を壊してしまうというのは、
本当にあると思います。労働者側も労働時
間を守らせるってことをもっと意味とか理解
して意識しないと…と思います」
終了後は、
おむすび屋で「なごみ」。
「住んでみたい場所」
をテーマに、1時間、
楽しく交流しました。
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