きのう(27日)の夜は、岡山市学童保育指導員労組の
連続学習会の最終回(3回目)でした。参加13名。
学童保育のみなさんって、ほんとうに“集まる”のが
たいへんなんです。職場は小学校ごと、バラバラですから。
仕事や生活の忙しさもあるなか、こうして集まっていただいた
みなさんに、私も全力で準備し、話をさせていただきました。
この日のテーマは、
「人間らしく生きるために-だから、労働組合☆」という、
まあ、ふつーの題名です(笑)。
ですが、これまでの学びの積み重ねをふまえ、
重点をしぼりつつ、参加者のみなさんのエネルギーに
なるような話を心がけました。
航空労働者のたたかいの紹介に力を入れました。
1時間少々の話のあと、それぞれ感想を出しあいました。
やっぱりすごく誠実な人たちだなーと、感動しっぱなし。
3回の学習会、ほんとうにすてきな時間でした。
ありがとうございます。またぜひ、お力にならせてください。
以下、講義の概要です。
一。あらためて、なぜ労働組合なのか
1。人間らしく生きるためにー基本的人権としての労働組合
◇基本的人権としての「団結権」
「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動を
する権利は、これを保障する」(日本国憲法28条)
2。団結とは?
◇つまり集まること。ひとつになること。自分たちの要求を旗印に。
*労働組合発症の地、イギリスでは、『パブ』が大きな役割を果たした。
*『学習の友』2011年2月号の私の論文「集まる、ということ」より・・・
当時のイギリスのパブは、「集まる場」としての、魅力的で多様な
役割をもっていました。浜林正夫さんの『パブと労働組合』(新日本
出版社)という本を読むと、パブは、誰でも気楽に立ち寄れる場であ
り、たんに酒を飲むだけのところではなく、村や町の社交場でもあり、
さまざまな情報が集まり、それが交換され、ときには市(いち)が開
かれることもあったそうです。「楽しく、安心していられる空間」、そし
て「多様な役割をもつ労働者仲間の公共的場」というパブのこうした
空間性が、労働者をパブに集まらせた、と私は思っています。お酒
は、そうした空気感をつくるために、役立ったものだったのではない
でしょうか。
もちろんパブは、仕事や生活の悩み、人生相談もたくさん出され、
「話しあい」「伝えあい」「学びあい」が生まれた場所でした。さらに、
職業紹介的な役割や共済活動などの「助けあい」「支えあい」も、パ
ブの主人が世話役となっておこなわれていました。なんと死者を弔
(とむら)う集まりや婚約の儀式をすることもあったとか。そして、ス
トライキになれば、パブが闘争本部に早変り。まさに、なんでもあり
の、労働者の「たまり場」「支えあいの場」「たたかいの拠点」だった
のです。
だから、少々疲れていても、「あそこに行けば自分にとって有益な
ことがある、元気がでる、仲間がいる」と、集まったわけです。
したがって、パブから労働組合が生まれた、ということから導かれ
る教訓は、「そうした多様な役割と魅力をもつ場」を、どれだけ今の
日本の労働者階級がつくりだせるのか、ということだと思います。
集まれば、それぞれの困難や痛みを共有できたり、交流と連帯が
生まれます。問題を理解し、解決の道筋をともに考えることができ
ます。奪われた人間らしさを取り戻す場にもできます。だから、集ま
れば、元気がでてくるのです。
人間は、どこまでも「ガマン」することもできますが、「あきらめずに、
自分のまわりの環境を変えていく」こともできる存在です。「あきらめ
ない力」を生み出していく、それが「集まりの場」です。
◇団結を禁止されていた時代もあった・・・!
*イギリスでは1799年「団結禁止法」。日本でも1900年「治安警察法」。
「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわ
たる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多
の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない
永久の権利として信託されたものである」(日本国憲法97条)
「私たちは、どんなことにしろ、そのものの意味を知らなければ、
それを大切にしたり愛したりすることは出来ない。現実を理解し
なければ、それを愛し、そこに働きかけてゆく人間の歴代の努力の
うけつぎ手として今日生きているよろこびや感動を味わうことも出来
ない」 (宮本百合子「若い娘の倫理」)
*集まること、ひとつになろうとする努力の意味を、
もう一度考えてみましょう!
3。労働組合は、恒常的な組織ということ
◇先輩から次の世代へ引き継がれ、そしてまた次の世代に・・・
*岡山市学童保育指導員労組も、1997年に、16人の仲間でスタートした。
*その原点はどんなものだったのだろうか?
*有償ボランティアという立場、劣悪で不安定な労働条件。
短い平均勤続年数。何より、放課後の子どもたちに「豊かな時間」
「豊かな空間」「豊かな人間関係」「安心できる居場所」を保障したい、
という思いだった(と思う)。
*そして、それから今年で14年。活動は一進一退、なかなか要求実現へ
の壁も厚い。でも。原点は、変わらない(と思う)。共通する思い。
◇人間は、伝えることができる
*自分の考え、思いを伝える(表現する)。また他人の考え、思いを
知る(伝えられる)。表現することによって、人は成長するし、関係を
豊かにしていく。
*伝える手段はいろいろ。言葉で話す。手紙を書く。メールも。ニュース
やチラシで伝える。写真、音楽・・・。
◇伝えることなくして、「ひとつ(団結)」になることはできない
*自分が、心から感じたこと、うんうんと考え抜いて発した言葉は、伝わる。
*心をこめて、伝える。できるだけ、自分のオリジナルな言葉で(ただし
最初はマネでもいい)。
*伝わったとき、響きあい、心のふるえが生まれる。ひとつになれる。
二。航空労働者のたたかいに学ぶ
1。日本航空の整理解雇問題
◇なぜ、航空労働者は“たたかう”のか
*基本的人権(人間らしく生きること)への深い認識
*プロの保安要員としての自覚と責任
*自分自身のため、職場の仲間のため、これから入ってくる未来の
仲間のため、そして何より、乗客の安全のため。
【参考資料】
『女性のひろば』11年2月号、「すべてはフライトの安全のために」
『新婦人しんぶん』11年1月27日
「空の安全守るため 日本航空に戻ります!」
みなさんに、おきかえると・・・「子どもたちのために!」
2。あたりまえの原則を大事にする航空労働者のたたかい
◇職場の仲間の声を聴き、それをニュースで伝え、
仲間を信頼し働きかける。
◇『俺たちの翼-巨大企業と闘った労働者の勇気と団結』
(土井清、文芸社、2003年)より
「私は日航労組の活動を通じて、どんな困難な状況に置かれても
自己を貫くことの大切さを学んだ。それを教えてくれたのは、働く仲間
たちである」
「実際には数えきれない組合員がなんらかのかたちのひどい仕打
ちを受けた」
「個々の机の上に配布される『翼友』は、まさしく社員たちの声を代
弁していた。私は紙面に関心を寄せるだけではなくて、機関紙という
ものはなんと大きな力を持っているかと思った」
「重要なことは、小倉さんが自分の頭の中で労働協約を組み立てた
わけではないことである。職場からの声を汲みあげて、それを労働
協約というかたちでかなえたという方が正しい」
「ストライキが決行された空港の様子を見ながら私は、会社という
巨大な組織を動かしているのは、1人ひとりの従業員であることを思
い知ったのである。それはとても新鮮な感動だった」
「この労働争議を通じて私が学んだものは数多い。人はなにか困
難な状況に直面すると悲観的な気持ちになるものだが、私もその例
外ではなかった。しかし、後になって冷静に考えてみると、そのとき
こそが人間としていちばん成長しているときなのだ」
「活動の進展や成果を『北のとも』に書いて、管理職も含めて全員
の机の上に配布した。小さな職場なので、わざわざニュースを文字
にするまでもなかったのかもしれないが、機関紙という形で記録しお
おやけにすることで、運動の成果を再確認した」
◇『自然に生きて』(小倉寛太郎、新日本出版社、2002年)より
「今、委員長も書記長も第2組合を抜けて第1組合に入ってきた
人たちです。これは日本の現在の労働運動の状況のなかで珍し
いんだそうです。しかし、これが珍しい事例であってはいけないと
思います。青年に、青年労働者に何が正しいか、何がみんなの
ためになるのかを執拗に訴えていき、話し込み、そうして要求を
くみあげていけば、必ず、正義感のある青年が馳(は)せさんじて
くれる。そのことを、わたしは日本航空労働組合の現状から確信
しています。
当初は、わたし自身、信じられませんでした。若月司郎君という
現役の委員長が第2組合の組合員に訴えて、日航労組に入ろう、
入ってくださいという運動をやると聞いたとき、『そんな物好きがい
るかね?みすみす差別されるのがわかっている組合に入ってくる
ような物好きがいるかね』と尋ねました。『います』と。で、現実に
いました。
そのおかげで日航労組は続いています。そうしてますます拡大
しようと、いま一生懸命やっています。この根本にあるものは、伝
統になっている徹底的な職場討議、徹底的に話し合うこと、それ
から徹底的な宣伝活動、最低週2回はビラを出しています、本部
で。支部はまた別に出しています。
それからアンケート、要求のアンケートづくり。賃上げの場合、そ
れから年末手当の場合、必ずアンケートをします。組合員に対して
だけではありません。非組合員からはじまって管理職に対しても
アンケート用紙を配って、約300人の組合員が回収しているのは、
3,500枚から4,000枚です。そうしてその結果をビラにだすと、当然
管理職もみんな、大きな関心をもちます。配り忘れると管理職から
も『ビラをどうして今日はくれないんだ』と苦情がくるくらいです。こ
のような力をやはりもってきますと、もう会社も差別、あからさまな
差別がだんだんできなくなってきます」
「それからもう1つ、日本航空労働組合の特徴は常に底辺に目
をやれという伝統を守っていることです。関連事業、関連産業、下
請け、この人たちの労働者組織を日本航空労働組合は手伝う、と。
未組織のところは組合をつくるように勧める、また協力する。そうし
て子会社の団体交渉の応援に行く、ということです。周りを引き上
げていかなかったらわれわれの立場は上がらないと。これは日本
航空労働組合の1961年以来の伝統です」
◇他にも客室乗務員の“たたかい”を学べるものとして
(どちらも感銘を受けます)
*『ママはスチュワーデス』
(尾崎恵子、日本機関紙出版センター、1996年)
*『時をつなぐ航跡』(井上文夫、新日本出版社、2009年)
◇人間の“あきらめない姿”というのは美しい
*そこに、仲間との「人間としての連帯」がある
*次の世代へと、受けつがれる「思想」がある
三。さいごに・・・
◇学童保育指導員労組を強くするためには、
1人ひとりが力をつけるしかない。
◇科学的な方針、あたたかい組織文化を手間ひまかけてつくりあげよう。
◇そのための努力を、無理しすぎず、コツコツと続けていきましょう。
◇学ぶ活動を、とくに大事な課題として特別に位置づけよう。
◇これからもお手伝いできることがあれば、喜んで協力させていただきます。
おつかれさまでした☆
以上。
以下、参加者のみなさんの感想文です。
「組合の原点を知らず、組合員となったが、組合の
歴史を知り、組合に入っている意味を考えて活動を
していかなければならないと思った。よりよい労働
環境を確立していくために、自分は何ができるのか
仲間とつながって何ができるのかを、今の現実から
見つめていきたいと思った。まだまだ未熟で分から
ないことが多いけど“知る”という努力を積み重ねて
いきたい」
「今回の学習会では、本当に聞いてよかったと思い
ました。ありがとうございました。指導員を始めて
6年目。保育に関わる学習はやってきました。日々
実践してきました。しかし、組合では本当に新人
で・・・。そう思うと情けないなぁ・・・はずかしいなぁと
思うばかりです。もっと自分からわからないことは
聞いて、知ることが大切だと感じました。知る機会
を作ることが、今後できたらいいなぁと思いました。
それができるのは、ひょっとしたら青年部なのかも
しれないなぁ・・・とも思いました。少人数になるので、
心細いところはたくさんありますが、できることを
仲間たちとがんばっていきたいです。貴重なお話を
聞かせていただきまして、本当にありがとうござい
ました」
「すごく元気の出るお話でした。集まることからはじ
まるという事を心によくとどめておかなければ、今日
はいいや・・・とか思ってしまう自分がいます。また
組合員数の減少が止まらず・・・(悩)、後輩に自分の
言葉で伝えていく事が大切なんだ! と思いました。
もっと伝えていかなきゃ! 伝える機会や集会を増や
していくのが今はきびしいのかな・・・。新婦人しんぶん
で紹介された皆さんの様に輝く笑顔で組合活動を
していきたいです!」
「労働組合には入っていますが、皆さんの話を伺い、
そんなに熱い思いをいだいて入っているわけでは
ないです。が、学習会で学ぶことは楽しいという思い
はあるのです。これも『集まる』から。1人ではでき
ないことも、集まれば何かが生み出せるのですね」
「日航の闘い方を学び、今後に生かしていこうと思い
ました。アンケートの取り方と、その精神の持つべき
点を教わりました。今後に生かします。自分の為に
後に続く人の為に、子どもたちのために!」
「おかしいことをおかしいと言えるように!!もっと
もっと学習しないといけないなぁーとあらためて思い
ました!! そして学んだことが自分の言葉として
語れるようになっていきたい!! ずい分前に初めて
足をふみ入れた労働学校での頃の私よりは、少し
成長したかなぁーとふり返った時間でした!!
ありがとうございました。明日から又、がんばります!!」
「『何で労働組合なの?』と聞かれて、自分の言葉で
語れない苦しさから、どうすれば良いのか、わからな
かったのですが、今日、先生のお話を聞いて『そうな
んだ・・・』と納得ができました。『1人ひとり、力をつけ
ていくしかない』。もう少し勉強できれば良いと感じて
います」
「1人ひとりが力をつけていくしかない! おかしいこと
はおかしいと言える! 自分の考え、思いを伝える!
↑印象に残ったことです。そして、そのためには、知識
を得るために学習しなければならないし、自分がなぜ
今の仕事を選び、組合に入り、活動をしているのか、
考える必要があるなぁ、と思いました」
「『無知』では何も行動できない・・・と改めて感じまし
た。学童保育労組の歴史(発足から要求実現)や、
今の指導員の労働の事実を把握することはとても
重要だと思いました。『組合員を増やしたい』より前
に、今、みんなが(非組合員も)どういう状況で働い
ているのかを単純に知りたいし、それを要求につな
げていくことが大切かも・・・」
「組合員以外の人たちのためにも闘う、という日本
航空の第1組合の姿勢には我が身、我が考え方を
ふり返ってはっとさせられました。伝えることの努力
をもっとしなければと強く思います。悪いがまんは
体によくないので、がまんせず、しつこく、声をあげ
続けます。未来の仲間と子どもたちのために」
「感想でも話しましたが、労働組合結成当時の
ことを鮮明に思い出しました。先生もおっしゃい
ましたが、無いものをつくり出すときにはものす
ごいエネルギーが出せるものだと。だからこそ、
そのエネルギーが燃えつきないよう再生活動
(エネルギーの)、即ち、学習、行動、そして集う
ことを、あきらめないで続けていかねばならない
のだと強く思います。
『嵐』といううたの中に“雨、雨、風、風、吹き荒
れてみろ。そんな時こそ、オレたちはまた強く
なっていく”という一節がありますが、『オレ』で
はなく、『オレたち』なんですね。人間らしく―だから
労働組合―がんばります。この年になっても、今日、
生きて働いているのですから。ほんとうにありが
とうございました」
「組合活動を支えるものは、やはり志だと思いまし
た。長久先生が言われた『自分自身のため、職場
の仲間のため、これから入ってくる未来の仲間の
ため、そして何より子どものため』が、何より自分の
動機付けになっていることに、あらためて気付かせて
いただきました。学習を続けて、自分自身が力を
つけていきたいです」
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