『脱 「子どもの貧困」への処方箋』(浅井春夫、新日本出版社、2010年)
を読み終える。
来週のとある学習会で紹介しようと
思って読んだ本。
あってはならない、子どもの貧困。
この国の現実は、想像以上に深刻である。
子どもの貧困問題は、特定の特効薬はなく、
さまざまな段階・分野での総合的で具体的な政策が
必要だということは、この国の政治や行政全体が、
総力をあげて取り組まなければならないということ。
しかし、民主党政権の政策からは、まったくそれが見えてこない。
逆に子どもの貧困の防波堤の場の1つである保育分野を、
規制緩和・市場化の荒波にぶちこもうとしている。
この秋から春にかけては、保育関係者・保護者だけでなく、
国民的課題として、保育制度の大改悪をストップする運動を
起こしていかなくてはならない。
以下、メモとして。
「『子どもの貧困』は社会が生み出すものである以上、
社会が責任をもって克服のためにとりくまなければ
ならない問題なのである」
「子どもの人権の中核には教育権がある。その教育権が、
・・・露骨に侵害されている現状がある」
「かりにスタートラインに着いたとしても、ぬかるみやデコ
ボコ道、落とし穴がいたるところで待ち受けているコースを
走る子どもと、整備されたコースや高速タータン・トラックを
走る子どもでは、スタートのあと、走れば走るほど差が
広がっていくという現状がある」
「教育権の侵害・剥奪は、①教育・学習関連の必需品を
持てないでいること、②子ども期に必要な教育的文化的な
体験を経験できないでいること、③学習の意思があっても
教育環境を奪われている状況、④その結果として学習の
意欲・やる気・希望を奪われている現実として現れている」
「教育権は、子どもにとっては発達の栄養そのものである」
「子どもたちの痛みを感じるところから政治ははじまって然る
べきではなかろうか。これだけの現実が苦しみとして存在
しているのに、政治や行政には子どもたちや生活の困難を
抱える人々への“痛み”を感じ取ろうとする姿勢が少なく、
むしろ欠如していると言ったほうが正確であろう」
「貧困の対極にあるのが『希望』であるといえよう。希望とは、
人生へのチャレンジ権そのものであり、貧困のもとで暮らす
ということは、希望・意欲・やる気がそがれることにもなりやすい」
「子ども=人生はじめの時期のしあわせを保障できない社会は、
人間みんなをしあわせにすることもできないことは明らかである。
本気で『子どもの貧困』を根絶する意思がある国であるかどうか
は、その意思を法律として結実させ、国・自治体が先頭に立って、
この課題に立ち向かっていくのかどうかで試される」
子どもの貧困問題で問われるちから(あとがきから)
「子どもの貧困問題にとりくんでみて、私たちに問われるちからが
あることを考えることが何度もあった。そのひとつは、まだまだ
子どもの現実や苦しみの実際を知りつくしていないということで
あった。実際、児童擁護施設の子どもたちの実状を通して、子ども
の貧困の現実を知っていたつもりであったが、多くの知るべき事実
を知らないでいる現実があることを実感する日々であった。知るべき
努力を続けるちからが、私たちに求められているのである。
ふたつめに、当事者である子ども・青年の声に痛みを感じるちからが
問われていることである。感じるちからとわかるちからが子どもの
貧困問題ではとくに求められる。事実を知り、事態を分析すると
ともに重要なことは、事実を前に痛みを感じ取るちからであるといえよう。
みっつめは、この現実を変えようとする真摯な姿勢である。事実を
統計的に分析し、真実を社会的に知らせるだけでなく、その現実を
変革するちからが問われているということである。いま私たちの前に
ある変革の課題のひとつが、子どもの貧困を根絶していくための
政策を創っていくとりくみである。本書は、この変革の課題にとりくんだ
ものである」
“小指の痛み”をからだ全体の痛みとして(あとがき)
「普天間問題でも、沖縄はまたもや政治に翻弄(ほんろう)されている
現実がある。これまで沖縄は私たちが知らないまま、どれだけ苦悩を
強いられてきたのだろうか。『小指の痛みを、からだ全体の痛みと感じ
てほしい』というあるオバアのことばがある。(中略)
沖縄もアイヌ民族問題も、障がい者問題も、在日外国人問題も、
性的マイノリティ問題も、・・・そして子どもの貧困問題も、1億2738万人
からみれば、“小指”かもしれない。だがその“小指の痛み”を放置しな
いで、自らの、私たちの問題として受け止める社会であるかどうかが
問われているのではなかろうか」
あ、とりあえず目次も紹介しておきます。
まえがき 「子どもの貧困」根絶への確実な一歩を!
第1章 子どもにとっての幸福度
第2章 子どもの貧困の現状
第3章 子ども虐待の背景にある貧困
第4章 子どもの性の貧困
第5章 子どもの貧困の歴史素描
第6章 脱「子どもの貧困」への処方箋
第7章 人生はじめの社会保障としての保育をめぐる諸課題
第8章 「子どもの貧困根絶法」の必要性とその構成
あとがき
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