ということで、まとめて14冊紹介なり!
『無縁社会-無縁死3万2千人の衝撃』
(NHK「無縁社会」プロジェクト取材班編集、文藝春秋、2010年)
読むのが遅くなったが、いろいろ考えた。
家族にでさえ「迷惑をかけたくない」という言葉の意味。
自己責任論の強力な浸透による孤立化。
あらゆる年代で、「単身世帯」の割合の増加。
深刻な課題に直面している。
『「最先端技術の粋をつくした原発」を支える労働』
(『学習の友』編集部編・樋口健二/渡辺博之/斉藤征二、
学習の友社、2012年)
原発の罪深さは無限だなと痛感させられる。
定期検査のたびに、
多くの原発労働者が動員され、命を削っていく。
ぜひ広く読まれるべき1冊。
電力会社の無責任体質にもうんざり。
『原発にしがみつく人びとの群れ-原発利益共同体の秘密にせまる』
(小松公生、新日本出版社、2011年)
「群れ」と表するにふさわしい、原発利益にむらがるものたち。
人間から遠いものになっている。
そして、圧倒的に男なんだよね。
それにしても、この「群れ」は、
いぜん強大な力をもっている。
『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』
(木暮太一、星海社新書、2012年)
前半は、マルクス『資本論』をベースにした、
価値論、賃金論(少々荒いが…)。
後半と結論部分は、残念な中身ですが、
まあ、全体的には「あり」、という印象。
学習運動的にも学ぶところはある。
というか、こういう「生々しい現実との結びつき」のなかで、
こういう入門書を書く人間が、
わが陣営にほとんどいないということが問題。
『「コミュニケーション能力がない」と悩むまえに』
(貴戸理恵、岩波ブックレット、2011年)
いまいち分かりづらいなーと思って読みすすめていたけど、
最後の4章が著者自身の話で、ああ、なるほど、と。
『「主権者」は誰か-原発事故から考える』
(日隅一雄、岩波ブックレット、2012年)
これが最後の著書になったのでしょうか。
コンパクトに、日本の国家機構について、
問題点と改善点を示している。
「主権者教育はきわめて遅れている」というのは、
私の問題意識とひじょうに合致。
『チンチン電車と女学生』
(堀川惠子・小笠原信之、日本評論社、2005年)
広島は路面電車の街。
1945年8月6日、多くの路面電車が被爆・大破。
しかし、その路面電車を運転していた少女たちのことは、
あまり知られていない。
ねばり強い取材により発掘された「ヒロシマ」の一断面。
『采配』(落合博満、ダイヤモンド社、2011年)
落合さんについては、まあ好き嫌いあるでしょうが、
私は好きです。
非常に論理的思考をする人。言葉も豊富。
中日ドラゴンズの監督時代のことについてかなり知れたので、
満足しました。
名監督は、やはり人を育てる哲学をもってますね。
『マルクス主義と福祉国家』(聽濤弘、大月書店、2012年)
いろんな意味で刺激的で、学ぶことが多い。
何か月かまえに、ご本人のお話を聞く機会があったが、
そのときの復習にもなった。ありがたい。
『歩いて見た太平洋戦争の島々』
(安島太佳由著・吉田裕監修、岩波ジュニア新書、2010年)
硫黄島、ガダルカナル島、ラバウル、ニューギニア、ビアク島、
トラック諸島、マリアナ諸島、パラオ諸島、フィリピン。
いずれも太平洋戦争でたいへん壮絶で凄惨な戦場になった場所。
著者がじっさいに訪ね歩いた記録。
日本軍の人命軽視の特徴もよくわかる。写真多数。
『母さんの樹』(佐藤貴美子、新日本出版社、1984年)
10月の全国学習交流集会in倉敷の記念講演をしてくださる
尾崎惠子さんから教えられた小説なのだけれど、なるほど納得です。
たたかう母の辛さとど根性。
それを支える生き方と仲間。
ゆずれないもの。時代背景は違うが、胸に響く。
『改訂版 見える学力、見えない学力』
(岸本裕史、国民文庫、1996年)
なるほど、なるほどと、一気に読了。
改めて確認したところもあれば、新しい視野をもたらしてくれたところも。
しかし、家庭環境の今日的困難さを考えると、
「みえない学力」を培う難しさについても思う。
以下、メモ。
「知的能力の中核は言語能力」
「言語能力は、おおまかにいって語彙をどれだけ知っているか、
どれだけ自由に使いこなせるかによって、ほぼ規定されます」
「子どもにはていねいに語りかける、誠意に話していく」
「小学校でよくできる子は、
すべてといってよいほど読書好きです」
「言語能力を育てるもっとも効果的な方法は、
子どもを読書好きにすることにおいて、他に
ありません。塾へやる時間と金があれば、
それは読書に注ぎこむべきです」
「いったんその楽しみや喜びを知った人は、生涯を通じて
読書好きとなります。つねに自己教育・自己変革を
積み重ねていきます。いまのところ低学力でいる子ども
でも、打ちこんで読める本にめぐりあいさえすれば、
もりもり読書をするように劇的に変わります」
「3人以上で遊ぶということは、その集団にいろんな
葛藤が発生し、対立や抗争が起こるということを
意味しています。そのことがいいのです」
「子どもが生きるための力をつけていく上で、遊びの
果たす役割は絶大です」
「友だちのわからないところを、その子が納得するまで、
きちんと教えてやるということは、ちょっと知っているとか、
わかっている程度の学力ではできません。十分に
よくわかっていないと、他人にわかるようには教えられ
ないものです。つまり、友だちに教えてやるということを
通して、教えている本人自身が、より深くわかっていく、
いつまでも忘れられなくなるほどよく理解していくという
すぐれた副産物がおまけとしてつくのです。友だちに
親切に教えてやれる子は、やがて、同僚や後輩に
対しても、気さくに、しかも勘所を押さえた的確な指導性
を発揮するような社会人になり、いつとはなく、よき
リーダーになっていきます」
「毎日、責任のある家事を分担させられている子は、
スイッチの切りかえがすぐできる子になっていきます。
手早く、きちんと家事をすませてから、また自分の
やりたいことをやろうとします。しぜんと、集中力も
備わってきます。敏速性もついてきます。こんな子は、
仕事も勉強もテキパキ処理していけるようになります。
あわせて、家事労働を通じて、親の苦労もわかる子に
なります」
「読むことは、学力を新たに獲得する前提ではありますが、
読むことだけに終わっていては、学力を確実にわがもの
にすることは決してできません。新しく学んだことを、
きちんと身につけるには、書くことを絶対にぬかっては
なりません。書くことをいやがり、読むことだけで済ませて
いる子どもは、よしんば多面的な読書をやっていようとも、
成績は芳しくありません。物知りではあっても、物ぐさに
なっています」
『橋下「維新の会」がやりたいことー何のための国政進出?』
(石川康宏、新日本出版社、2012年)
コンパクトにまとめられていて、さくさく読める。
単なる橋下批判ではなく、
この国の政治の現状や、私たちの課題まで。
「本当の意味で政治を変えるには、いったい何が
必要でしょう。私は、遠回りのようで一番近道な
のは、こうあってほしいと思う日本社会の理想を、
-個々のこまかい政策だけでなく-1人ひとりの
市民が自分で考え、家族や友人たちと話し合う
ことではないかと思います。『だれか期待をかけら
れる人はいないのか』という他人まかせ、『おま
かせ民主主義』ではだめなのです。必要なのは
市民自身の成長で、市民が自らの政治的教養を
高めていくということです」
総選挙近い情勢。
たくさんの人がいち早く読まれることを希望。
『人類大移動-アフリカからイースター島へ』
(印東道子編、朝日新聞出版、2012年)
人類がチンパンジーとの共通祖先からわかれて700万年。
私たち新人(ホモ・サピエンス)が誕生してから約20万年。
最新の研究成果をもとに、人類移動の足跡とその特徴をたどる。
おもしろかった。知的刺激がたくさんありました。
「人類には、動きながら進化するという
独特の歩みがありました」
という指摘に、なるほど、と。
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